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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい


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3/15

第2話 ここはどうやら小説の中でも、ゲームの中でもないらしい


「あなたのお名前は?」

「え、えっと、前原 律葉…」

「マエバラリツハ…うん。間違いないわ」


アリアドネと名乗るこの自称女神だという女性は、何かの確信を持ったように力強く頷き、黄金の糸巻を取り出した。


「さあ、被験者マエバラリツハさん。今から、あなたに二つの選択肢をあげるわ!」

「へ?い、いきなり…」

「…残念ながら、あなたは今――」


すっと指をさした方に…白いベッドの上で、自分が治療を受けている姿を見せられた。


「この通り!会社から出た途端、車にぶつかってしまったの…」

「えええ?!」

「このまま命を終えるか、それとも…新たな人生を進み始めるか」

「新たな…じん、せい?」


突然された宣告に、「へへ、冗談でしょう?」と間抜けな声が出てしまう。

すると、彼女が天に向かって手をかざすと…空から、羽根の生えたガチャマシンが降り立った。


「ガチャ…ってまさか」

「そう!この神様ガチャには、色々な世界の色々な人生がカプセルに詰め込まれている…それを、あなたが引くってわけ」

「人生ガチャ…ってこと?」

「そうそう!」

「それで…その対価が」

「マエバラリツハさんの人生そのもの!ってこと!」


そう言うと、ぱあっと笑顔を浮かべ、彼女は手をたたいた。


「そんな」

「安心して!アフターフォローもしっかりするから!」

「通販の宣伝じゃないっての、もお…」


(でも、人生を…やり直す。今から、全く違う自分になる?)


頭の中で、ぐるぐると自分の過去が映画のように流れる。

…走馬灯ってこんな感じなのか。


(このまま、戻って…助かったとして。それで)


自分は、何か変われるだろうか?


「他に、注意点は?」

「ええとガチャをすれば新しい人生を歩むけど…この世界そのものと、あなたは縁を切ることになる。二度と、戻れないわ」

「この世界…と」


一瞬、考える。

けれど…もう、心は決まっている。


「じゃあやる。」

「本当?もう一度聞くわ、ほんっとうに、やるのね?」

「…やる!」

「…わかったわ!では、どうぞ!」


突然くらり、と眩暈のような感覚に襲われ、そのまま意識が遠のく。


「あれ…でもそれって」


私、死ぬの?

声にならない声を出し、リツハの身体はふ、と無重力の世界に落ちていく。

手足の感覚も、身体の感覚も何も感じなくなる。

しっかりと開いた瞳の向こうに、金色の丸いものがぽっかりと浮かんでいるのが見え、ぐっと手を伸ばし掴む。

そして…突然、バケツ一杯分もあるかと思うほどの水が自分の顔を打ち付ける。


「ぶはっ?!冷たっ?!」


息をする間もなく繰り返され、ようやく三度目にして止まった。


「げほ!げほ!」


頭がすっきりするような、眼が冴えるような、そんな気分で何度か目を瞬く。


「いい加減、認めたらどうだ?!自分が黒魔術を使って、陛下を篭絡しようとしましたってなぁあ!!!」

「………へぁ?」


水が目に染みて痛い。手でこすろうとしても、何か重しのようなものがあって動かせない。


(足枷…手枷…それに)


ひどい激痛だった。…どこか痛い、とかそういうのではない、身体中のあちこちがずきずきと痛む。


「う……私は、誰?」」


乾いた唇からこぼれた蚊の鳴くような一言。

これが聞こえたようで、男どもはぎゃはは、と笑った。

片方の眼が霞んでいるのはもしかして自分が泣いているから?それとも、水のせい?

朧な瞳で、目の前にずらりと並ぶ連中をひと睨みする。

――ブサイク、髭のおっさん、ひょろい男、そしてデブ。

全員にやにやとして、とても楽しそう。

しかし、そのうちの二人は、なんだかどこかで見たことある気がする。


(不細工、ひげ、いのうえ、なんか元上司に似てる…ん?上司?)


「ついに気でも狂ったか?悪名高き金の亡者、リッシャル・ルドヴィガ女伯爵さまよ!!!」

「!!!!!」


…私の身体にドドンと電撃が走る。


(誰それ?!)


「りしゃ…るど?」

「は?おいおい、記憶喪失のフリかよ」

「知らない…誰 それ」


どさり、と床に座り込む。


(え?この状況、なに?)


一度、状況を整理してみることにしよう。


(…私の名前は、前原 律葉。だった)


しがない会社員、ダークネスな企業に勤めて4年。

毎日毎日うだつの上がらない日々を送っていたが…遂に堪忍袋の緒が切れ、性根が腐った後輩と、いつも雑用を押し付ける上司に一矢報いたばかりだった。

さあ、もう仕事もやめよう!!人生変えよう!そう思ったのもつかの間。


(そうだ、運命ガチャって…あの)


実験がどうとか、何とか…もう誰と話したのかも、どんな内容だったかももう思い出せない。

ただ、私の人生は、全く別のものに変化してしまった。

…そう言うことだろう。


(でも…これって、処刑待ちの重罪人よね?)


そう…私は前原律葉のまま、異世界にきて、余命いくばくもない状態かもしれないって、そういう、こと。


(罪人…死ぬのか、私は)


「アハハ…あは あははは!!!」

「?…な。なんだこいつ」


なんだかこみ上げた笑いに、不細工共がざわつく。


「おい!笑うなって」

「ふふ…ふふふ!これが笑わずにいられますかっての…!何これ?やっとの思いで馬鹿上司に一矢報いたぞ♪って思ったのが天罰だった?!よっしゃあとか言ってエレベーターでこぶしを挙げてジャンプしたのが運の尽きだった?!!」

「あ―あ…とうとう気が狂っちまったのか」

「ほんとに、死ぬことになるなんて…あははは!!!」


(あーそうか!!全部嫌になったら、世界が亡びるんじゃなくて私が滅びればよかったんだあ~)


後に振り替える。

この時の気持ちは表現できない程ぐちゃぐちゃで、何もかもがどうでもよくて…今までの人生とか時間とかがあまりにバカバカしく、全部手放したらなんと気が楽なことか、と気が付いた瞬間でもあった。


「くそ!」


不細工三人衆の一人、デブが顔を真っ赤にして手を挙げてきた、それがそのまま頬にクリーンヒットするが、怯まず、歯を食いしばってそのままにらみつけた。


(怯んじゃこのデブに負けるってことになる。)


「ほーら、さっさと殺しなさいよ!このブタ!いのうえ!はげ!!いつもいつもいつも雑用ばっか押し付けやがってこんのデブ!私を殺したら呪ってやるんだから…いっっしょう!!眠れない夜を過ごせばいいわぁ!!!」


たまりにたまった私情により、一度放たれた理性はもう戻らない。

日本円一円にも及ばぬほどの安い挑発に簡単に飛び乗った豚男は、みるみる顔を真っ赤にしていく。


「あんたも…あんたもあんたも!!!!私が死んだらこいつを本当に呪ってついでに元上司のクソ共も呪ってやるうううう!!!!

「こん…っの!アマ!!!」


(あー…いいことない人生だったなー)


手足の枷は思った以上に重く、もう動けそうもない。ならばいっそ言いたいことだけ言ってこの連中に爪痕を残そう、と考えた。


(私がこの身体にいるってことは、もう…せめて、このなんとかさんの人生を理解してあげたかったな)


きっと…もうこの身体の元々の人はいなくなったんだろう。

そんな思いがふっとよぎる。


「そこまでだ!!!」


せっかくなら鈍器かナイフでひと思いに、などと考えていたのに、全く予想外の出来事が起きた。

ガシャン、と枷が外れた音がすると同時に、全身の力が抜けた。

久しぶりに自由になった腕が違和感がありすぎてだらん、と下に落ちてしまう。


「…何?」

「傷をいやしてやれ」


現われたのは…そこにいる不細工共と真珠どころか宝石程にも格が違う、超絶美形の男性だった。この世界にとっては普通なのか、金色の髪にきらびやかな紺色の瞳、さらりと流れるストレートのロングヘアには…若干の抵抗はあるも、女性と見まがうほどに美しい。

そして、周りを取り囲む図鑑でしか見たことないような黄金の鎧を着た護衛らしき人たち。


「!!!!」


瞬間、身体の中の奥の方で強烈な嫌悪感のような物が沸き起こる。


「どういう、こと?」

「お言葉ですが…!」

「黙れ。…大公様の命令だ」

「僕は、お前を赦さない…だが」


(…何で、この人、こんなに悲しそうなの。でも、私は)


ああ、だめだ、煩い。

突如身体が楽になった反動か、徐々に意識は遠のいていく。その向こうで、先ほどのデブがそれこそブーブー文句言ってるのが聞こえたような気がした。


(赦すとかどーとか知らないわ…どうせ)


どうせ死ぬんだし。

そう、一言だけつぶやいて、そのまま再び床に倒れ込んでしまったのだった。


―――そして、夢を見る。


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