第八節 〜ブレイクタイム〜
〜宿泊部屋/女子陣〜
ベッドの上で、スマホを操作する。
「……よしっ。連絡終了っと。ごめんね?今日はいろんな事に付き合わせちゃって。」
「思考の整理も出来たし、こんな場所にも泊まれたから別にいいけどよ…何て言ってた?ハヤテのお母様。」
「『流石に住所を忘れたまで行ったら擁護できないので、今度無理矢理にでも帰らせて来てください。私が直々にブチのめす。』だって。今度一緒に見に行ってみる?」
「いや、いい…全ッ然いい…」
『ご愁傷様です………』
「だよねぇ…流石に、ね。あ、そういやミラの方は?国王様に連絡取れたの?」
「あ、うん。やっぱデカい組織だし繋がりは何度かあったみたいで、快く滞在を許可してくれたわ。」
「よかった…国際問題とかにならなくて……」「そもそもソレがあったら今日本に住めてねぇよ。」
「それもそっか…………あ、そうだ!ねぇねぇゼロさん。」
『ん?何でしょうか?』
ポテチをバリボリかじりながら答え…いやどこに口があるんですか。まさか目ですか?そこの目から吸収してます????特撮番組の一つ目怪獣じゃないですよね??????ですよね????????
……そんな疑問を抱きつつ、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「あの…初対面のとき。あの時から私、全然ゼロさんの事を知れてないんですけど……」
『他のメンツだってそうじゃん。いくら私たちのファンの君だって、けっこう有名なキリンさん以外、ウルの素性も知らない。…青龍さんとジンさんだって、家系が名家……それくらいしか分からない。そうでしょ?べっつに、こ〜んな不可解な存在である私を知る必要なんて…』
「…知らなければ、それはそれでいいかもしれません。ですけど、私がここに入った以上、私は皆さんの仲間であって、メンバーの一員であって、“ともだち”なんです。」
『…』
「私が、知りたいんです。知っていきたいんです。ゼロさんたちが何者なのか、どんな存在なのか。どんな思いをしているのか。少なくとも私は、これからの仲間として。そう思っただけなんです。…教えてくれませんか?ゼロさんの事。」
「…アタシもアタシも。アタシも…メンバーだからさ。まずは知っていって、そこから歩み寄っていかねーと……じゃん?って思ってさ。教えてくれよ。今日じゃなくても、いつでも待つからさ。」
ふたりが、ゼロの無機質な手を取る。
『………っはぁ〜〜〜〜〜〜…お人よしですね、まったく。話しますよ。話しますけど…まず、ミラさんみたいな普通の人間には言っても不可解ですよ?』
「い〜んだよ、わっかんなくても。」「そうですそうです!なんとか雰囲気で理解しますから!」
『〜〜〜っ……ったくこの人たちは………まず簡潔に説明しますと、私は、ヨ……』
急に、ドアがばんっと開かれた。
「そろそろ消灯時間だ。うちのテラみたいな不健康児になりたくなければもう寝ろ。」
ファントムさんが、………くまさんのパジャマ姿で忠告しに来た。思ったより可愛い…のかな?
「要件はそれだけだ。…お前たちはイレギュラーな客人だからな。巻き込んでしまった謝罪の念も込めて、健康でいてもらいたいんだ。」
そう言うと、彼女はまた扉をばんっと閉めた。
「………続きは、布団の中でしますか?」『………ふふっ、中々にやんちゃじゃないですか…賛成っ!』
「内緒の夜更かしだぁー!!!」
「『バレるバレるバレるっ!!!!!!!』」
…
……同時刻。
〜宿泊部屋/男子陣〜
キリンは、ひとり窓の外を眺めながらコーヒーを飲んでいた。
「………ほっ…天界みたいに高い場所。何度かお世話になってましたが、こうして見ると…やはり、とっても眺めが綺麗ですね。ウルさん。」
部屋の奥の暗闇から、ウルが顔を出す。
「…ったく……バレてたか。」「ええ。ずっともぞもぞしてたので、寝れなかったのだろうな…とは。」
「………………」
向かいの椅子に座り、二人は談話をし始めた。
「…キリンさん。」「はい。」
「……アンタ、“星盾”を観測したんだってな。あの時の土産街で。」「…えぇ。あまりにも驚きました。」
「アレは“我ら”の力、この地の存在が発現できたものじゃない。……だが、俺とゼロはアイギス、それに類するものは発動していない。つまりは、“我ら”に該当する者がもう一人居たという事になる。」
「神徒…あの怪物からも、その残滓は見て取れました。ですが、私たちを…ひいてはハヤテさんを執拗に殺そうとしてくる集団が、ハヤテさんを果たして護るものでしょうか?……となれば、ソレは一体誰が発現させたのでしょうかね?」
答えを求めるように、キリンさんが投げかける。
「…それが該当するのは、他ならぬハヤテさん自身だけだ。」
「御名等です、ウルさん。
……それにその同日、天界で見たチェインさんお手製のペンダント。…あれは、“語られずのもう一つ”…それが信仰する紋様と一致点が多数見られました。この二つの特徴からして、ハヤテさん、チェインさんの血族がソレなのはもはや明確になったと言っていいでしょう。」
「なるほどな。神徒がブッ殺そうとしてるのも納得なワケだわ。
……それにしても…お前、チェインさんとこの組織の存在を知っていて、なぜハヤテさんに教えなかったんだ?」
「……さてね。私も、“危険な事に付き合わせたくなかった”…んでしょうね。」
「ははっ。色んな事を知っている…って立場も大変だな。さて、コーヒー飲んじゃったんだろ?寝れるまで、夜景でも眺めておくか?…ってね。」
ウルが、事前に買っておいたであろう缶のサイダーを取り出す。
「ええ、喜んで。」
乾杯、束の間の静寂。キリンは、一つ気になった質問を投げかけた。
「…青龍さんに、この手の話はしなくて良いのですか?」
「ああ。これは“我ら”の問題だ。この地の者がその話題に付け入るには、ほんの少し長い時間がかかるだろう。…それに、アイツはハヤテの力を知ったらロクな事しそうにない。それこそ、青龍から青龍になるくらいには…な。あ、ジンも同類だぞ?」
そう言って、ウルが苦笑する。
つられて、キリンも少し笑みが溢れる。
「くふっ……まぁ、だからさ。今はそっちと俺とゼロだけで共有しとくよ。」「えぇ。分かりましたとも。」
「………とりあえず、日が昇るまで待ちましょう。今は。」「あぁ。輝く“星”が、昇るまで。」
…そして、夜明けは訪れた_____。
青 龍 と ジ ン 除 く 全 員 寝 不 足 ⭐︎
「「「何やってんだお前らァーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」」」
つづく