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拾われ少女は魔法学校から一歩を踏み出す  作者: 桜あげは 


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41:使い魔探しとファソの森

 歓迎会の翌日、リロは教科書を買いに行ったあと、図書館でおすすめされていた本を読んでいた。


 ミネットは帝都にある実家から従者の人たちが寮へとやってきて、今はその対応をしている。

 マーガレット寮には大人数が入れるような、来客用スペースがない。しかも、魔法生物たちが、せわしなく走り回っている場所だ。

 なので、ミネットたちは、静かに話せる場所を求めて街へ出て行ってしまった。


 ……というわけで、一人になったリロは暇だったのだ。

 図書館の中で、今読んでいる本は、学校でジーンからもらったリストにある、「使い魔と仲良くなろう」だ。


「使い魔かぁ……私も、お父さんやお兄ちゃんみたいに、魔法生物と仲良くなりたい」


 アヴァレラ魔法学校では、兄のロバートとキキのように、共同生活を送っている人も多いという。もちろん、使い魔がいない人もいる。

 でも、リロは、使い魔と一緒に学校生活を送ってみたかった。


「魔法生物に、使い魔になってもらうには……魔法島の『風待ち通り』にある『ファソの森』に行く必要がある……あれ、ここの近くだ」


 リロは本を読み続ける。


「そこへ行けば、使い魔になってみたい魔法生物たちが集まっている。特に、新入生が入学する季節は集まりやすい。なるほど、なるほど」


 マーガレット寮に集まってきている魔法生物などは、この限りではないようだ。

 彼らは使い魔になりたいわけではなく、ただ魔法学校に通う生徒や寮の環境を好んで住み着いているだけらしい。


「もちろん、例外もあるが、使い魔を得たいなら、『ファソの森』へ行ってみる価値がある……か」


 少し考えだあと、リロは「ファソ」の森を目指すことにした。やはり、兄のロバートみたいに、魔法生物のパートナーが欲しい。

 ただ、そんな存在が現れるか、少し不安だった。


(私の使い魔になってくれる子、いるかな……)


 自分に合った通常魔法の媒体は、まだ見つかっていない。

 教科書を買うついでに、魔法の杖の店にも寄ってみたものの、やはり適合する杖が見つからなかった。

 ほかの生徒が杖を買うのを横目に、店をあとにするしかなかったので悲しい。


(私が、人間だからなのかなぁ……)


 理由はわからない。でも、少々困る事態にはなっている。


「でもまあ……『ファソの森』には行ってみよう……」


 もしそれで、見つからなければ仕方がない。

 図書館で、「使い魔と仲良くなろう」と、残りのおすすめ本をいくつか借りたリロは、その足で「ファソの森」へと向かった。本は拡張鞄に入れている。

 今日は風が少し強く、抑えていないとフードが飛びそうだ。

 公園っぽい広場を抜けた先、たくさんの木が生え、人工的な川が流れているあたりに、使い魔を希望する魔法生物が集まっているようだ。

 「風待ち通り」内にある公園のような場所を、島の外周に向けってしばらく歩くと、森っぽい場所が見えてきた。


(あそこに、使い魔希望の魔法生物がいるんだ……)


 さすがに、入学した直後に使い魔を見つけたがる生徒は少ないだろうと思いきや、ちらほらと生徒の姿が見える。


(なんだ。考えることは、皆同じだなあ)


 使い魔を飼育する準備は必要だが、マーガレット寮では大抵の生き物が生活できると思う。

 飼育方法が難しそうなら出直す必要があるかも知れないが、リロのいるマーガレット寮の寮監ジーンは魔法生物学の教師だ。

 困ったことがあれば言っていいと話していたし、使い魔の飼育方法も相談できるだろう。


 近くで見ると「ファソの森」は、なかなか広かった。

 手前の広い水路には、様々な魚や魔法生物が泳いでいる。

 島の外周は海になっていて、その水が島の内部に引き込まれて魔法で処理され、使用されている。排水する際は、各家庭の魔法具で浄化してから排水用の地下水路を通って、再び浄化される。さらに海水化の処理をされて海へと戻るそうだ。


 奥の森にも、魔法生物の姿が見えた。

 空を舞う綺麗な鳥たちや、木々の間に隠れる小動物、鹿のような大きな生き物。皆、ひっそりと生徒たちの様子を窺っている。

 リロは「使い魔と仲良くなろう」を読み直す。


「使い魔になってもらうには、魔法生物と交渉し、承諾をもらわなければいけない。お互いに気に入った相手であれば、パートナーとして上手くやっていけるだろう……『アカディの花』を受け取ってもらえれば、契約が成立する」


 この「アカディの花」は、そこら辺の樹にたくさん咲いている。赤いラッパのような、小ぶりの花だった。

 リロは背伸びして、近くの低い樹に咲いている、真っ赤な「アカディの花」を、ひとつ摘み取った。


 近くにいた一人の男子生徒が、水路に架かった橋を渡り、森へと近づいていく。見るからに、新入生といった装いだ。

 なんとなくリロも橋を渡り、森のほうへ移動した。魔法島はそこまで騒がしい場所ではないが、ここは特に静寂に包まれた空間だ。

 鳥のさえずりと、動物たちの鳴き声、風や水路のせせらぎの音だけが聞こえてくる。

 先ほどの生徒が、森にいた水色の兎のような魔法生物に話しかけている。魔法陸獣語ではないようだ。


「なあっ、俺の使い魔になってほしいんだ! 頼むっ!」


 そう言って、彼は「アカディの花」を差し出した。兎はしばらく花の匂いを嗅いでいたが、やがてフンッときびすを返し、森の中へ去って行ってしまう。


「ああ~、駄目かぁ」


 男子生徒は、その場に膝をついた。


(なるほど、断られるときは、あんな感じなのね)


 ……かと思うと、別の女子生徒のところには、クリーム色のハリネズミのような魔法生物がヨチヨチと歩いて寄って行っている。

 気づいた女子生徒が振り返った。


「あら、可愛い。もしかして、私と契約してくれるの?」


 そう言って彼女が花を差し出すと、ハリネズミのような魔法生物は「キイッ」と鳴いて、口で花を受け取った。パートナーを承諾するという合図だ。一人と一匹がふわりと白い光に包まれる。


(おお、こっちは成功したみたい)


 他人のことだけれど、なんだか嬉しくなってしまった。


(よし、私も頑張るぞ)


 リロは森の中に入ってみたり、平地をウロウロしてみたり、自分と合いそうな子を探して歩き回った。


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