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私の捻れた彼氏  作者: 國村城太郎


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第24話 結婚式

 翌朝、朝食のあとくつろいでいると、妹が受話器を持ってやってきた。

 

「お兄ちゃん、聡次(そうじ)叔父さんから電話よ」

 

 我が家の本来の主人たる叔父からの電話だった。私は受話器を受け取る。

 

「もしもし聡介です。お久しぶりです」

 

「聡介、久しぶり。お前結婚するらしいな。おめでとう。そこでだ、今住んでる家、売ってやるからそこに住め。安くしてやるからな」

 

「はあ?いくらやすくしてもらっても私の稼ぎじゃ無理だよ」

 

「脱税にならないギリギリまで下げて、今借りてる一部屋、ウチに貸し出す形で相殺すれば、家賃くらいで分割になるように調整出来るだろう。友達の税理士とその弟が不動産取引に詳しいから、連絡するように言っとくから、詳しくはそちらで聞いてくれ」

 

「わ、わかった」

 

「なんかその弟、お前のこと知ってるらしいぞ、じゃあ国際電話だからこれで失礼するよ」

 

 ガチャっと音が聞こえ、一方的に話されて電話は切れた。しかし、知り合いって誰のことだろうか?

 

 私は周りのみんなに叔父からの話を伝えた。

 

「どう思う?」


 と珠樹に聞いてみる。

 

「うーん、住みやすいと思いますし、良い所だけど、金額的に生活が大丈夫ならって言う返事になりますね」

 

「とりあえず、叔父さんの友達とやらの連絡を待つしかないな」

 

 とそう結論づけて、この場での話はそれで終わりにした。

 

「結婚式とか決まったら連絡してね、珠樹くん、聡介のことよろしくね」

 

「お世話になりました、はい、連絡します」

 

 

 そうして故郷を後にした私たちは、結婚式の準備をはじめる。

 基本的に身内だけで質素なもので済ませたい。自分達の貯金だけで賄えるものにしたいね。とそんな風に二人で話し合った。

 そんなある日、友梨香から電話がかかってくる。

 

「もしもし、友梨香か?どうした」

 

「ええとね、話したいの私じゃないの変わるわね」

 

「もしもし、ご無沙汰しております。藤堂です」

 

「え?藤堂さん?どうして?」

 

 その後、藤堂さんの話を聞いたところ、藤堂さんの二人目の兄が税理士をしており、叔父と大学の先輩後輩の仲で、叔父からこの家の売買について頼まれたらしい。そして藤堂さんは仕事で不動産取引に詳しいらしい。つまり、藤堂さんがこの家の売買について相談にのってくれて、税務上の相談はお兄さんに聞いてくれるとそういう話になった。

 

 友梨香と一緒に我が家に遊びに来てもらってついでに、家をどう取引するかの相談をする。結局、私達の収入でなんとかなる範囲で、分割での支払いを行う事になった。

 

「これで、ここで二人で暮らせるんですね。だいたいの家具は揃ってますけど、僕のクローゼットを持ち込むのと、ベッドだけは買い換えないとですね、二人で寝るには少し今のは小さいので」

 

 と珠樹が喜んでいる。二人で新しいベッドを探したりしながら、式の準備も進めていく。本来家族だけだが、人前式の見届け人として、友梨香と藤堂さんにお手伝いを願う事になった。なんだかんだで、あの二人、あれ以来仲良くお付き合いしているらしい。

 

 結婚式について、私の家族は二つ返事で好きにしろということであったが、珠樹の家族の説得はことのほか難航した。

 

 大きな会場で、彼の父の援助でというのは、最初にまずお断りした。それについては自分達のできる範囲でという事は尊重してもらえた。

 一番の問題になったのが、珠樹の服装だ。結局、きちんと話をして、二人でタキシードでの結婚式をしたいと申し入れたのだ。

 

 驚いていた、ご両親だが、結局は娘の好きにさせてあげようと折れてくれたが、珠樹の祖母が、花嫁衣装を見ないと死んでも死にきれないと強硬に反対したのだ。

 

 何とかなだめようとしたが聞き入れられることがなかった。

 

 何が最低必要なのだろうと、少しずつ条件を絞りながら、丁寧に聞き取りをした結果、花嫁衣装を見る事ができればいいという事に気付いた。

 

 そこで、式とは別に前撮りをすることになった。

 神社で、聡介が紋付き、珠樹が文金高島田の花嫁衣装で写真を撮り、それを見学するという事で、祖母との話も折り合いがついた。

 

「いいのか?」と珠樹に問うと、「お祖母ちゃんの夢も叶えてあげないとね、コスプレでもする気になって写真は撮るよ」と、そう笑って言ってくれた。

 

「何より、父さんと母さんにきちんと話をできて、よかったよ。これも聡介さんのおかげだね、曲がりなりにもきちんと籍は入れて対外的には嫁に行ったと説明できる状況がつくれたしね」

 

「そうだな、挨拶に行った時に、きちんと話したらよかったかな?」

 

「ううん、この順番でよかったんだとおもうよ」

 

 そうして、撮影の日、紋付き羽織袴の私と、綺麗な文金高島田の花嫁衣装を着た珠樹とは、まるで、普通の男女のような写真を撮った。

 

 珠樹の祖母が泣いて喜んでるのを見て、私達はよかったなと、お互いを見つめて頷き合った。

 

 結婚式は、私の父母、妹夫妻、珠樹の父母、祖母、兄夫婦と、友梨香と藤堂さんという、本当に最小限の親族だけで、ひっそりと行われた。

 

 銀色のタキシードの私と、白いタキシードの珠樹が並んで入ってきて、友梨香と藤堂さんの前で、私達は並んでいた。

 

「墨田聡介と珠樹は、これから、幸せな時も、困難な時も、共に助け合い、一つの家族になることを、皆様の前で誓います」

 

 と、二人揃って皆の前で近いの言葉を述べると、お互いに指輪の交換をして、そして口づけを交わした。


 両家の家族のお祝いの拍手の中、一人泣いて喜ぶ友梨香を、藤堂さんが慰めていた。

 

 本当に小さな小さな結婚式だったが、私たちは、最高に大きな幸せの中にいた。

 珠樹のお祖母さんだけは少し堅い顔だったけれども、みんな笑顔で、私たちを祝福してくれた。

 

 新婚旅行は、国内の温泉宿で、二人でゆっくり過ごす事にした。

 珠樹の父のこれくらいはという申し出を受けて、老舗旅館の離れの特別室に三泊させていただいていた。

 

 昼間は周りの観光地をめぐって、夕飯は、部屋に運んでもらった、海と山の幸を堪能して、すっかりお腹いっぱいになった私たちは、離れの部屋に備え付けの露天風呂に移動した。 

 源泉掛け流しの露天風呂で、私たちがいるいないに関わらず、常に温泉が流れ出ている。とても贅沢な個室付き露天風呂だった。

 

 その露天風呂の檜の香り立つ浴槽の中で、私と珠樹は、ゆっくりとくつろいでいた。

 

「気持ちいいねぇ。二人でこんな素敵なところで、一緒にお風呂でくつろいでるなんて、夢みたいだよ」

 

 とそう話す珠樹に、私は返事をする。

 

「夢じゃないさ、これからはこれが、私達の普通だよ」

 

 そう言って顔を近づける。

 

 珠樹は私の唇を受け入れて、二人のキスは長く続いていった。

 

 溢れ出てくる温泉のお湯の水音で、二人の唇から漏れる音はかき消されて、誰も聞くものはいなかった。 


不定期連載となりますが、完結までお付き合いください。


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