53:植物園で水やり2
ブッチョはそのままスイスイと流れていく。
水路の先は、トンネルになっていた。植物園の外へ流れていっているようだ。
(まずい、外に流れていっちゃう!)
後ろからミネットとエリゼとソフィアも追いかけてくる。ダニエルも後ろから、「サボるな!」と怒りながら追いかけてきている。とんでもないことになってしまった。
ブッチョがトンネル内に入り、リロもトンネルの中に突入する。トンネルの中央を水路が流れ、両サイドは道になっている。リロはその部分を走った。
なんとなく、下り坂になっている気がする。
「ええと、小さな明かりを灯す魔法……」
リロの前を小さな光の球がいくつか飛びまわり、辺りを照らしてくれる。
(なんだか、ブッチョ……水路を流れ慣れてない?)
流れるのに躊躇いがない。最初に彼と出会ったのも水路だった。
(それにトンネルに入ってから、ちょっと速度を調節しているような。私が追いつける速度に落としているような。なんだろ、ついてきてほしいのかな……)
ブッチョはどんどん、トンネルの奥へと進んでいく。
気づけばかなり奥まで進んでしまっていた。
「ゲェ~~~~!」
「えっ……!?」
目の前に扉がある。もう行き止まりだ。
ブッチョはそのまま流されて、トゥルンと扉の下を通り抜けてしまった。
「ええ~~~~!?」
リロは焦る。扉は道と水路の両方を塞いでおり、水路の中に浸かっている部分に小さな穴が空いている。ブッチョはそこを通り抜けたようだ。
「この扉、なんだろう……」
とても古い、金属の扉だった。取っ手がついている。試しに押したり引いたりしてみるが、開かない。
ブッチョを呼んでみるが、向こうから戻っては来ない。
「どうしよう……」
扉の前で右往左往していると、ミネットたちが追いついてきた。
「リロ、ブッチョは?」
「そこの扉の下の隙間をくぐって、向こう側へ行っちゃったの」
二人は唖然として扉を凝視する。
「開くのか?」
エリゼに聞かれて首を横に振ると、彼も扉を押したり引いたりしてみる。
「鍵がかかっているのか……」
彼らの後ろからついてきたダニエルが怒った声を上げる。
「おいサボるなよ!」
真面目だ。とても。
「魔法をぶつけてみたら?」
ミネットに言われ、エリゼが竜巻のような魔法を出して扉にぶつける。しかし、びくともしない。
「えっと、私もやってみる」
リロも扉に手を当てて「粉砕」の魔法を使う。すると、扉に変化が起こった。
粉々にはならない。しかし、ギギィと音を立てて開いていく。扉はゴォンと音を立て、開ききった。
中は真っ暗なので、リロは光の魔法を扉の奥に移動させる。
そこは、廃墟だった。




