妖狐の子
戦いは・・・。
ほぼ一方的に終わった・・・。
数刻後、目の前には盗賊の死体が・・・。
転がってはいない。
「フン。張り合いのない事よ・・・。」
コノハさんは相変わらずだ。
『さすが荒神・・・。』
僕はと言えば、絶句している。
しかも、無力化するだけで、盗賊とは言え、命を奪わないのは彼女の神たる所以かもしれない。
「さて・・・。」
彼女は勢いよく檻を壊す。
「本来なら盗賊が、動けばこの人質の命はないぞ!・・・とか言う場面なんだろうけど。」
そんな時間の猶予すら与えない。
「せめて鍵位は探してほしいところだが・・・。」
しかし・・・。
アイドル目指すより、武士にでもなった方がいいんじゃね?とも思わんでもない。
まぁそれはさておき・・・。
「・・・。この子は・・・妖狐?」
顔は人の顔、耳は獣?それに尻尾?
「・・・。狐さんだね。」
ククリも不思議そうに見ている。
「・・・。」
狐の子は恐怖と涙目でこちらを見ている。
言葉は出ない様だ。
余程、怖かったのであろうか?
「タチバナ。頼む!」
また、僕に押し付けるんかい!この人は・・・。
と言うか・・・。
「もしかして、苦手なの?」
「そそそそ、そんな訳なかろう!・・・。コホン。私は敵を倒したのだから、その子を保護するのはお前の役目だろう。私は疲れたので、そこで休むぞ!」
「ふ~ん。」
「な・ん・だ・よ・ぉぉぉ!」
「いや。何でもない・・・。」
「笑うな!」
僕はにやにやしながらコノハさんをみる。
まぁ、今日はこの位で許してやろうか・・・。
おっと、こんな事をしている場合ではなかった。
「ククリちゃん。手伝ってくれるかい。」
「なぁに?お兄さん?」
「あの子をここから連れ出したいんだけど、随分警戒されているみたいでね。何とかしたいんだけど。」
「うん。どうしたらいいの?」
「そうだな・・・。」
僕は考える。
「そうだ。笛を吹いてくれる。」
「いいよ。」
ククリは横笛を取り出す。
「いくよ~。」
ククリは軽快に演奏を始める。
それに合わせて、僕は舞を舞う。
とは言え、テキトーな踊りではあるのだが・・・。
ピーヒャラ、ピーヒャラ・・・。
「・・・。おっ。何か見てる、見てる。」
妖狐の子が不思議そうな顔をしている。
少し興味は引いた様だ。
あと一息かな?
「えええい!みておれんわ!何だ、その下手過ぎる踊りは!」
狐ではなく、凶悪な神が来てしまった。
「コノハさん?」
「何となく、お前の作戦は理解した。だが、その踊りは見るに耐えん!私が特別に舞を舞ってやろう。みておくがよい!ククリ、いつもの成果をみせてやろう!」
「ハイ!お姉さん。いっくよ~。」
少しテンポをあげて、ククリが笛を吹く。
この子は天才だ。
僕の時代にきても、一門の音楽家になったかもしれない。
「おおっ!」
妖狐の子も先程より大きな目を開けて、こちらを見つめている。
心なしか、少し前に出てきている様だ。
彼女の中で、何かが動いたのかもしれない。
「さぁ、狐の子よ。お前もこっちにきて躍るのだ。楽しいぞ!」
コノハさんが妖狐の子に手招きをしている。
最初は遠慮がちにしていた彼女だが、コノハさんの傍に歩いてくると、見よう見まねで踊り始めた。
「フフフ・・・。では行くぞ!」
コノハさんは狐の子の手を取り、一緒に踊り始める。
社交ダンス?とは違うが、中々、妖狐の子も軽快に踊り始める。
「フフ・・・。ハハ・・・ハハハハ・・・。」
やっと笑ってくれた。
彼女は楽しそうに踊っている。
どうやら作戦は成功の様だ。
「ナミ・・・。ボクの名はナミ。」
少女はそう名乗る。
「そうか・・・。ではナミ。私達と一緒に歌姫を目指さないか?」
コノハさんが優しく問いかける。
「ん~。よく分からない。でも・・・。お姉ちゃんたちと一緒に行くよ。楽しそうだし・・・。」
「そうか!ならば、一緒に世界を目指そう!」
二人は踊りながら、意気投合している。
それをみながら僕は思う。
『なんだかんだ、素直じゃないんだよな~。』
楽しそうに踊っている二人を微笑ましく眺めながら、僕はこれからに思いをはせた・・・。
結局・・・。
その後、程なくして検非違使が来て・・・盗賊は逮捕。
妖狐の子は簡単な事情は聞かれたものの、こちらで保護する事には成功。
と言うか、お役所的には興味なかった・・・って所だろう。
という訳で、彼女を櫻神社へ連れて帰ったのだが・・・。
「あれ?」
いつの間にか部屋が増えている。
「おや。おかえり、皆。」
宮司様がいつもの優しい言葉で出迎えてくれる。
「・・・。ただいま帰りました!」
僕は笑顔で、元気よく答えたのだった。
面白い! 続きを読みたい!
と思われた方は、下にある⭐︎ブックマークをお願いし
ます。




