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拾われ少女は魔法学校から一歩を踏み出す  作者: 桜あげは 


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46/60

45:職員棟の校長室

「ゲェ~、ドゥフドゥフッ♪」


 マーガレット寮八階のフロアにある大きな噴水で、ブッチョが気持ちよさそうに泳いでいる。

 リロは興味津々で、そんなブッチョの様子を観察していた。

 傍らには、この寮の寮監である魔法生物学教師のジーンが立っていて、彼も一緒にブッチョを眺めている。


「先生、この子はなんていう種類の魔法生物ですか? 私が持っていた図鑑には載っていなかったんです」

「う~ん……正直、初めて見る生き物だ。俺の図鑑にも、それらしき記述はないしなぁ。これだけインパクトがあれば絶対に覚えているはずなんだが……正直、たぶん雄ってことしかわからない」


 ブッチョには、リロたちの言葉と、魔法海獣語がなんとなく通じた。

 しかし、ブッチョ自身は話せない。彼の体の中には、器用に声を発するための器官がないのだと思われた。

 だから、ブッチョが何者なのか、本人から聞き出すのは不可能だ。


「そういえば、君のルームメイトは? いつも一緒にいるよね?」

「ミネットですか? 『私も使い魔を探しに行く!』って言って、今日はファソの森に出かけてしまいました」


 リロは、ミネットの保護者が寮を訪れたあの日、教科書を買いに行ったついでに、フラッとファソの森に入っただけなのだけれど、結果的にブッチョと仲良くなれた。

 そうして、同じ日に偶然森にいたエリゼと「魔法生物飼育道具」を探しに向かっていたら、後ろからミネットが、息を切らせて追いかけてきたのだ。

 彼女は「いいなー」、「私も使い魔ほしい!」、「一緒に行きたかった」と、何故かいつもより荒れた様子でまくし立てると、今日はさっさと森へ行ってしまった。


(……ちょっと申し訳ないことをしちゃった)


 ミネットが荒れた理由が気になっていたけれど、結局彼女は何も話してはくれなかった。

 そこで、今日はたまたま寮にいたジーンにブッチョが何者なのかを質問していたのだ。


「スライムの一種だと思うんだがー……なんか、嘴とか鰭とかついてるしなー……。校長先生あたりだと何か知ってるかもな、あの人長生きだし」

「なるほど。ジーン先生も知らないなんて、かなり珍しい子なんですね」


 ブッチョはこちらのやりとりに興味がないようだ。噴水に浮いている花を、美味しそうに食べている。

 主食は植物のようで、花や水草のほかに野菜も食べる。


「私、校長先生にも聞いてみます」

「おう。わかったら、俺にも教えてー」


 ひらひらと手を振るジーンにぺこりと頭を下げたリロは、噴水で泳いでいるブッチョを捕獲し、校長であるクリストファーの元へ向かった。


(たぶん、忙しいだろうから。会えたらラッキーという感じだなあ)


 ブッチョはしばらくリロに抱っこされて移動していたが、しばらくするとモソモソ度場所を変え、リロの肩に引っ付いた。そう、文字通り、引っ付いたのだ。


「引っ張っても取れない。なんか粘着してる……この子、吸盤はなかったよね?」


 よくわからないが、勝手に引っ付いてくれているので、移動はしやすくなった。

 マーガレット寮を出たリロは、あちこちに張られている順路案内の看板を見ながら、学校の職員棟へ向かう。職員棟は教師たちがいる建物で、校長室はここの一番上の階にある。


(なんとか、迷わずにこれてるけど)


 初めての場所なので、リロはドキドキしっぱなしだった。

 白くて四角い塔のような職員棟を入ってすぐのスペースに、骸骨族の受付職員がいたので、リロは自分の名前と校長に会いたい旨を伝える。


「校長先生? ちょっと待ってね、今部屋にいると思うから聞いてみるわ」


 そう言うと、職員の女性は机に置いていた水晶を手に持った。水晶がぴかりと光ると、そこからクリストファーの声が「はーい」と聞こえてきた。


(あれ、伝達の魔法具だって、お母さんが言ってた)


 リロの家にも一つある。

 なかなか高価なものらしく、主に母が遠方の仕事を請けるときにのみ使用していた。


「もしもし、校長先生。今からお時間取れますか? あなたに会いたい生徒が来ているんですけど……」

「えー……、今から遺跡の研究結果をまとめようと思っていたんだけど~……」

「リロ・リオパールという新入生で……」

「えっ!? 新入生の……リロ!? 大丈夫! 僕の部屋に直接通して!」


 通信を終えた職員がリロに告げる。


「大丈夫、校長先生が会ってくださるわ。部屋まで来てって……そこのエレベーターに乗って、最上階のボタンを押してね」

「……ありがとう、ございます」


 言われたとおり、リロは建物の中心にある魔法具に近づく。


(エレベーターって、これだよね?)


 壁についているボタンを押すと扉が開いた。

 周りは小さな部屋のようになっていて、中から外の景色が見える構造になっている。

 乗り込んだリロは、言われたとおり最上階のボタンを押した。


(五十五階……これが一番大きい数字)


 すると、リロが乗っている空間が、速い速度で上昇を始める。


(わぁ……)


 肩に乗っているブッチョが、ふるふると揺れた。


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