アンとアント
アンは、元気な女の子です。
ある暖かな日、お庭で遊んでいると、一匹のアリがじっとこちらを見ていました。
「あなたはだあれ?」アンが言うと、アリは答えました。
「ぼくは、アリのアントさ。この庭が大好きなんだ!」
「アリさんなのに、おしゃべりできるなんて、すごいのね!」
アンが言うと、アントは嬉しそうに笑って言いました。
「ありがとう!ほめてくれたお礼に、お庭の秘密を教えてあげる」
「お庭の秘密?」アンは目を輝かせて聞きました。
アントはちょっぴり得意げに庭を案内しました。
「ここにはビー玉が埋まっている。それから、この木にはおいしい木の実がなるのさ」
アンは、アントがお庭を案内してくれて、近くに宝物がたくさんあることを知り、大喜びです。
でも、アントはちょっぴり寂しそうに言いました。
「アンともっと遊びたいけれど、もうすぐ冬が来る。だから、ぼくは春まで眠らなくちゃいけないんだ」
「春まで待っていてくれる?」
アントの問いかけに、
「もちろん!」
アンは元気よく答えました。
そして、アントは眠りにつきました。
アントは知っていました。
アンともう会うことがないと。人間と、アリの、時間の流れはおおきく違うのです。
霜が降り、深い雪に覆われ、そして春の雨が降り始めました。
アントは目を覚ましました。
少しひんやりとした土の中からそっと顔を出し、あたりを見回します。
アントが外に出ると、
「おはよう、アント!ずいぶんとおねぼうさんなのね!」
そこには、アンがにっこり笑って待っていました。
「お話ししたいこと、たくさんあるの!」
アンは嬉しそうに言いました。
しばらく黙ってから、
「ぼくもさ!」アントもにっこり笑って答えました。
おしまい