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BLUE IMPACT   作者: 御紡 飛燕
9/14

第九節 〜それぞれの思惑〜

ほぼ皆げっそりとした顔で司令室に集まり、三人の話を聞きはじめた。


「……早く寝ろ、とは言ったはずだったんだが……お〜前〜らァ〜〜〜…」

ファントムさんが私たちの頬を一人一人つねっていく。

「ひゃい……ひゅいまふぇん…」

「ひゃっへぇ〜、ふぇっふぁふのおとまりふぁいだっふぁんだひ………」

「お泊まり会、じゃないんだぞ。全く、人の好意をなんだと……はい次ッ!」

『私はカチカチなので効きませんが?』



「……………………………チッ。」

わあ、露骨な舌打ち。

「まぁまぁ、本題までが長くなると、更に眠気が増しますよ?お叱りもそのくらいにしなさい。」

「…わかってる。が、お前らのせいだからな?眠気で聞いてなくても、文句は言うなよ?」

ブライトさんに軽くたしなめられながら、ファントムさんが部屋全体に響き渡る声で話しはじめた。


「…今回、私とブライトがお前たちをここへと転移させたのはどういう目的だと思う?」

「あのヘビ野郎から、オレらを撤退/避難させるためか?」

「青龍。お前の考えは半分合っている。だが、それだけではない。」

ファントムさんがお父さん…司令に目配せをする。

「あぁ。私もブライトたちから聞いた時にとてもびっくりしたのだが、こうしない手はない…と思ってな。すぐさま賛同してここに居るワケなのだが………」


「君たちに、SH-VA(私たち)と協力体制を築いてほしいのだ。」

「「!?」」

「」

その場の全員が驚愕し、青龍さんが眉をひそめる。それを気にでもしないように、司令はまた語る。

「……昨日も言ったように、私達は大進化教攻略のエキスパートの集まりだ。そこで、政治的や法的にも強い後ろ盾や強力な戦力のエリートが揃った君達と協力体制を築けば、今度こそあの憎きいい加減な似非宗教を打ち倒してやれるかもしれない。」


沈黙。重い空気が張り詰める。

不意に、青龍さんが考えたくもなかった可能性を言葉に発する。

「…お前らがオレらを裏切ったら、または大進化教とは別の邪悪な目的を持っていたらどうする?」

「なっ…!」「お前っ……!?」「青龍さん!?」

ミズチを鞘から引き抜き、切先を父さんに向ける…!


周りがざわめく。その中で、汗ひとつ垂らさず父さんが口を開く。

「もしそうなれば、レオン国と天界の最高権力者を敵に回すという絶対的に不利な状況となる。そのハイリスクを背負ってまでして、こうして君らを引き入れたりはしない。」

「分からねぇぞ。もし教団の方に心変わりでもしたらどうする。」

「そうなって君らと相対する事になれば、この組織の全責任を背負って私が罪を償おう。」

「…。オレらをブチのめせるような力を持っていた場合。その場合、いくら歯向かっても無駄かもしれない。」

「それほどの力を持っていたとて、少年。君らに向ける筋合いはない。約束しよう。…だからこそ、だ。」


歩く。

向かっていく。

彼のもとへ。

「っ…父さん!!!」

___向けられた切先を、自ら首元に軽く当てる。

「お願いだ。どうか我々と一緒に、この世界を救ってはくれないだろうか。」

二人の視線が、火花を散らしてカチ合う。

父さんは、本気の目をしていた。その想いに自らの命を賭してでも応える覚悟が、そこには宿っていた____。


………


……




青龍さんが、ミズチを離して鞘に戻す。

「……ふっ。冗談だよ。そこまで覚悟がキマってんなら、こちらも応えねぇ手はねぇ。お前らはどうする!?」


「…協力するっきゃねぇだろ。」

ジンさんが肯定の意を示したのに続き、みんなが口々に叫びはじめた。

「……父さんの役に、立てるのならっ!」「ハヤテが行くってんなら、アタシも賛同するよ。シント…?潰し、ノってやるよ!」「俺も乗った。デケェ秘密組織に属するの、憧れてたんだよな。」『私も賛成!なんだか、燃えてきたって感じがしますね!』「特撮っぽいシチュに燃えてるお二方は置いといて、私も是非お力になれたらと。」


「……決まりだな。SH-VAと協力してでの治安維持、もとい教団の撃破……


その依頼。このTEAM BLUE DRAGONが受け負った!」


「…ところどころズレた理由もあるのだが……本当にありがとう。恩に着るよ。」

深く、父さんは頭を下げた。

「にひっ…じゃ、メンドーな手続きはキリンに任せるとして。」「おい。」

「帰りの転送も、ちょっくら頼むわ。」

青龍さんがちらりとファントムさんたちの方を向く。

「「あ。」」

「「え?」」



「「……は?」」

「「……………あはっ。」」

「あはっ。じゃないが。」「絶対帰る手段用意してないじゃないですか。どうすんですか。」

「……一方通行ですいません。」「…帰りの費用は、負担する。」「全然アタシが負担していいけど…」「「本当マジですいませんッ!!!!!!」」


結局、その日はミラの用意したプライベートジェットやヘリコプターで、それぞれ現地解散となった。

「綺麗な土下座だったな、あの二人。」「な。」「うんうん。ありゃあもう一種の芸術作品だったよ…あ。そういやキリンさんは?」「んだよ…ウル、お前聞いてなかったのか?アイツなら徒歩で帰ってったよ。」「徒歩…まあ、あの人飛行機よりは速いからな…それが妥当か……」


「……それにしても、オレたちがいた場所、あんなに高かったんだな…」「……そうだな。」


ヘリに乗り、見下ろした景色。

何処の国かも分からない大都会の少し辺境に、蓮の花を模した巨大な摩天楼が鎮座していた。

後から聞いた話なのだが、この建物の名は“ヴェリス・グレートツリー”。ひっそりと座するこの塔は、一般向けには展望台の役割を果たしているそうな。


___私は、其処に残った。

父が淡々と書類に目を通す様を、じっと眺める。

「……帰らないのか?ハヤテ。」「せっかく父さんに逢えたんだし、もう少しここに残ってようかなー…って。まだ休日だし、明日くらいまでは居たいな……ダメ?」「別に構わんしありがたいんだが…その…暇じゃあないか?」「いーの。」「そうか………」


「……大丈夫?首。」

「少し切れた。」「そっか…いやいやいいいい見せないで見せないでよそんな」

「ははっ。冗談だよ。…………」


「……父さん。」

「………なんだ?」

「私、昨日ゼロちゃんたちと色々と話して…さっき、気づいたんです。青龍さんやウルさん達だけでなく、せっかくお世話になって仲間になった父さんやブライトさん、ファントムさんの事も全然知らないなって。」

「…そうか。」

「どうしてこんな組織を造るまで、大進化教に執着しているのか。どうして小さい私を置いて行ってまで打ち倒そうと考えているのか。」

「……」

父さんが、ほんの少し顔を背ける。

「私、父さんの真意(こころ)が知りたい。何を思って今こうやっているのか、何を考えて今この組織にいるのか。その思惑を、その奥に居る真の父さんを“捜したい”の。

…あ、別に辛いんだったら無理に言わなくて良いんだよ?こんなもの、ただの好奇心だから。」

「……そうか。」

「…私は、私の意思でここに残った。父さんの力になれるのなら、最後まで乗りかかった船に付き合うよ。」

「…ありがとう。」

父さんの口元が、優しくゆるむ。

わしゃっ。と、大きな手が私の頭を撫でる。

「…付き合わせて悪いな…なんて言葉は必要なさそうだな。それじゃあ、お父さんも頼っちゃおうかな。

……言っておくが、口は硬いからな。聞き出すなんて98年早いわ!なんてな。」

「…!くふっ、なんですかその微妙な数字!……はいっ!なんでもお任せください!」「ふっ。じゃあまず、この書類に名前を…………………………………」



〜〜〜場所:不明 大進化教本部 会食室〜〜〜



長い長いテーブルで、黒い服装に身を包んだ三人の人影が食事をしている。

シャンデリアの淡い光がほんのりと彼らを照らし、その表情は影に包まれている。


「で、どうだね?」

真ん中の席に座る、高身長でローブを着けた仮面の男がステーキを食べながら問いかける。

「キミが…えぇと、何度だっけ?」「二度です、()()()様。」

ドグマ。そう呼ばれている男に語りかけるのは黒いタキシードを纏った薄紫の髪の青年だ。

「結構少ないねぇ。でも……はえぇ、キミが一度で仕留め切れなかったとは。TEAM BLUE DRAGON…否、そのリーダー格の…青龍。彼、なかなかの障害じゃあないか。」

「それだけじゃねぇ。…SH-VAも……テラも。厄介な奴らが、アイツらを皮切りに次々と動きだしやがった。」

テラ。その名を聞いた瞬間、ほんの少しだけドグマの動きが止まった気がした。

「…へぇ……?」

「どーしますかぁ?このままですと、大進化教が全滅するのも時間の問題ですが……あむっ。」

スイーツを頬張りながら、つばの広いハットを被ったゴシックの少女が質問する。

「…否。問題はないよ。二人とも、食事を食べ終わったらついてきなさい。」「…?おう……」「は〜い。」


数分後。長い長い、蛇のような廊下の先にある門をくぐる。

「…御神体?ここで何を………」「さあ〜…?」

御神体。そう呼ばれた“ソレ”は、この世の混沌が全て混ざったような風貌の真っ白な卵…或いは、心臓のようなナニカであった。


「……来い。」

そうドグマが呟くと、虚ろな目の白い服を着た男性…恐らく、信者の一人であろう者が彼の傍に寄る。

「………今から貴様には、“役目”を渡す。」

「はっ。ありがたき幸せ。」

男が跪くと、ドグマは右手を男の額にかざす。

その瞬間、男の身体は“御神体”から放たれた触手に包まれ、瞬く間に繭のように()()した。

「っ!?」「ドグマ様、何を!?」

「…なぁに。あっちが“ヒーロー”気取りであればこちらは“怪人”を創るだけ。キミらはサポートしているだけで良いのさ。」



「“悪の組織”らしく、派手にいこうじゃあないか。」


                                                つづく

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