表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第2話*叶わない恋

 アーティは喜びのあまり、スペニーに抱きつく。


「アーティ! バカっ! 抱きつくなよ、ビックリするだろう?」


 スペニーの顔は火が出そうなくらい、耳まで真っ赤だ。


「ごめんなさい。だって嬉しくって」


(スペニーったら、照れてる? 顔、真っ赤だし。スペニーも私の事好きなら良いな)


 アーティは、スペニーが凄く魅力的に見えていた。



 *



 スペニーが連れて行った人間の世界。人間を乗せて早く動く箱や、キラキラと光っている色とりどりの灯り。どれもアーティには珍しく、新鮮だった。


 それに何より、アーティはスペニーと過ごす時間が嬉しかった。


 数時間人間の世界を満喫した後、スペニーは海岸へと戻ろうとする。


「アーティ、そろそろ帰ろうか?」


 その言葉にアーティは凄く残念そうな顔をする。


「え? もう? もう少し……ダメ?」


 そんなアーティに心が痛むスペニーだったが、もう、帰らなくてはならない。


「ごめんね。楽しいのは分かるんだけど、もう夜が明けてしまうし、俺も、もう帰らなきゃ」


(そう、俺は王子。自分の都合で、これ以上ここに居るわけにはいかない。ペン民も待ってる)


「そっか。そうだよね。うん、私こそごめんなさい。スペニー、今日はありがとう」


「良いよ。楽しめて良かった」


 暫く黙った後、アーティは真っ直ぐスペニーを見つめる。


「ねぇ、スペニー? また、会えるかしら?」


「え? アーティ、俺とまた会いたいの?」


「うん……私、あなたが好きになっちゃった」


 アーティが告白すると、スペニーは驚きのあまりしばらく動けなくなっていた。が、しばらく経つと、落ち着きを取り戻し、少し寂しそうな顔をする。


「アーティごめん。気持ちは嬉しいけれど、君の気持ちには答えられない。俺はペンギンだし、なにより王子だ。俺の国を放って、外の世界で恋人をつくるわけにはいかないんだ」


「そんな事言って、本当は私のこと面倒って思ってるんでしょ? 魔法も使えないし、お荷物だよね」


 アーティが少し拗ねたようにそう言うと、スペニーは声を張り上げた。


「そんなこと無いよ! 本当はこんなこと言っちゃいけないんだけど、俺もアーティのこと好きになっちゃったんだ。けど、俺はペンギン界の王子だし、一緒には居られないんだよ」


「スペニー、それ本当? 私のこと好きって?」


「ああ。でも、さっきも言ったけど、俺はペンギン、アーティは人魚。一緒にはいられないよ」


 二人の間に沈黙が流れる。

 先に口を開いたのはアーティだった。


「スペニー? もし、私が……私がペンギンになれたら、一緒に居てくれる?」


「アーティ……? え? アーティがペンギン……に? いや、ダメだ。それだけはダメだ!」


 スペニーはそういう魔法があるのは知っていた。けれど、それはとても危険な、危険な魔法だった。


「けれど、そうしないとスペニーと一緒に居られないから」


「ダメだよ! 確かに他の動物や人間、魔物にだってになれる魔法はある。一時的なものなら、さっき俺が使った人間になる魔法もそうだし。だけど、ずっとその姿になるっていう魔法はとても難しいし、失敗すると最悪の場合消滅してしまう。そんな危険な事させられない! それに、アーティは魔法が使えないじゃないか? 誰かに頼むとしても、それなりの代償が必要だよ」


 スペニーは必死で止めるが、アーティは聞かない。


「スペニー、私、あなたと居られるならどんな事も耐えられる。だから……!」


 そう言うと、海に飛び込んでしまった


「アーティ! やめろっ!」


 スペニーの言葉虚しくアーティはこの日戻って来ず、その後、アーティはが(はorが)この海岸に姿を見せることは一度も無かった。


 魔法が失敗したか? 仲間に引き止められて、海からまた出られなくなったか? それは誰にも分からない。


 スペニーはアーティの事を思い、何処かで幸せに暮らしてるようにと願って、一国の王子にも関わらず生涯独身を貫いた――――







最後までご覧いただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ