母の愛
私は歌で、相手の世界へ飛び込んでいく。
「え~と?コノハさん。」
「何だ?タチバナ?」
「何故?僕までここにいるのでございましょうか・・・?」
タチバナがジト目でこちらをみている。
「まぁ勘だが、ククリを説得するにはお前の方が良い気がしたのだ。」
「・・・?どういう事?」
「お前、大人よりも子供受けしぞうな顔してるからな!」
「はい?」
「という訳で、ククリに話しかけてみろ。まさか初めてとは言わんよな?」
「・・・。ヤッパ・コノヒト・キライ・・・。」
「おっと話をしている時間はないぞ。到着した様だ。」
急に視界が開け、空には星が瞬き、大地には一面花畑が広がる不思議な空間に出る。
「ほう・・・。これは中々・・・。」
「ここに、あの子がいるというのか・・・。」
後ろから爽やかな風が吹いてくる。
時すら流れているのが怪しい位だ。
しっかり自分を持っていないと、ここから出られない、そんな気がする。
「ん?あの小高い丘に、一人の少女が立っている?」
タチバナが視線を向けるその先に、一人の少女が佇んでいる。
「行くか・・・。説得はお前に任せる。」
「ハイハイ。分かりましたよ・・・。」
私達はその方向へ向けて歩き出した。
「やぁ・・・。君はククリだね。」
「・・・。だあれ?」
「僕はタチバナ。この目つきの悪いお姉さんはコノハさん。」
「一言多い!」
いつもよりは軽めだが、毎度の鉄拳制裁を喰らう僕。
「いたぁあい。全く記憶がなくなったらどうすんだ!」
「いいから話を進めよ!」
「全く・・・。(この性悪が・・・。)。ああ、すまない。少し君とお話ししたいと思ってね。」
「・・・。お兄さん達も私をあの世界へ戻そうとするの。私はここで十分幸せですのに。」
「そうか・・・。幸せか・・・。ただね。君のお母さんに出会ってね・・・。」
「母上?母上に会ったのですか?」
「ああ。お母さんは君の事を心配していたよ。」
「そうですか・・・。私も母上に会いたいです。父上の横暴でとある高貴な家に輿入れさせられそうになった時に、一人母上だけが私を守って下さいました。」
「そうなんだ・・・。」
「そのせいで、母上は幽閉され、亡くなったと聞いております。私は、そのまま気を失い・・・。」
「なるほど。お前はこの時代よりもずっと前の時代の人なのだな・・・。」
コノハが横から口を挟む。
「それで、母上はどこに・・・。」
「今の私達がいる時代で、お前を待っている。もう霊魂ではあるがな。」
妖魔に堕ちていたことは話さないでおこう・・・。
「どうだろう。僕たちと一緒に行かないか?」
「・・・。」
「もう時代は変わったんだ。君を縛るものは何もない。」
「・・・。でも・・・。また新たな苦しみが生まれるのでしょう・・・。」
「え?」
ククリの身体が急速に変化していく。
背中から翼が生え、頭には角が生えてきている。
「これは・・・。」
「ああ。あの母と同じ、鬼の妖魔だな。しかし・・・。」
中途半端な変化だ。どこか躊躇いがあるのだろう。
「デテイケ!モウ・ワタシニ・カカワルナ!」
鬼となったククリは涙を流しながら、ことらを攻撃してくる。
「すまない・・・。説得に失敗した。」
僕はコノハに謝る。
しかし、彼女といえば、ヤル気満々の様だ。
「何を言ってる!お前の出番は、まだ先ぞ!」
「え?」
僕は首を傾げる。
「まずは、アレをなんとかして、だな。」
『・・・。何をする気なんだか・・・。』
そんな僕の心配をよそに、彼女は刀を構え直すと、一気に殺意全開で、ククリへ突進していった。
「くらえ~!!!」
私は鞘に納めた剣を一閃する。
「ウワァァァァァ!」
半妖魔化しているククリだが、神である私の敵ではない。
あっさり後ろへ吹き飛ぶ。
「わぁぁぁ~。容赦ね~な~。」
タチバナが後ろで何かほざいている。
煩わしいが、今はスルーだ。
「ククリよ。この声を聞け!母の想いが分からぬか!」
私は空間に穴の様なものを開ける。
「あれは・・・。ククリのお母さん?」
「ククリ・・・。ククリ・・・。」
「・・・。母上・・・。」
ククリの瞳に涙が零れる。
「ククリ?声が聞こえる。ククリ!!!」
「母上!は・は・う・えぇぇぇぇ!!!」
「これは・・・。ククリが元の人の姿に・・・。」
戻っていた。
「ククリ。ごめんなさい。守ってあげられなくて・・・。」
「んんん・・・。母上。母上は悪くないの・・・。むしろ、ありがとう。私は・・・。」
「心配するな!娘の面倒はみよう。誓って不幸にはせぬ。安心せよ。」
「え?」
「・・・。貴女は強くて意地が悪い。でも、何故でしょうか?神の様な懐の深さを感じる・・・。分かりました。貴女を信じましょう。娘をよろしくお願いします。」
「母上!」
「幸せにおなりなさい。我が愛娘、ククリ・・・。」
ククリの母は温かな光に包まれ、消えていった・・・。
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