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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第4章 アリストクラッツ・フェアー

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第30話  ミリア・フォルテの誤算


「ねえねえ、職員会議長いけどさ…何話してるんだろうね?!」


…自称友人の一人が、くすくすと弾んだ声ではしゃぐ。


(わかってるくせに)


「あれでしょ?…あの異国の商人の娘、学校から逃げ出したんだってさ」

「それそれ!聞いた時笑いすぎて息できなかったぁ!」

「退学かなあ?…それとも、頑張ってきちゃう?」

「そしたら来たくなるようにしてあげないと!ねえ、ミリア!」

「そうねえ…」


彼女の名前はミリア・フォルテ。

家門の爵位は男爵位で…そこまで裕福ではない。だが母はアズレア王国一番の公爵家、ヴァラモの出身で、フォルテ家は傍系に当たる。

手鏡の中に映る自分の顔を見てミリアは、頷いた。


(うん、まだ慣れてないけど、いい感じに化粧できた。素材は悪くないと思う。お母さまがよく言ってる。ヴァラモの血を引く限り、美しくありなさいって言ってるもの)


「ねえ、今度は何する?」


彼女の周りには常に人がいる。

みんな、ヴァラモの名に惹かれてやってくるものばかり。カレンシアの立場が良くないからって、鞍替えし、いつの間にかミリアの周りを取り囲んでいる。

そんなカレンシアは…今は、クラスで孤立しているが動じることなく今も、教室の奥の席で一人で黙々と自習をしている。


(何で、こっち見ないの?こいつら全部あんたの取り巻きだったじゃない…悔しくないの?)


カレンシアは、家が没落しかけていると言っても、公爵令嬢…ミリアとは全然違うところにいて、でも変わらない。

むしろ、取り巻きがいなくなった分存在感が増したような気さえする。


「ねえねえ!!なんか中庭がすごいことになってるよ!!」


バタバタと複数の生徒が嬉々としてやってきた。

そしてかわるがわる、何か言いたそうににやにやとミリアの顔を見る。


(…なに?)


「中庭?」

「なになにー?」

「行けばわかるって!‥‥かなりやばいよね」


そして、ちらちらとこちらの様子をうかがう取り巻きの子たち。


「行きたいなら行けばいいじゃない」

「う、うん!あとで報告するね!」


(自分で決めることもできないの?)


ちらりとカレンシアを見る。何があっても動じない姿を見てると、イライラする。


「…さっきから、私を見てるけど、何か用?」

「?!…べ、べつに」

「行かないの?…行きたそうにしてるけど」

「あ、あんたは?」

「興味がないわ」


すると、開いた窓から紙飛行機が一枚飛んできて、カレンシアの目のまえに落ちた。


「…?」


それを開いた瞬間みるみる顔が険しくなっていく。


「…何よこれ」

「え?」

「あ、良かった。今二人しかいないのね」


がさ、と木々が揺れたかと思うと、黒い影が窓から教室に躍り出た。

束ねた黒い髪がふわりと舞う。


「…リッハシャル・ルドヴィガ?!」

「何して…」

「ああ…カレンシアは断ったのね。ヴァラモのお遊戯会の招待状」

「!」

「お遊戯って…」

「あれ?あなたは知らないのね。ミリア・フォルテ…届いてないんだ。アリストクラッツ・フェア―の招待状」


アリストクラッツ・フェアー…って。

ヴァラモの公爵家の直系のみが開催できる、貴族の品評会と聞いたことがある。それに選ばれるのは、名誉あることだと。


(私に…届いてないのに!!なんでこの子に…だって異国の血を引く庶子の子でしょう?!)


「あ あんた…何で!!」

「まあ、どうでもいいけど」

「どうでもって…!私はっ」

「それより、カレンシアは見た?ソレの中」

「……ええ。何よ、これ…!」

「?!」


(何、何が書いてるの?)


「侮辱にもほどがある…!私を何だと思ってるの‥‥!!」


さっきまで平静だったカレンシアが、こんなふうに怒るなんて。


「ちょ、ちょっと、何よ…それ、何が書いて」

「中庭に行けば?そしたらわかるわ」

「……っ」


バタバタと走り去るミリアを見ながら、リッハシャルは不敵な笑みを浮かべた。


「どうして、あんたがこれを?…オラン教菅のサインの入った、私の評価表じゃない!」

「たまたま拾ったの。それ、原本だから、あなたの好きにしていいよ?」

「拾った…って」


カレンシアは窓の外を見てはっとなる。

青い空を流れる風に狂わされるようくるくる回る、たくさんの白い紙。


「何あれ…まさか」

「そう。……全校生徒じゃないわ。ごくごく一部の生徒達の評価表のコピー…例えばミリア・フォルテとか、私に水をぶっかけたり、制服汚したり…とかの、子たちね」

「……あんた、一体何のつもりで」

「意趣返し…って言葉があるの。仕返しとか、報復とか…そう言う意味。ミリアもあの取り巻きの子たちも、私と私の友人に散々いろいろしてくれたじゃない。でも、カレンシアは、ククナには手を出さなかったでしょ」

「……べつに。興味がないだけよ、それよりこれ…銘柄とか、投資とか…まるで」

「………どれくらいの教官が関わってるかわからないけど、みんなの将来を売り物にして、買う奴らもいるってことじゃない?」


窓を開けると、複数の子たちの叫び声が聞こえた。


「見ないで!!見ないで拾ってよ!!!」

「な、何これ…」

「嘘?!私の評価って…こんなに低いのっ?!」


その声を聴いて、カレンシアは顔をしかめた。


「……外の紙くずって」

「ミリアの評価。…容姿の評価から、何から何まで全部オールD⁺だって。それが、ミリア・フォルテの価値…正直、馬鹿みたいって思うけど」


一拍おいて、リッハシャルは言う。


「…あの子、自己評価高そうだし、いい気味。」

「………」

「さて、じゃあ帰るね」

「これをどうするの?…全生徒分、あるんじゃないの?」

「どうもしない。…あるべき場所に返すだけよ」


くるりと背を向けるリッハシャルは何も言わない。

カレンシアもまた、何も言わず、評価表をじっと見た。


(カレンシア・エルメア…総合評価、B⁺…フン、馬鹿にして。今に見てなさいよ)


そして、ぐしゃりと握りつぶした。


「見ないでよ!!見るなーーー!!!」


悲痛なミリアの声を背に、カレンシアは再び机に向かうのだった。



その日、学園内は騒然とした。昼休みになる直前、突如屋上からばらまかれた【ミリア・フォルテ】と以下数名の評価表のコピーは風を受け舞い上がり、学園中に散らばったという。

同日、職員会議が行われていた為、教官たちが一同にそろう場面で、その事件が起きた。

そして、同時刻に学園本部に匿名の「金銭授受表」と書かれた書類が封筒に入れた状態で入り口に置かれて評価表・呪時評全てに一学年主任のオラン・ハリムアの印とサインがあり、急遽教官詰問会が開催されることとなったのである。


―――そして、再び中庭に戻ったころ…もう日が暮れかけていた。


「思った以上に大騒ぎ、だね」

「…ばらまいた評価表全部に、オラン教官専用の印鑑を押すなんて…」

「俺もあの教官、昔から嫌いだったんだ」

「へえ…」


本当、けろりという。

評価表発見後…予想以上に職員会議とやらは長引いたようで、私達は好き放題に工作をすることができた。だって、あの部屋には、オラン教官の私物が山のようにあったから。

ちなみに育毛剤だけは、元の場所に置いておいた。そのほかはもうもぬけの殻だけどね。


「…こっちの方はどうする?」

「うーん…ヴァラモ公爵家と言っても…直接郵送じゃあ意味ないし。明後日開かれる、アリストクラッツ・フェアーにでも持ってこうかしら」

「…それよりも、いい案があるよ」

「いい案?」


クロノ先輩の眼鏡が夕陽を反射してきらりと光る。


「俺に任せてもらえないかな」

「…先輩に?」

「ああ。…君が創造するよりも、もっと面白い効果を生み出せる自信がある」

「……聞こうかどうか迷ったんですけど」

「うん?」

「先輩って…何者ですか?」

「ふふ…どう思う?」


うーん…この人のことは、知りたいけど、知ってはいけない気がする。

知ったら二度と戻れないような、どこか遠くに行きそうな…何かに流されそうで、正直恐ろしくも感じる。だから、私はこう結論付けることにした。


「きっと…学園の秘密を暴く、謎の工作員!…とか!!」

「……工作員??」

「はい!きっとそう!!だって、株とかヴァラモとか色々…詳しいし!だから、その原本も…本当にすごいことを起こしくれそうだな、とは思います」

「そこは…褒めてくれるの?」

「ほ、ほめ?」

「褒められると、誰でも嬉しいじゃないか」


こ、これは。褒めた方がいいの??

工作員!で話を終わらせようとしただけなのに…


「す、すごーい…?」

「心がこもってないけど」

「え、えぇ…」

「あ、じゃあご褒美をもらえる?」


そして…先輩は軽やかに私の手を取った。

そして、そのままステップを踏み、くるくるとまわされる。


「わ わわ?!」

「ダンスは?」

「家庭教師の先生に叩き込まれたから…な、なんとか?でも、音が」

「なくていいよ、そんなの」

「ど、ドレス着てませんけど、いいの??」

「気にしない、気にしない。…どうせ、フェアーでも誰かとダンスすることになるんだろうし。その前に練習しておかない?」

「れ、練習?!」

「そう!…最初は、俺。譲らないよ」


これがご褒美??

本当、不思議な人だ、このクロノ先輩って。

誰もいない庭園は、草はぼうぼうだし、廃墟と化した噴水みたいなものもあるし…風情なんてありはしない。でも、夕焼けの赤い光が影を映して、ディストピア感があって雰囲気がある。


(あ…でも、ちょっと楽しいかも)


大理石のダンスホールはないけど、石畳はまだ原形をとどめているから、何とかステップも踏める。


「正しいことに使うから、大丈夫。そこは信頼してくれていいよ」

「…わかりました」

「伯爵にこのことは?」

「え?」


本当は、子供の問題だから、お父様の力は借りたくないけど…この先輩も巻き込んじゃったわけだし、報告しないわけにはいかない。


「…ルドヴィガ伯爵なら、きっちりと仕事をこなしてくれるよ」

「……私、何も言ってないのに」

「何となく、そうかなって」


やっぱり、この先輩不思議。

そして、音がないダンスホールで…私たちは日が落ちるまで踊り続けた。


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