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私の捻れた彼氏  作者: 國村城太郎


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第12話 秘密と本音

 しばらくそうしていると、珠樹くんが話しかけてきた。

 

「ふふ、たっぷり甘えられましたか? ちょっと汗がすごいので、着替えた方が良いですね。僕、タオルをお湯で絞って来ますね。」

 

 そう言うと、彼は洗面所の方に向かった。

 

 戻ってきた彼に、着替えの場所を告げて持って来てもらい、遠慮する私に、「病人は大人しくしていてください」というと、上着を脱がせた私の肌を、お湯を絞ったタオルで拭いてくれた。


 とても気持ちが良かった。上半身を拭いて着替えると、今度はズボンを脱がせて下半身を拭いていってくれる。足の指までしっかり拭いてくれて、本当に気持ちいい。

 

 そのまま下着にまで指をかけようとしたので、慌てて言った。

 

「流石にそこは自分でするよ、ちょっと外で待っててくれるかな?」

 

 そう言って赤面する私に、自分の行為の意味に今頃気付いたのか、珠樹くんも顔を真っ赤にして、あわてて部屋の外に出た。

 

 自分で股間を拭って、下着を履き替えパジャマを着ると、珠樹くんを招き入れる。

 

 入ってきた珠樹くんは、お湯の入った洗面器と、タオルを洗面所へ、そして次は洗濯物をと、次々と運んでいった。


 聡介の預かり知らぬ洗濯機の前で、壁に背中を預けて、珠樹はボフっと手に持った洗濯物に、顔を埋めて、大きく深呼吸をする。

 

「聡介さんの脱いだばかりの下着……、聡介さん自分がどれだけ魅力的なのかわかってない。あんな事言って、破壊力強過ぎるよ。僕、このままじゃ我慢できなくなりそうだよ」

 

 そう言った後、ため息をつくと、洗濯物を洗濯機に放り込む。

 

「それに僕にはまだ、聡介さんに隠している事が……」

 

 顔のほてりを抑えるために顔を念入りに洗ってから、洗濯機を回して、珠樹は聡介の元に戻った。

 

 

 しばらく二人でゆっくりと和やかな時を過ごしていると、また、珠樹の携帯が鳴った。

 

「はい、珠樹です」

 

『今夜…….食事……てから……行かないか?』

 

 スマホからの声が途切れ途切れに漏れてくる。

 

「先生、ごめんなさい、今日は大事な友人が、体調を壊してて看病に来ているんです。だから今日は行けません」

 

 きっぱりとした口調で珠樹くんが断りの言葉を話すと、珠樹くんが耳にあててるスピーカーから甲高く神経質そうな激昂した声が漏れ聞こえてきた。

 

『それはもしかして、あの絵を描いた奴なのかっ!』

 

「え? 先生何処で絵の事を……」

 

『もういい』

 

 ぷつっと電話が切られ、静寂が部屋に戻る。

 

「良かったのか? だいぶマシになってるし、もう大丈夫だよ?」

 

「いいんです、今は聡介さんが心配です。 それに友梨香さんに任されましたから、帰るまでちゃんと留守番してないといけないんです」

 

 その後は次の展示会の出店をいつごろにするのかを相談したりして過ごした。


 

 しばらくすると友梨香が帰ってきた。手には良い匂いのする袋を持っている。

 

「知り合いのお店で、夕飯作ってもらってきたの。聡介には雑炊。私達には、焼きおにぎり、あとは消化の良さそうなおかず何品か入ってるから、みんなで食べましょう。食べ終わったら、珠樹くん送っていくわね」


 久しぶりの栄養のある食事を食べると、私はまた眠くなってきた。

 

「二人とも今日はありがとうな、そろそろ寝るよ」


「珠樹くん、明日はどうする?」と友梨香が尋ねる。

 

「僕、明日も来ようと思います」

 

「そう、私明日も午後は少し用事があるから、10時に今朝の場所に迎えにいくから、そこで待っててくれるかしら?」

 

「ありがとうございます、友梨香さん」

 

「そしたら、用事済ませて、また戻ってくるから、夜また送るわね。聡介、今夜はおとなしくちゃんと寝るのよ」

 

「へいへい」と返事をする私。

 

「もぉ、さ、珠樹くん帰りましょう」

 

「はい、じゃあ聡介さんまた明日」

 

 そう言って二人は帰っていき、私はベッドに潜り込んだ。

 

 

 そして、家の近くまで送る車内。助手席に珠樹が乗っている。

 

「ねぇ、珠樹くん、二人きりで聡介と何かあった?」

 

「ゴホッ!な、何かって?」

 

「だって、二人とも私が帰った瞬間あからさまに距離取るんだもの、何かあったんだろうなぁって、誰でも思うわよ」

 

 そう友梨香が笑いながら言った。

 

「ちょっとだけ、ハグ……しました」

 

「そう……聡介は、きっと君の事受け入れてくれるよ。だから、何か話したい事があれば、全部話すといいわよ。自分の事も、人の事も……ね」

 

「友梨香さん……、はい、話すべき事はきちんと話します。そうでないと僕も聡介さんに向き合えないですから」

 

「きちんと二人が付き合ってくれたら、私も諦めきれるかなぁ?」

 

「そんな、いいんですか?」

 

「いやぁ、実際ムコを取れと親からは言われてるのよね。婿入りはともかくとして、聡介じゃ、画廊の経営的な部分では全く戦力にならないからねぇ。むしろ経理やってる珠樹君の方がいいまであるわね」と、そう言って笑う友梨香。

 

「僕なんかじゃ無理ですよ。まぁ、確かに聡介さんが帳簿みてるところ、想像できませんね」と、珠樹も笑う。

 

「あ、そうだ、男としては譲るけど、芸術家としての聡介の権利は残しといてね、私、絶対あいつを世に出すって決めてるから」

 

「本当に、友梨香さん、聡介さんの絵、好きなんですね」

 

「ええ、好きよ。そこは変わらないわね。男としては色々あったから、もう今更だけど」

 

「そうだ、あの絵の評判、どうなんですか?」

 

「なかなかの評判よ、こないだも、どこかの大学の助教授が売って欲しいって言ってきたのよね。えーと何先生って言ったかな?」

 

「○○大学の甲斐助教授じゃないですか?」

 

「そうその人……珠樹くんの言う、先生でしょ?」

 

「はい、そうです。そうか、それもご存じなんですね」

 

「あの人、奥さんも子供もいるわよ、知ってるとは思うけど」とそう友梨香は忠告する。

 

「はい……知っています」

 

「そ、なら、私からはこれ以上どうこう言えないけど、聡介の所に素直に飛び込めない何かがあるなら、早く話しちゃって楽になるといいわ。あいつならきっと受け入れてくれるわよ」

 

「そうなら、本当にいいんですけど」

 

「きっと大丈夫、馬鹿だけど、いいやつだから、あ、ここでいい?」

 

「はい、ここで大丈夫です。今日はありがとうございました」


 そう言って去って行く珠樹の背中をしばらく見つめていた友梨香は、ため息をひとつついて、呟いた。

 

「面倒な二人ね、さっさと諦めさせてちょうだいよ、まったく」


不定期連載となりますが、完結までお付き合いください。


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