表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

崩れはじめる日々

ハルの秘密を知った次の日。

僕が教室に入ると、そこにはいつもの光景が広がっていた。

今日もハルの周りには人がたくさんいて、朝から話が盛り上がっていた。


「まさか、彼女が天使なんて誰も思ってないだろうな」


その秘密を知っているのが僕だけだなんて、少し面白い。



ハルが転校して何週間か経ったが、特に変わったことは起こらなかった。

でも、そういえば最近、欠席者が多い気がする。今学校に来ている人も、なんだか元気がないように見える。


またしばらく経ったある日、いつものように先生の授業の声が響く教室で、何か変な音が聞こえた。

さらに、背筋が震えるような恐怖を感じた。


「いったいなんなんだ?」


僕が疑問に思ったのもつかの間、ある一人のクラスメイトが叫んだ。


「おい!あれ見ろよ!!」


みんなが窓の外に目をやったとたん、一斉に叫びだした。


「きゃああああああああ!!!!」


窓の外にいたのは、普通、この世界にいたら目にしないだろう恐ろしい怪物だった。

その怪物は、校舎の四階にいる僕らと同じ目線に立つくらい大きかった。


「み、みなさん、お、お、落ち着いて」


先生も相当慌てているようだった。


やばいやばい。

本能で感じる。あいつはやばい奴だ。きっと、攻撃されたらひとたまりもない。

どうしたらいい?どこへ逃げる?逃げるって言ったって、逃げ場なんかどこにも無いじゃないか……!


その怪物は、グラウンドから少しずつ僕らの校舎に近づいてきた。


「もうおわりだ……」


みんなが恐怖と絶望に飲み込まれた瞬間、どこからか歌が聞こえてきた。

それは、恐怖を溶かしていくような綺麗な歌声だった。


「いったい、どこから聞こえるんだ?」


あたりを見回すと、そこにはハルが立っていた。

穏やかな表情で歌っていた。ほんのり彼女の周りが光っている。

すると彼女は、あの大きくて綺麗な翼を広げた。

それは、絶望という名の暗闇に差し込んだ、一筋の光のようだった。


「みんなは私が守るから」


そう言うと、彼女は窓から飛び立った。

美しい天使が、一直線に怪物のほうへ飛んでいく。


ここにいる全員が、言葉を発することができなかった。

それくらい衝撃的な出来事だった。


彼女は、怪物の目の前に行くと、また歌い始めた。先ほどよりも大きな声で。

彼女の周りの光も、だんだんと濃くなっている。

彼女が手を前に差し出した途端、光の粒がその手に集まっていった。


「あれは……弓?」


彼女が手に持っていたのは、まさしく金色の弓だった。


そして、歌もクライマックスかと思われた瞬間、光の矢が放たれた。


光の矢は怪物を貫き、黒い煙が消えとんだ。


「消えた。怪物は消えた!」


みんなが歓喜の声を上げた。

僕も、緊張が一気にほどけて、膝から崩れ落ちた。


「たっ……助かった」


それから彼女は、今日はもう姿を見せなかった。


みんなが、ひとしきり救われたことを喜び合ったあと、話はハルの話題になった。


「まさか、あんなことが起こるなんて。あれって、天使だったよな?」


その場にいた全員がうなずいた。みんな、ハルに、いや、ハルという天使に興味津々だ。


「なあ、ヒスイは何か知ってるか?」


リョウに尋ねられたが、ハルと約束を交わしていたので、知らないふりをした。


一体、あの怪物は何だったのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ