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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第2章 あれ、人生やればできるかも。

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第14話 ピンチが向こうからやって来た!


「ラ、ラウ様、お嬢様…私は、これで」

「メイドさん、待って」

「!!」


(…逃がさないよ)


走り去ろうとするメイドを呼び止めると、ラウがわかりやすく顔をしかめる。


「お嬢様。勘弁してください、この子は新人で――」

「ねえ…ここって、色んな草や花があるのね」


ラウを無視して、メイドに声をかけてみるけど…顔色が悪い。


「この篭の中…あなたが全部摘んだんでしょ?」


ザっと散らばった草花を見る。

床には、紫の花、黄色の花…変わった形のハーブらしきものなど、多くの種類がある。その中の一つ、私は毒々しい紫色の花を見つけた。


(やっぱり)


「お、お嬢様が気に掛けるほどのものはありませんよ」

「…そうかなあ」


伸ばそうとした手を、ラウがぐっと掴んだ。


「ああ、危険です。これは毒草です」

「そうなの?」

「触ったら…死にますよ?」

「……どうして、そんな危ないものを摘み取ってるの?」

「危険だからこそ、です」


メイドが運んでいたのは籠は一つだけ。

頭の中のスキルのおかげで、散らばっている種類のハーブが毒かそうじゃないかの区別はできる。


(…すごい、頭の中に辞書があるみたい)


やっぱり…あのどす黒い花がべランドンナ、だ。


「…ええと、ラウだっけ?前も会ったよね」

「!」

「はい、お嬢様」


崩れていた襟元を直し、大仰に礼をする。


「ラウと申します」


…確かに顔は整ってる方かもしれないけど。こういうのが、ロザベーリの好みの顔なのかしら?お父様の方がよっぽどカッコいいわね。


「あなたは、薬草に詳しいのね」

「それほどでも」

「だって、一目でこれが毒って気が付いたんでしょ?」

「…それは、色が」

「なら、メイドさんは気が付かなかったってことだよね」

「え?!」


頭の中の辞書に浮かんでいるのは、黒い実に、薄紫色の花。

葉っぱの形も、さっき踏んだ時に感じた変なにおいも、このベラドンナの特徴らしい。

もしかして、普通のハーブと一緒にわざとベラドンナの花を紛れ込ませたの?


「それ、どこに運ぶ予定だったの?」

「そ、それは、…お、お夕食の」

「もし、万が一その毒草を使っちゃったら…たいへん」

「も、もうしけありませ…っ」

「……はぁ、全く」


なんだろう。

今、背筋がぞっとした。


「……賢い子供は好きじゃない」

「え?…!」


ふわりと急に足元が浮かぶ。


「ちょっと…なに!」


いつの間にか私は、まるでお荷物のように肩に担がれてしまった。


「…お嬢様は、好奇心が強い余り、森に飛び出して迷子になった」

「な なにを」

「あとは…そうだな、足を踏み外して、井戸に落ちてしまった、とか」


恐ろしいことをつらつらをと並べる。

そして、どんどん人のいないところに連れていかれる。


「はな はなして!!」

「もしくは…奥様にいたずらをして、顔に一生残るような怪我をする。っていうのもいいですねえ」

「どこに連れていくの!!はなせ!!」


じたばたと暴れても、子供の力が大きな大人にかなうわけがない。


「誰…」


叫ぼうとした瞬間、くらりと意識が遠のく。


(何、これ…急に眠気が)


「う…ただじゃ、おかない…わ よ」


そして、私は気を失ってしまった。




「ラ…ラウ様、お、お嬢様を…どうなさるおつもりですかっ…も、もし、ばれたら」

「バレる?…その前にいなくなっちまえばいいさ」

「いなくなって…って」

「…このお嬢様は、妙に勘が鋭い」


さあ、と血の引いた顔を見て、ラウは笑った。


「あんたも共犯だぜ?」

「そ、そんな!!私は何も…」

「そうだな…シナリオはこうだ。入りたてのメイドが、金欲しさに伯爵一家に毒草を入れるよう命じられた。が、それがリッハシャルに見つかり、自責の念に駆られ、死亡」

「うっ…」


どす、とナイフが胸を貫く。―――一息だった。

ぐらり、と前かがみになると、色とりどりの薬草の上に倒れ込む。


「ふうん…奥様が警戒するわけだ。子供でこれなら、将来相当な美人になるな」


手ごろな大きさの革袋を見つけ、そこにリッハシャルを放り込む。


(異国の血を引く幼い娘なんて、マニアの間では相当高値がつきそうだが…()()()に手土産として献上する方が俺にとっちゃ、うまい話になる)


にやりと笑い、胸元のタイを外し懐から煙草を取り出した。


「そして現状、名門伯爵家の唯一の令嬢…ね」


ふ、と吐いた煙は空の闇に消えていった。



**



ガタン、ゴトン。


「う…」


頭がくらくらする。


(あれ?私一体…)


「?!」


がば、と起き上がり、自分の身体を確認する。

手足は縛られておらず、自由に動けるけど…ここはどこ?


(小さい部屋に、椅子…に、窓?)


窓を見ると…そこは森の中。


「えっ…ええええ?!」


私が厨房に行ったのが夕方だから…もう夜だ。

どうやら私が乗っているのは、馬車でどこかに移動している状態…窓の外は、多分どこかの森の中。

つまり、誘拐された、ということだ。


「う、嘘…」


(あのラウって男、やっぱり怪しい奴だったんだ!!)


でも、いきなり私を拉致するなんて、どういうつもり?

前と違って、私がいなくなったら探す人は必ずいるし、ラウはロザベーリの愛人でしょう?夫人にもリスクが伴うんじゃあ?それとも…それすら気にもならない程もっと強力なアドバンテージみたいなものでもあるの?


「そう言えば…ロザベーリと、レイドックは政略結婚…レイドックは名門と言われる家柄で、それに釣り合う家となると。もしかして…ロザベーリの、実家?」


政略結婚て、理由があるからするわけで…例えば、ルドヴィガ伯爵家の方が立場が弱くて、ロザベーリの実家の方が力が強かったとしたら。


(妾の娘をいびっても、不倫してても、ルドヴィガ伯爵が文句を言えない立場だったら?)


前世での、娘に対する塩対応も、理由が付く。

伯爵は異国の踊り子を自分の家に妾として迎えるのだって、大変だったはず。それで、取引みたいなものをしたのかもしれない。


「なら…私は、どこに連れていかれるの?…それとも」


殺されてしまうの?

一度、死んだ身だけど、やっぱり、死ぬのは怖い。


(こ―言うときに、神様ガチャが何とかしてくれるんじゃないの?!)


ああ、もう。…詰んだ。

高速で移動する馬車に、か弱い5歳の子供がどう対処できるっていうのよ!!!

今までの出来事が走馬灯のように駆け巡…あれ、そう言えば。


「時間戻し券…もう一個、あるんじゃない?」


(一枚で5歳なら…生まれたてに、戻る…けど)


どうしよう…そこまで戻らなくてもいい。


「あ―――私そこまで勝負強くないんだってばああ…!!!」


他に何か…あ!


「そうだ!!…確か、時間制限付き運動能力をあげられる券があった!!!」


そう叫んだ瞬間、パッと目の前にいつもの金色のカプセルが現われる。

でも。と、はたとなる。


「運動能力あげたって…こっから出れなきゃ意味ないじゃん…」


せめて、ここから出られれば。

そう思い、馬車の中のドアノブをひねると…なんと開いた。


「!!…いけるかも」


馬車のドアから身を乗り出す。

…遠くに見えるのは、伯爵邸!!!


「よおし!…私はっ!!小さいけど、スーパーウーマンなんだからあああ!!」





―――その頃、伯爵邸では。


「騒がしいようですね」


つめを磨いていた侍女の一人が言うと、近くにいた侍女に外へいくよう促す。


「見てきます」

「お願い。…あ、奥様、今夜の香水はこちらでよろしいですか?」

「…そうね。これにして」

「珍しくていらっしゃいますね。…その、こちらの香水は」

「今日は、いつもより美しくさせてくれる?」

「は、はい。かしこまりました…」


やがて、外に出ていた侍女が戻ってきた。


「どうやら、リッハシャルお嬢様がいなくなったらしいと、使用人総出で捜索しているようです」

「…ふうん」赤く塗られた口紅が二ッと歪む。

「は、はい…もうこんな夜になるのに…その」

「……私も行くわ」


ネグリジェの上にローブを羽織らせると、ロザベーリは立ち上がる。

部屋の外では、いまだ走り回るメイドのルルの姿があった。


「あ、お、奥様…」

「何の騒ぎ?」

「その…リッハシャルお嬢様のお姿が見えなくて…!奥様はご存じありませんか?!」

「知らない」

「わ、わかりました…失礼します!」


ばたばたと走り去る後姿を見送ると、レイドックの声が聞こえた。


「シャルが…いない?!」

「はい…っその、お邸内のどこにもいらっしゃらなくて。メイドがひとり倒れて…料理人の、ラウの姿も…!」

「ラウ・カーザイナー…!」


(あの男か)


ぎり、と歯を食いしばる。


「探せ!!…どこかにいるはずだ!!

「わ、わかりました!!」


(シャル…一体どこに…)


「随分と騒がしいじゃない」

「!」

「レイドック。随分と憔悴しきっているようだけど」


出ていった執事と入れ替わりに来たロザベーリを見て、レイドックは顔をしかめた。


「……なんだその恰好は」

「…リッハシャルがいなくなったとか」

「ああ…何処にもいない。外に出るはずもないし…だが、誰もあの子を見ていないんだ!!」

「一度落ち着いては?…随分と取り乱しているようだけど、みっともない」

「……ロザベーリ、お前の仕業じゃないだろうな」

「………は?」

「お前はあの子を嫌っているだろう…っあの子に何をした!」


思いがけない言葉に、ロザベーリは絶句し、唇をかんだ。


「私は…あの子を護ると誓ったばかりなのに!」

「……レイドック、あなたはいつもそう」


そのまま懐にしまっておいた小さな瓶を取り出し、口に含んだ。そして


「…ぐっ?!」


レイドックの胸倉をつかんで口づけをし、それを飲ませた。

ソファーに押し倒し、馬乗りになる。


「な…っ?!」

「私を見ない!…リア―ネを見る…リッハシャルを見る!!あの二人のことになればこうも簡単に理性を失い、失態を犯す…!」

「何を…飲ませた!」

「知ってるでしょう?私の家門にある魔法の薬…ひとたび飲めば、あなたの内に眠る欲望を掻き立て、それに抗えなくなる…」


はだけた胸元にゆっくりと指を這い、優雅にほほ笑みながら耳元で甘い言葉を囁く。


「ねえ、あなたの身体は私を求めてる…わかってるはずよ?だってそれが本能だもの」

「…ッやめろ」

「…あなたが私を拒む権利はない」

「…ロザベーリ…っ!!」

「後継ぎが欲しいんでしょう?なら、作ってあげる。間違えないで?私があなたを選ぶの…光栄に思いなさい」


パパ、貞操の危機ッ?!と、言うタイトルにしたかったです

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