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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第3章 人生って何が起こるかわからない・学園中等部編

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第24話 青葡萄と赤つぼみの招待状


「あなた、貴族じゃないでしょ?なんでここにいるの」


そう、声をかけてきたのは、一年生のタイをした女の子のグループ。

…うちのクラスの子ではない。


「あ…えっと、でも。食堂は誰でも使えるって」


ククナはうつむきながら半歩下がる。


(手が、震えてる…)


「そうだけど…遠慮とかするものじゃない?フツー」

「っていうか、場違いすぎて良くこれたね、って感じ」

「あれ?!なんか生え際黒いよー?染め残しかなぁ?」


きゃはは、と彼女たちは嗤う。

私の場合は、陰湿でなんかこう…イライラさせられたけど。こういうあからさまな悪言っての言うのも同じくらい不快だ。


「ねえ、遠慮するのはあなた達じゃない?…そこ、入り口なんだけど」


すっと前に出ると、女の子たちの笑い声はぴたりと止んだ。


「何よ」

「あ、この子知ってるー庶子の出とかって…」

「そうだけど。その庶子の出の私より、マナーも空気も読めないじゃない、あなた達。ほら、後ろの人、困ってるわよ」


そう、こいつらが立っているのは、食堂の入り口のドアの前。

普通に邪魔よね。

女の子たちは慌てて気が付いて、さっと避ける。


「ああ…それと、庶子だろうが何だろうが私は一応伯爵令嬢よ、あなた達よりも貴族としての階級は上。

身分で人を測るなら…既にこの時点で、場違いなのはどっちかしら」

「…な!!」

「ではごきげんよう、皆さん。無遠慮に他人の容姿を批判するなら、鏡を見てから言うことね。行こ、ククナ!」

「シャルちゃん…」

「全く、ランチタイムが終わっちゃうよ…おなかすいたね」


こうして、長かったお預けタイムは終了して、無事初めての友達とランチを達成できたのだった。

…ちなみに、Aランチはハンバーグとサラダのセットで、とっても美味しかった。


「ただいま、ルル!」

「あら、お嬢様。…なんだか楽しそうですわね?」

「へへ、友達出来たのよ!」

「まあ、それは良かったこと!…今度このルルにも紹介してくださいな。美味しいクッキーをおつくりしますよ!」

「うん!…あら?お父様からの手紙ね」

「はい。…それと…こちらも一緒に送られてきました」


おずおずと差し出したのは、赤い薔薇と、青い葡萄の模様が描かれた封筒だ。


「青葡萄…に、赤い蕾の薔薇」

「少しデザインが違いますけれど、ヴァラモ家の紋章ですわ、お嬢様」

「……ヴァラモって」


(差出人は…ルビエル=ヴァラモ)


「イロモノ兄妹の妹の方?!なんで…」

「中をご覧になりますか?」


印章をはがすと、中に入っていたのは一枚の招待状だった。


「アリストクラット・フェア…の招待状?」


文面はなし、ただ、日時と時間、場所と、「相応の服装で」とのみ…まるで、クイズみたい。


「夜の時間…となると、ドレスコードが必要になりますわね」

「うん…しかもこれ、指定場所は学校の外だ。だから、お父様の手紙と一緒に送られたのね。貴族としての業務は、学園も容認してるから…つまりは、伯爵令嬢として参加しろってことだね…」

「あら、ではちょっとだけ里帰り、ですわね」

「うん」


それにしても…【アリストクラット・フェア】?初めて聞いた。


(なんでわざわざ私に…?)


お父様の手紙にも、「好きにしなさい」とし書かれていなかったけど…娘であるロザベーリがあんな形で追い出されたら、普通は関わりたくもないって考えるだろうに。


(あの家は呪われているから)―—―ロザベーリのあの言葉は、私に対する警告だと思っていたけれど、

ただの、彼女にとっては「真実」だったのかもしれない。

つまり、ヴァラモ家自体、「普通」ではないんだ。


――次の日


「え?シャルちゃん、しばらくお休みするの?」

「うん…そうなんだ」

「そっか…」


うう。せっかく気兼ねなく話せるような関係になりつつあったのに…。


「でも、一週間くらいだから」

「うん!」


さて、例のいじめ問題は一応片付いて、全員で旧校舎の清掃が無事行われた。

一部の生徒はぶつぶつ言っていたみたいだけど…ところで、この一件と、この間の食堂の一件とで私に関する妙な噂が増えてきているらしい。

それが、「あの黒髪の子、なんか怖いらしい」だ。

そのせいもあってか、みんな私を遠巻きに見て怯えるように目をそらす人も少なくない。

ククナにも影響あるかも、と心配していたけど…今もこうして普通に話してくれるから、有難い。むしろ…私のいない一週間の方が少し心配かもしれないな。


「なんかあったら、私にも相談してね?ククナ」

「だ、大丈夫よ…大げさね」


この時は、ククナはまだ普通に笑っていた。

でも…それがやせ我慢だったってことに、後に気づくこととなる。

廊下を歩いていると…向こうからカレンシアがやって来た。

彼女は私の顔を見るなり、さっと視線を外し、足早に私の横を通り過ぎる。


(相変わらず一人、か…)


別に同情とかそう言うのはないけれど…なんだかなあ。


「…リッハシャル=ルドヴィガ」

「!」

「あんたの友達…ククナ=リムノ、ちゃんと見ててあげた方がいいと思うわ」

「え?」

「身分とか、そう言うの…息をするように見下す連中が多いから。あいつら陰湿で計算高くてずる賢いわよ。注意することね」

「……」


その筆頭がカレンシアだったのでは?という思いもするけれど…多分、カレンシアだからこそわかるのだろう。


「ありがと、カレンシア=エルメア」

「…フン」


忠告は、しっかりと胸にとどめておくとしよう。


(それにしても…何か、気になることでもあるのかな?)



「よし、荷物はこれくらいかな」

「迎えの馬車が10時に来るとのお知らせです」

「うん。…アレ?」


寮の前は、石畳で舗装された道路になっている。弦薔薇のアーチをくぐると、生徒全員の共用の中庭エリアに出るのだけど、向こうから…誰かが走ってくるのが見えた。

今は皆授業中のはずだけど??誰だろうと思ってみていると。


「シャル―――!」


相変わらず足が速い…ケディだった。


「あれからケガ、大丈夫か?元気か??」

「こら!ケディ走るなはしゃぐな!」…後ろからフォーレの声が追いかけてきた。


「平気だよ!ありがとう。…こんな時間にどうしたの?」

「ああ、実はさ」


すると向こうから、二人分の大きなカバンを抱えたフォーレが走ってきた。


「あ、僕の荷物。サンキュ」

「ったく…俺を置いていくな!やあ、シャル。けがはどう?大丈夫?」

「フォーレもありがとう!大丈夫よ。その大荷物…もしかして二人とも一時帰宅?」

「そう」


フォーレはトランクを足元に置いて息を整えた。


「…貴族の責務ってやつ。シャルもそうじゃない?」


すっと一歩前に出て、ひそやかに言う。


「ヴァラモからの招待状」

「!」

「同じ方向だろ?…俺たちと一緒に行こう」

「うん…」


私はルルに伝言だけ伝えて先に馬車に乗り込んでもらった。


「うちも馬車が来てるから」

「でも、いいの?二人とも。少し遠回りになるでしょう?」

「大丈夫だって。今日は帰るだけだしな」


実を言うと、うちのルドヴィガの邸と、エイデン家のお城は意外と近かったりする。とはいっても、現代で言うと駅が三つ分くらいの距離感はあるのだけど。

いつも通り馬車に乗り込もうとすると…何と同時に二人で私に手を差し出してくれた。


「ほら」

「ん」

「えっと」


双子は思わず顔を見合わせるけど、フォーレはさっと手を引いた。


「じゃ、乗るときは僕」

「なら、降りるときは俺を使って?」

「あ…はは」


うーん…カレンシアや彼らのファンが見たら何されるかわからない。

かくいう私も、馬車に乗るのは一人か、ルルと一緒の事が多いので、ちょっと照れくさい…。

ううん、切り替えていこう!


「それで…ヴァラモの招待状って、二人も貰ったの?」

「…そう、ほら」


ケディが上着のポケットから出して見せてくれたのは…私と全く同じ招待状だ。

それをさっとフォーレが手に取った。


「大事なものをポケットにしまうんじゃない…」

「だって一番なくさないんだよなー」

「この、青葡萄と赤薔薇薔薇は、ヴァラモ特有のモチーフ遊びのような物なんだ」

「モチーフ…遊び?」


ふと、脳裏に浮かんだのは以前に一度見た、歪なアシメトリの白花模様。

確か、ヴァラモ家の未婚の女性が全員持ってると、ロザベーリ(元継母)が言っていた。


「青葡萄も赤いつぼみも、ヴァラモ的には【未成熟】…つまり、10代の後継とか、そう言う意味を持つ。主に、俺達みたいに学園に通っている年代の子息・息女が呼ばれる、非公式な社交パーティーみたいなものらしい」

「らしい?…二人とも初めてなの?」

「去年は来なかったな【アリストクラット・フェア】…ただ、父上から聞いた。不定期のヴァラモの品評会、だって」

「え」

「ま、まあ…言い過ぎではない、な…うん」


フォーレは言葉を選ぼうとしたけど…ケディは、臆することなくあっさり言ってしまった。


「なんだよ。一番わかりやすいじゃないか」

「ねえ、品評会って?貴族の後継が全員が呼ばれるの?」

「いるだろ?ヴァラモ兄妹が学園に。気に入った相手とか、今後もいい関係を続けたい家門とか、そう言う独自の選別があるって聞くけど」

「ああ…あの人たち」

「あれ?知ってるのか。…まあ、有名だよな。僕は一度も話したことはないな。フォーレは?」

「俺も…よほど()()()()()にならない限り、眼中にもないだろう?」


(え?ちょっと待って…)


「私…何回か遭遇して声をかけられたよ。まあ、ロザベーリもヴァラモ出身だし無理もな」


あれ?何だろう。一瞬にして空気がピリッとなった。


「ソレ、初めて聞いた」

「声って…向こうから?」

「2人そろって、どうしたの…?」


すると、同時に二人してなにやら考え込んでしまった。

ややしばらくの間の後、先に口を開いたのはフォーレだった。


「あの人たちは…よほどのことがない限り、自分達から声をかけることはない」

「そうなの?でも、兄の方…セフィール、だっけ。あっちはいつも女の子囲まれてるじゃない…あの取りまきに囲まれてる中、こっち来るんだもの、びっくりしちゃったわ」


ホント、今思い出しても冷や汗が出る。女の子のファンの力って怖いのよね…


「それ、良くないな…」

「え?!フォーレってばさっきから何なの?…あれだけ人気者なら、誰とでも話すでしょう?」

「…いい?シャル。あいつらはさ、話しかけられたらにこやかに対応するけど、自分達から話しかけることは絶対にない」

「そうそう、だから僕たちも話したことはないんだ」

「あ!…なるほど。え でもそれって…」


(向こうから声をかけられたのは、入学式と、食堂と一回ずつ)


そう言えば、最初からあの人達は、私を知っていた。

ロザベーリのせいだと思っていたけど…他に、何か理由があるの?

――当然だと思っていたことが、こんなに急に不安になるなんて、思いもしなかった。


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