表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拾われ少女は魔法学校から一歩を踏み出す  作者: 桜あげは 


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/60

29:魔法学校からの帰り道

 終了の鐘が鳴ったので、リロは周囲を見回した。

 ケサランパサランを十匹以上捕まえてきた人は、僅かだった。


(でも、加算点があるらしいし、ほかにも合格者はいるかもしれないな)


 実のところ、実技試験は少し不安だったけれど、なんとかなったよかった。


「実技試験はここまでだ。皆、よく頑張ったな! 合否判定は後日、郵送で知らせることになっている。それでは、解散!」


 カルボンから退出していいと言われたので、リロは新たに植物園に現れた門をくぐる。

 すると、今度は学校の門の外に出た。

 周りにも生徒がいる。

 一度に飛ばしてしまうと混雑するからか、移動先は数カ所設定されているようだった。門を入った先に転移している人もいるし、校舎のほうからも声が聞こえてくる。


(うーん、帰ろっか)


 帰り道もまた混むだろう。

 今日は宿に宿泊する予定はないので、暗くなる前に川クジラに乗ってしまいたい。リロは駅に向かって歩こうとした。

 そのとき、突然後ろから声をかけられる。


「おい」

「……ん?」


 振り返ると、飛行船や実技試験で見た、薄紫色の髪の男の子がリロをじっと見ていた。

 彼もまた、リロと同じ場所へ飛ばされたようだ。


「あんな試験の突破方法、初めて見た」

「え、お米を使ったこと? たまたまケサランパサランの生態を知っていただけだよ」

「粉にしたのは、魔法か?」

「そう。収穫と精米と製粉は魔法で、お皿の葉っぱも魔法で切ったよ。私は、追いかけ回すのは上手じゃないから」

「豹獣人なのに?」

「……えっと、それは」


 フードのせいで間違えられているが、リロは獣人ではない。

 とはいえ、今日であったばかりの彼に、本当のことを言うのもよくないかもしれない。

 人間は帝国内で嫌われ者のようだし、魔法を使う人間なんていない。


 なんと答えればいいのか戸惑っていると、不意に強い風が吹いた。その勢いで、リロのフードが外れてしまう。

 髪の毛まで舞い上がり、本物の自分の耳が見えてしまった。


「あっ……!」


 男の子が目を見開く。


「お前、耳……」


 なんて答えようか焦っていると、どこからともなく、兄ロバート声がした。


「リロー! 終わったのか?」

「お、お兄ちゃん?」


 ささっとフードを被り直し、リロがキョロキョロしていると、空から飛行ボードに乗った兄が、正面に降りてくる。使い魔のキキも一緒だ。


「ちょうど校長に会って、カフェで話し込んでいたんだ。リロの試験がもうすぐ終わるって聞いたから、飛行船の駅まで送ろうと思って」

「あ、ありがとう。でも、列車じゃなくて飛行船?」

「あの列車、激混みだから。しかも、帰りは皆、同時に終了するからなあ」


 それはそうだ。行きの列車でも、リロは席に座れなかったのだ。帰りは、それどころでは済まないのかもしれない。ロバートに感謝だ。


「ほら、雨が降りそうだから飛ばすぞ」

「えっ?」


 ロバートが空を指差す。


「魔法島では、スカイフィッシュが空を飛んでいたら、雨が降る」


 釣られて上を見ると、体の両側にひらひらと蠢く大きなひれを持つ、細い魚が泳いでいた。


「あ、本に載ってた生き物だ。たしか、ここにしか生息していないんだよね」

「そういうことだから、早く飛行ボードに載って」

「わかった」


 リロはいそいそと、地面に置かれたボードへ近寄り、兄の前に乗る。

 そうして、少年のほうを見て手を振った。


「またね」


 なんとなく彼とは、また会いそうな気がする。

 実技試験で、リロよりも早くケサランパサランを捕まえていたので、きっと優秀な子だと思うのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ