命の歌
「デェェェェェイ!」
私は渾身の力で刀を振り下ろす。
「ウォォォォ!」
それは鬼の棍棒を弾き、鬼を後ろにひっくり返らせた。
「どうだ!」
私は二撃・三撃と続けて切り込む。
「ググググ・・・。」
鬼は防戦一方だ。
「オノレ・・・。オノレ・・・。」
鬼の表情が段々険しくなる。
「お前・・・。何故、泣いている?」
私は剣を鬼に向けたまま、一言問う。
「・・・。」
鬼は答えない。
だが、反撃してくる様子もない。
『何かあるな・・・。』
私は確信する。
「お前は・・・。元人間なのではないか?」
「!」
途端に鬼の表情が変わる。
「ククリ。ククリ・ハ・ドコ?」
何やら冷静さを失い、何かを探し始めた様だ。
「ククリ?誰の事だ?」
私は重ねて問う。
「ククリ!ククリ!」
だが鬼の目には、もう私は目に入っていないらしい。
大急ぎで館内に入っていく。
「待て!」
私もそれを追う。
『館内にはタチバナがいる。上手く少女を見つけ出してくれればよいが・・・。待てよ。ククリとは?』
私はある事に思い至る。
「待て!そこの鬼!早まるでないぞ!」
私は絶叫した。
「思ったより広いな・・・。」
僕は駆け足で部屋をみて回っている。
廊下は腐っており、時折足をぶち抜くが、大きさだけは未来世界のアレ並だ。
「全く!テーマーパークじゃないっつ~の!この中でどうやって探せば・・・。」
僕は途方に暮れる。
「そう言えば、あの奇跡の蝶・・・。」
透き通った羽を持つ蝶。
「何とかならんのかな・・・?」
僕はそっと紙を取り出し、宙に投げてみる。
「・・・。」
その紙はひらひらと宙を舞い、地面に落下する。
「アハハ。そんな訳ないか・・・。」
私は苦笑いする。
だが、次の瞬間!
「ククリ!ククリ!」
「鬼!」
あの鬼がすごい勢いで突っ込んでくる!
「おいおい!」
僕は刀を構える。
「・・・。ジャマダ・ドケ!」
「ウワァァァ!」
鬼は僕を吹き飛ばし、奥へ消えていく。
「イテテテテ!何だったんだ。しかし・・・アイツが現れたという事は・・・。」
僕は一つの真実に突き当たる。
「そうか!善戦むなしく・・・。いったか・・・。」
「だ・れ・が・だ・ぁ!」
ボコ!
「いったぁぁぁぁ!」
僕は鉄拳制裁を喰らっていた。
残念ながら、この残念少女はいったどころかピンピンしている様だ。
「・・・。おっと、こうしている暇はない。タチバナ!追うぞ!」
「追うって?アレを?」
「そ・う・だ!急げ!」
言うが早いか、彼女は駆け出していく。
「あっ!待って!コノハさ~ん!」
僕もすぐにその後を追った。
「ハァハァ。随分走らされたものだが・・・。」
私は息を整えつつ、目の前の事実を確認する。
「これは一体・・・。」
タチバナが愕然としている。
目の前には眠り姫が一人。
年の頃は十四・五といった所か・・・。
そしてそれを鬼が守っている。
「フッ。やはりな・・・。」
私は得心する。
「どういう事?」
タチバナが聞いてくる。
「つまり、この鬼の妖魔は、この少女『ククリ』の母なのだ。」
「なんですとぉぉぉぉ。」
部屋全体にタチバナの声が響き渡る。
「死して妖魔に身を落としても、愛娘を守りたい執念がそうさせたのだろう・・・。」
私は静かに剣を置く。
「おい!」
「よい!黙ってみておれ!」
「本当に大丈夫なんだな!」
「心配はいらぬ。」
私はその場に正座する。
「聞け!妖魔となりし母よ。これより我が力で、お前を元の姿に戻す。聞け!我が命の歌を・・・。」
私はゆっくりと歌いだす。
「これは・・・。」
タチバナも驚いているが、私の中から光の玉が生まれ、部屋全体を包んでいく。
「すごい・・・。ただのアホな女の子じゃなかったんだ・・・・。」
タチバナが涙ぐんでいる。それだけ見れば、いい奴だが・・・。
『あとで、コイツ、一発殴る!』
だが、今はそれどころではない。
目の前の鬼が光を受けて、元の優しい人の親の姿に変化していく。
「ククリ・・・。」
ククリには変化はない様だ。
変わらず眠り続けている。
「・・・。どうして貴女は目覚めないの・・・。」
母親は涙ながらに告げる。
「・・・。これはどういう事?」
タチバナも首を傾げている。
「何となくは分かる。彼女の意識は、どこか別の場所に行っているのだ。」
「う~ん?つまり異世界にでも行っているという事か?」
「まぁそんなところだ。だが、肉体が目覚めようとしているようにも感じる・・・。」
「呼び戻せる・・・ってこと?」
「そういう事だ。私の力を以てすればな。」
「・・・。本当に。本当に。娘を目覚めさせる事が出来るのですか?」
娘の母が尋ねてくる。
「無論、強要はしない。戻ってくるかどうかは彼女の意志次第。だから確実にできるとは言えない。でも出来るだけの事はしよう。」
母は即答しない。
少し考えている様だ。
「・・・。それがあの子の意志なら、わたしもそれを受け止めましょう。よろしくお願いします。」
「分かった。」
私は一呼吸置く。
「命の歌。第2章。ククリよ。この唄を聞け!」
私は静かに歌い始めた・・・。
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