31:魔法学校からの合否通知
その日、リロは朝からずっとドキドキしていた。
白い木の窓枠に両手をぺたりとつけ、じっと外を見つめる。空は快晴だ。
(合否通知、まだかな)
父――サムの使い魔である白いフクロウが、隣で天井から紐でつるされた木の棒に掴まり、「ホッホ」と鳴いて、くるりんと首を傾げた。
試験から数日が経ち、リロの心は、時間が経つほどに不安でざわざわしてくる。
実技試験の会場だった植物園での出来事が、何度も頭の中をぐるぐると巡った。
(……あれでよかったのかな。私のやり方、変って思われてないかな……)
窓の近くにある、小さなテーブルセットの椅子に座ると、不意にフクロウが翼をばさりと広げた。
「どうしたの?」
「ホホッ」
視線を追うと、遠くの空から、何かが並んで飛んでくるのが見えた。
(あれは……)
リロの家のほうへ飛んでくる。
かなり近くまで来たのを見て、それが郵便配達のフクロウたちだとわかった。
そのうち茶色の一羽がリロのいる窓の前まで来る。
慌てて窓を開けると、フクロウが足にくくりつけていた袋が勝手に開き、中から一枚の封筒が飛び出した。あれは魔法の袋のようだ。
リロは、わたわたとそれを受け止める。なんとか、キャッチできた。
「ど、どうしよう……手が震える……!」
リロは深呼吸して、机の上に置かれていたはさみを取り、丁寧に封筒を切る。
おそるおそる取り出した紙を広げると、そこに書かれていたのは……。
――合格――
「や……やったぁ」
へなへなと椅子に戻ったリロの周りを、白と茶色のフクロウが「ホッホッホ」と鳴きながら飛び回った。
郵便配達のフクロウは、しばらく飛び回っていたが、やがて仕事を思い出したようにハッと我に返り、再び窓から飛び立っていった。
「お父さん、お母さん!」
リロも封筒を持ったまま、二人のいる工房へ駆けていく。
その日の晩ご飯は、リロの大好きな、カリフラワーの白いシチューだった。




