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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第1章 人生、終わった

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第4話 ついに始動。運命ガチャ

さて、この身体に残っている記憶を掘り起こしてみよう。

リッハシャル=ルドヴィガは、5歳の時、実母・リア―ネの突然の死を迎える。

それが、破滅の始まり。

それから10年の後、実父の伯爵は逝去し、その後の人生を悲観して彼女は、煮えたぎった蝋を自分の顔にぶちまける、という極端な選択をすることになる。


(そ、それは…避けたい)


現状、私は5歳のリッハシャルに逆行転生をした、ということになる。

よく見れば、私の手足は短いし、歩き方もどこかつたない。

今更5歳かあ…と思いつつも、今自分の意識は律葉のままなので、不幸中の幸いというか、むしろラッキーかも?なんて思ったりする。

これは天才少女の名をほしいままにできて、人生イージーモードに転換できたり…?!

そんな妄想に浸り、一瞬小躍りしそうになったけど、今は母の葬式…つまりは、リッハシャルにとっては最大の味方であり、大切な母親を亡くした時でもある。


「…うん、今は」


血のつながった親子なのだから、母を見送ってあげよう。そう、思った。

手に持った白い花を見る限り、この世界でも、死者を弔うやり方は同じなんだろうなと思う。白布がかかった母の棺にそっと花を置くと、傍らでうなだれる伯爵の姿があった。


「お父様…」


そっと棺の中を覗いてみる。

…私は一度も会うことはなかったけれど、これがリッハシャルの母親・リア―ネなんだろう。

ふと、妙な気配を感じ、上を向くと…全身から汗が噴き出す。

その理由は…宙に浮かんだ白いドレスの若い女性が、じっと私を見つめていたからである。


(え?待って。う、うういてる)


その女性は、明らかに棺の中で眠っている姿とまるで同じ…つまりは、幽霊、ということ…?!

叫ぶこともできず、かといって誰かに訴えるわけにもいかず…茫然としている私の前に、白いドレスの女性は降り立った。


「!!」

『あなた…だれ?私の子じゃない』

「え、ええと」

『…魂の色が違う…』

「あ…」


ドン、と別の参列者にぶつかる。

私はさっと端に行き、壁に張り付いた。


「あの…ええと、この子の、お母さん…ですか」


女性はどこか哀し気に、ゆっくりと頷いた。


「ごめんなさい…」

『なぜ、謝るの?』

「その、気が付いたら…リッハシャルは私になってて、その」

『あの子は…運命に負けたのね』

「え?」


思わず顔をあげる。

…リア―ネは、寂しそうに微笑んだ。


『名前は?』

「!…ええと、リツハ…です」

『そう…リツハさん。あの人を、お願いね』

「?」


ふわ、と私の額に触ると、そっと撫でた。

瞬間、ビリっ…と、まるで電気が身体を走ったような衝撃を感じる。思わずよろけると、私はうなだれている伯爵の背中にぶつかった。


「!」

「あ…おとう、さま」

「リッハシャル…!」


それだけ言うと震える手で、小さな私の手をぎゅっと握った。

同時に、ひやりとした空気がまとわりつくのを感じ―――きっと、リア―ネが私と伯爵を抱きしめているからかもしれない、と思った。

その後も伯爵ずっと…母の棺に土が被さるその瞬間まで、私の手を握っていた。



それからしばらくして―――

あれから例の運命ガチャに動きはない。神様のきまぐれ?それとも。

私は結局、次の日に目覚めても、その次の日も5歳のままだった。


(この転生…確か、実験とか言っていた)


つまり…私の人生はこうしてリスタート切ったということになるんだけど、今後どの程度ガチャが干渉してくるのか、それがまた、不安要素でもある。


(時間戻し券に、空中から突如出現するガチャマシーン)


本とこれ、どういう仕組み??


「うーん…私にしかわからないガチャ日記みたいなものをつけるのも、アリかなあ」


幸い、日本語はまだ記憶にある。なら、誰が読んでもバレることはまずないだろう。

さて…リッハシャルの記憶では、この後すぐに弟、つまりは伯爵と夫人の間に子供がひとり授かることとなる。そして、それが更にリッハシャルの孤独を促進させる要因になるわけなのだが、ある疑問がある。

夫人と伯爵の不仲説、である。


「お二人がうまく行っていないというのは、本当なのでしょうね」

「伯爵さまのふさぎようは見ていられませんわ…夫人には目もくれていないのに」


…メイドや使用人たちは、私が子供と知っているからか、目の前で噂話やら影口をぽろぽろこぼす。おかげで情報収集は滞りなく、今後の行動に利益をもたらすような情報が湯水のように入ってくるのだ。


(部屋も別、朝食だけは一緒で夜も別。こんな寒々しい関係性で、どうやったら子供ができるのだろう?よくある義務とか、そう言う話なのかなあ…)


色々と調整するために、生まれたばかりの頃に戻れたらよかったのに。と、考えたりもしたけど…この身体の持ち主の記憶を全部塗り替えるみたいで気が進まなかった。

いっそのこと、小説の中だの、ゲームの中であるなら話は簡単かもしれないが、残念ながら…私が過去、読み漁った物語の中にはどれも当てはまらないのである。


(頼れるのは、身体に残る記憶だけ…かあ)


それよりも当面の問題は。


「!」

「……」


廊下ですれ違うだけでも、婦人は私を物凄い目で睨んでくる。


(フン。誰がおじけづくものですか!)


「ごきげんよう、伯爵夫人」

「……」


そう。この、伯爵夫人――ロザベーリ・ルドヴィガ。

私の母の葬式にこれ見よがしに派手な化粧してきた鬼畜女である。

ロザベーリは…視覚的な情報としては、婦人と呼ぶには若く(だってまだ20代前半だし)、化粧もスタイルも何時もばっちりで、一般的に美女とされるのだろう。

ただ、心がブスなだけだ。


(この内面ブスに権力持たせたら、リッハシャルはどのみち破滅への道をまっしぐらになる)


今の私の武器は、リッハシャルの持つ未来の記憶と、まだ弟ができていない状態。それと…父親との親子関係の修復が可能な状況にある、ということ。


「…うん!これが一番現実的だよね…って痛!」


こつん。

決意を新たにした瞬間…突如また何かが上から落下し、私の頭を直撃した。


「もうなあに…」


ころころと転がるそれは…金色の卵。それってつまり‥‥


(運命ガチャ!!!)


ころころ、ころころ…と、楕円形の卵は不規則な軌道を描いて転がっていく。まるで、意志を持ったかのように。


「ちょ…逃げんな!!」


ばたばたと通りゆく使用人やらメイド達の間をすり抜け、ガチャの卵を追いかけていく。


「お、お嬢様!?」

「きゃあ」

「ゴ、ごめんなさ…!!あ―――もおお!か、身体が小さい!」


思うように動かないもどかしさを感じつつ必死に追いかける。

やがてそいつは誰かの足元にぶつかり、転がるのを辞めた。

「見つけた!」と、がばりととびかかるのだけど。


「何の騒ぎだ?」



…突如頭上から聞こえた冷たい声にさっと血の気が引く。

こ、この声は。


「あ…ええと」

「リッハシャル…」

「お。おおお おとーさ ま」


何でここに伯爵うう?!

口をふがふがいいながら、後ずさる。嘘でしょ―――?!

お父様と仲良くするのが大前提!とか思った矢先にこんな!


『運命ガチャを回しますか?』

「は!!」


パチンコよろしく、てかてか光る台が眩い光と共に上から降ってくる。


(ま、ままじもんの、ガチャ台、来たーーー!!)


は!これは、もしや私にしか見えない演出?

ばっとお父様の顔を見るけど…ダメだ、眉間についた皺は険しく目つきも鋭くて…何考えているのかさっぱりわからない!!!


「どうした、リッハシャル?」


わざとか?と言いたくなるくらい、子供のリッハシャルの目線からは父の顔面の前でガチャ台で揺れている。


『運命ガチャを回しますか?10,9,8---』

(ひく!とりあえずひいとく!)


うんうんと頷くが、機械的なカウントダウンの音は止まない。


『7,6…警告、掛け声がないと、ガチャは発動しません』


この状況で出せるか!!

全力で叫びたいのをこらえ、私は逡巡する。


(引くか、引かざるか―――)


ペナルティはあるのか、それともないのか。


「リッハシャル?」

「お、お父様…」

『5,4,3』


どうする?引く?!


『2,い』

「私!やります!!!!!」


賭け声など知るか。

とりあえずそれっぽいことを叫んだ瞬間、光るガチャ台は膨らんで…ボン!と自爆した。そして無数の光がはじけて、その一つが私の手元にそっと降りる。


(演出が無駄に派手!!)


出てきた景品は…レア1父の好感度UPチャンス!!と、書かれた…筆字の紙だった。


「何を…する気だ?」

「え?!」

「今、やりますと」

「やりま…は!」


言った。私やりますって言った!!

どうしよう、な、何を。そうだ、このガチャ券使おう!使ってしまおう!!


「い、いい…いい子に!なります!だから…お父様!元気出して!!!」

「!」


ぱっと周りが光って、手元の券が消えた。

これは…好感度上がった?!恐るおそる目を開けてみると…


「…そうか」


優しい、お父様の笑顔。


「だが、リッハシャル…目的を持つのは大事だが、何を明確にするか、プランを考えねば」

「プ…プラン??あの…お父様が、思ういい子って…?」

「そうだな…自分で考え、行動でき、良いことと悪いことが区別できるような人間かな」

「えっと」


五歳の子供にそんなうんちくを言われても。

ちょっと固すぎる気もするけど…この人はとてもまじめで、誠実な人なんだろうな。


「わ、わかりました!」

「…よし」


すっと出された手をぎゅっと握る。


「……」


これは、好感度ガチャの効果になるの?でも…こういうのは、悪くない、かも。

ふと、視線を感じ、視線だけを動かすと…あ、いた。

壁の向こうで、恨めし気にこちらを睨む継母の姿。


(見てなさいよ、くそばばあ。クソみたいな会社で年上からいびられ続けた社畜マインドのこの私が…お前ごときのいびりなんざ、へでもないわ!!)


こうして…私とロザベーリの静かなる戦いが幕を開けたのだ。

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