天使の力
ハルが窓の縁に立った。途端に彼女の背から大きくて、綺麗な翼が出てきた。
「私、行ってくる」
彼女は飛び立った。綺麗な歌声を響かせて、人型の怪物の前に行く。
今回もきっと大丈夫だろうとみんなが思ったその瞬間、鋭い光が放たれた。
ハルの力か?と思ったが違った。なんと、あの怪物の攻撃だった。
それから、連続してハルに攻撃が向かう。
ハルも光の矢で対抗しようとするが、怪物に押されてしまっている。
ハルは、諦めずに歌い続ける。どんどんと、彼女の周りの光が強くなっていく。
頑張れ。ハル、頑張れ!
僕らの思いは、ハルに強く注がれていた。
しかし、あと一歩のところでハルの力はその怪物に及ばなかった。
ここで死ぬのかと、僕らが絶望しかけた瞬間、ハルの歌に重ねるように歌声が響いた。
その声は、リョウのだった。
「ここで死ぬのはごめんだ!みんなで、少しでもハルの助けになることをしようぜ」
リョウの言葉で、みんなの目つきが変わった。
それから僕らは歌った。力強く、思いを込めて。
ハルの力は強くなり、やがて怪物を押し始めた。
ハルも、僕らも全力だった。
「いけーーーー!ハル!!」
急に目の前にまぶしい光が広がった。
「どうなった!?」
よく見ると、ハルの矢が怪物に刺さり、怪物は消え始めていた。
「よかった……」
僕らは急いで校庭に行き、ハルに駆け寄った。
「ハル!ありがとう!……」
だが、彼女はとても苦しそうにしていた。
「おい!大丈夫か!」
すると、ハルの体からとてつもない光が放たれた。
「なんだ、これは……」
?「だいぶ、力を使いすぎてしまったようだな」
どこからか、声が響いてきた。すると、空からもう一人天使が舞い降りてきた。
「今回は、其方らのおかげでやつを倒せたようだな。礼を言う」
彼は僕を見ると、周りの人みんなを眠らせてしまった。
「其方がハルの理解者だな。私はハルの父親だ。実は、話すべきことがあるのだ。
天使というのは、じつは、”この世界を背負う者”なのだ。
我らが世界の秩序を保つのは、それが我らに課された義務だからだ。
天使というのは、聖なる力を受け継ぐもの。ハルは今、人間と天使の間の状態にいるが、このままだと、聖なる力の暴走を抑えられなくなってしまうのだ。ハルにも生きる道を選ぶ時が来たな」
するとその天使はうずくまって苦しんでいるハルのほうを向いた。
「選べ!おまえはどちらの世界で生きる!」
ハルはよろけながらも立ち上がった。
「私は!…………」
その瞬間、強い光が放たれ、僕は意識を失った。