48:寮服の採寸について2
翌日は、女子生徒全員まとめての、採寸の日だった。
豹耳の帽子を被ったリロは、ミネットと一緒に、会場である講堂に集まっている。ブッチョとフロリムはお留守番だ。
アヴァレラ魔法学校では、寮毎に専属の服飾工房がデザインを担当しているという。
同じ寮服でもいくつか組み合わせがあり、生徒自身が好きなデザインを選べる仕組みになっていた。普段着る、寮の制服のほかには、寮ごとの体操服も置かれている。
それぞれの寮のコーナーは四隅に分かれて設置されているので、生徒が混じり合うことはない。
(ほかの寮の服は……おお、面白い……)
それぞれの寮で、デザインにかなり差がある。授業が始まって、様々な制服を着た生徒を見られるのも楽しみだった。
それはさておき、まずは自分の買い物だ。
(私が買うものは、長袖と、半袖と、洗って干している間の着替え分と……)
母のカミラから、予め、いくつか買うように言われていた。
(服のコーナーは、あそこだ)
マネキンに服が飾られていて、その横には、魔法で説明書きが書かれた看板が浮かんでいる。サイズや着丈や着心地、素材やこだわりポイント、洗濯の仕方などが載っていた。
(まずは素材……! お母さんが、素材は大事だって、いつも言っているもの)
看板の前に移動したリロは、じっくりと説明書きを読む。
「アドネ絹、タフ絹、ポコ綿、ワタ綿、ドリアド麻、ミスリル繊維、魔法化学繊維エリステル、レヨネ、アグリア、ナイゼル……」
魔法化学繊維は扱いやすい素材だが、作り手によって品質に差があるので見極める必要があった。
「メアモコの毛、アルポケの毛……あ、産地も載ってる」
リロはその中から、母がおすすめしていた素材を使った服の前に立つ。白いブラウスて、上質なラシャセル地方のハク綿を使った、丈夫で洗濯に耐えうる素材である。
さらに魔法効果で、汚れ防止、しわ防止、防臭、温度管理(弱)、自動洗浄(弱)、防御力アップ(弱)、魔法耐性アップ(弱)サイズ調整などの効果が付与されていた。服の効果を、魔法を学ぶ授業に支障のない範囲に抑えないといけないためか、機能は「弱」が多いが、かなりお買い得である。
(防御力や魔法耐性を『強』にしちゃうと、魔法の効果やダメージが、わかんなくなっちゃうからだろうな)
リロは長袖と半袖を一つずつ選んだ。サイズ調整効果がついていれば、背が伸びても買い換えずに済む。
もう一種類はタフ絹とワタ綿の混紡のセーラー服風の白いブラウスだ。リボンの色が薄紫色になっている。こちらも、同じように様々な機能がついていた。
(うん、手触りもよし。これにしよう。セーターとベストは、ノーリランド地方のアルポケのやつを買おう。基本的な機能も全部ついていてるし。上着は……)
悩みながら買い物をしていると、先に買い終えたミネットが走ってきた。
「見てー、私のブラウス! 顔が明るく見える効果がついているんだって」
ミネットのブラウスは、全体的に薄紫色だった。淡い黄色のもある。彼女に似合いそうだ。
「下の服は、もう買った?」
「ううん、まだ。スカートにしようかなって思ってるの」
「私はー……冬は長いパンツがいいかも。寒いし」
「帝都や魔法島はカドの町がある辺りより、暖かいと思うわよ」
「そっか。じゃあ、ほかにも見てみるよ」
上に着るものを買い終えたリロは、ミネットと一緒に下に着るものを選びに行く。
「どれも可愛いね」
リロは淡い黄色と白のチェック柄のキュロットと、白いスカート、薄紫のスカートと落ち着いた黄色のパンツを揃えた。キュロットと白いスカートは、ミネットとおそろいだ。
もちろん、素材も機能もチェック済み。
我ながら、いい買い物をしたと思うリロだった。




