第一節 〜青〜
一隻の船が、海を渡っている。
乗っているのは、多くの客。
その中で一際目立つ、明るい緑の髪が特徴的な、高校生ほどの少女が居る。
『そろそろ着くので、皆様方荷物をお忘れなく〜。』
運転しているのは、石膏のような質感の白い肌と翼、そして金色の顔を持った到底ヒトとは思えないような…例えるならば天使と呼べる風貌の生命体だ。よくよく見れば、乗客の中にもヒトならざる者がまだらにいる事が判る…
ここは現代日本。ヒト、そして天使や悪魔などを筆頭とした様々な種族、様々な“人”が暮らしており、魔法や科学の発達が著しい場所…混沌の国。
ほんの少しだけ時は流れ…
先ほどの少女が一人、駅前にて道に迷っていた。
「え〜と…駅前にはなんとか行けたけど、こっからどうーー
瞬間、背後で爆発。
「!?」
少女は、驚いて振り返る。
爆心地には、大きさが人の三倍程度はあるであろう真っ白な…とは言えど、先ほどの天使とは似ても似つかないが。とにかく真っ白で、禍々しい化け物が其処に立っていた。
「なに、あれ……」
少女が困惑してる最中、一般人は逃げ惑い、警察は魔力を用いた特殊な機器で応戦する…が、なす術もなく怪物の剛腕に吹き飛ばされていく。
…
……
そんな中であった。「彼ら」が降臨したのは。
今までごく普通の単調な生活をしてきたその少女…いえ、『私』、緑川 翠には、彼らの衝撃はとても眩しくて、とても強くて…そして、とても…とっても鮮やかに思えた。そう、例えるなれば彼らの存在、彼らの放つ色彩はーーー
『青の衝撃…』
知らず知らずのうちに私が呟いたそのほんの数メートル上を、赤、青、紫の三つの閃光が駆けていった。
私でもこの男たちの事は知っている。
「ははっ!!折角の連休なのにこんなんと戦うなんてなぁ!」
そう笑いながら言った一人は長い水色の髪をたなびかせ、腰に刀を差した和装の男。この国で知らない者は生を受けたばかりの赤子だけだろうという程の超絶人気配信者であり、名の有る神が襲名制であるこの時代において第十二代青龍を務めている者、『青田 青龍』(青龍)だ。
青龍が飛翔しながら様々な方向で愛刀『ミズチ』から繰り出す斬撃を怪物がガードする中、怪物の足元に超スピードで糸のようなエネルギーを絡ませている男が一人。
「ったく…さっさと終わらせて、観光もちゃちゃっと済ませるぞ。」
そう言ったオレンジ色のパーカーを羽織っており足にブースターのようなものが付いた靴を履いている男は、青龍たちの配信グループであり警察公認の害悪神的存在鎮圧組織『TEAM BLUE DRAGON 』の一員であり初期メン、『番人 宇留』(ウル)。
ウルの絡めた糸に引っかかり、怪物が一瞬よろけた隙に後ろに影が!
「後ろがガラ空きだよ馬ァァァァ鹿ッ!!!!」
最後に飛来し、怪物の脊髄に斬撃を一発喰らわせていった黒と紫の髪と服が特徴の少年は、『桜田 迅』(ジン)。青龍の幼馴染で、彼の良きライバルである少年だ。
ジンが斬撃を放った刹那、青龍が脳天から渾身の兜割りを叩き込む!
「これで、おしまいだっ!!!!!」
「グガぁぁぁぁぁぁぁぁっッ!!!!!………」
怪物は倒れ、沈黙から数秒して爆散。彼らの勝利だ。
燃え盛る炎をバックに「結構楽勝だったな…も〜っと強けりゃな〜…」「何言ってんだお前…ま、大きな被害が出なくて良かったけど…」などと、TEAM BLUE DRAGON の面々が会話している中……
「あのっ!」
「はは…ん?」
私は覚悟を決め、彼らに声を掛けた。
「さっきの戦い、見てました!あの…その…… っ!私を、あなた達の仲間に、入れてくれませんか!?」
沈黙。
「「「ッはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっ?!?!?!?!?」」」
つづく