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62:イベントの準備開始

 寮に戻って、部屋で明日の準備をしていると、同室のミネットがやって来た。


「リロ! 今度、学校で魔法料理大会があるんでしょう? 一緒のグループで料理しない? 人間族もドワーフ族も雑食だし、食べ物の好みは似ていると思うんだ」


 さすがミネット、情報が早い。リロは迷うことなく言葉を返す。


「もちろん! 一緒に何か作ろう」

「ええ! 皆が普段食べているようなものがいいわ」

「そうだねぇ……」


 堪えながら、リロは考える。


(ミネットはお嬢様だから、普段はものすごく高級な料理を食べていたのかも……)


 リロだと、そういう料理は作れない。

 彼女の食べたいものが、普通の料理でよかった。


「リロは何か、作りたい料理はある?」

「フライ丼」


 即答した。一番好きな食べ物なので。


「……あなた、そればっかりね」


 フライ丼は、モリモリによそったご飯の上に、揚げたエビやチキンなどの具材を載せた豪快な料理である。

 そこに甘いタレやマヨネーズもかかっていて、一つでお腹がいっぱいになる優れた食べ物だ。

 なぜか、初めて食べたときから好きな味だった。


「まあ、フライ丼は学校の食堂で普通に出ているメニューだし、私の作りたい料理とも一致するわ。私はもう少しヘルシーな方が好きだけど」

「キャベツも載せる?」

「……そうね。フライやマヨネーズを撤去する発想はないのね……」


 フライやマヨネーズがなくなってしまっては、フライ丼とは呼べない。

 そこは譲れない。


「まあ、メニューはそれでいいとして、リロは生徒会の仕事もあるから大変ね」

「渉外の仕事だから、先生たちに協力を取り付けなきゃいけないんだ」

「一人だと大変でしょう? エリゼは当てになりそうにないし、私も手伝うわ」

「え、でも……」

「いいから、いいから。実はちょっと興味があるの」

「ミネットが大丈夫なら……」


 断る理由なんてない。リロは彼女に一緒に付いてきてもらうことにした。


「それで、まずはどこへ行けばいいのかしら?」

「毎年、材料の食材……主に植物系は、魔法植物学のモミーナ先生に使用をお願いするんだって」

「そのほかは?」

「肉や魚介類は学年が上の生徒――主に三年生の有志が獲ってきてくれるみたい。一年生はまだ、狩猟や採取に使える魔法を知らない子も多いから」


 なにせ、入学直後だ。

 個人で突出した能力を持つ子はともかく、一般的な一年生が、魔法だけで狩猟するのは難易度が高い。

 リロも魚はなんとか獲れるが、獣は狩った経験も捌いた経験もなかった。

 リオパール家ではいつも、市場で皆のぶんのお肉を買っていたので。


「なるほど。確かに、今の私じゃ、お肉は難しいかも……」

「そうよね。素人が下手に手を出して捌き方を間違えたら、いくら新鮮でいい食材でも全部駄目にしてしまうわ」


 そんな事態は避けたい。


「食用に向く卵も、魔法でどうやって手に入れるんだろう?」

「普通なら市場で売られているか、卵を出荷する農家に頼むとか……よね? 野生の鳥の卵を獲るのも難しいわよ?」

「そうだよね」


 まず、見つけるのが大変だ。

 日頃から、そういう生活をしている人ならともかく、今からリロが本で勉強したとしても、ある程度実践を積まなければ処理できない案件だ。


(……うん。マーガレット寮の三年生に相談しよう。野菜かエビのフライ丼なら、私だけでも、なんとかなるかも)


 ボウル帝国のどこかに、エビが捕れる川があるかもしれない。

 一応泳げるので、岩場を確認すれば……発見できる可能性はないでもない。


「リロ、そこまで悩まなくても、今年は三年生が調達してくれるから大丈夫よ」

「うん……でも……どうやるのか気になるから、寮で聞いてみようと思う」


 魔法に関する興味は尽きない。


「リロは好奇心旺盛ね。ひとまず、モミーナ先生のところへいきましょう。植物園にいることが多いみたいよ」


 マーガレット寮から植物園までは、そう遠くない。

 リロたちは、徒歩で目的地へ向かうことにした。

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