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おつまみ1

夕食後、湯浴みをさせて貰ったが、こんな私にアンナも含め、他のメイド達が湯浴みを手伝ってくれた。

お母様が亡くなって以来だ、こんなに丁寧に洗ってもらって、髪の毛も乾かして貰ったりと、天国みたい。

お母様が亡くなってから全てが変わった。ううん。お父様とお姉様の本性がやっと出たのかもしれない。それまではお母様と言う盾があったお陰で、私は気づかなかった。


ああ・・・いけない・・・。なんだが私、ここに来て、嫌な事を考えてしまう。


そうよ、違うわ。お父様も、お姉様も、私を嫌っているを訳では無い。私が、きちんと出来ないからよ。ご・・・


前向きに。また、その言葉が浮かんだ。


こういう時は、ごめんなさい、と言うべき?


ソファでぼんやりと考えた。

湯浴み後、水分補給ですよ、とアンナがオレンジの果汁を準備してくれた。

1口飲むと冷たくて、甘酸っぱさが口に広がり、美味しかった。

やっと落ち着いて部屋を見る事が出来た。

サヴォワ家では、お母様が亡くなってからも同じ部屋を使っていた。新調するものはないけれど、それでも貴族令嬢として、誰かを部屋に招き入れても申し分なかった。

それが体裁と分かってはいたが、それでも過ごしてきた部屋を追い出されるの辛いものがある。


過ごしていた自分の部屋と同じくらいの広さだが、置かれている調度品は安くはなさそうだ。

正直私に目利きとやらはないから、このソファにしても、机にしても、本棚にしても、高そうに見えた。


寝よう、かな。


時計を見るとまだ10時で、昼寝をしたせいかあまり眠たくはなかったが、やる事もない。

ふと廊下をワゴンが動く音が聞こえた。


キャウリー様の夜食か何かかな?


お父様もお酒が好きでよく飲んでいた。

そっと廊下を見ると、アンナがワゴンを押してキャウリー様の部屋の方へ向かっていた。

「アンナ」

「ひえっ!!!な、なんだ・・・シャーリー様でか・・・。もうびっくりさせてないで下さいよ。こんな時間に声かける人いないんですから驚きました」

「ご、ごめんなさい・・・」


今の、ごめんなさいはあってるよね、うん。


ワゴンにクローシュとアイスペールが乗っていたので確信はしたけど、中身を見たかった。

「その中身は?」

「中身ですか?これです」

アンナが不思議そうにクローシュを開けると、野菜のスティックとカットチーズが出てきた。


やっぱり。


料理長は夕食作りが終わると帰っていく。余程夜会やパーティがない限り、屋敷に残らない。基本調理場を料理長の許しながなければ使用は出来ないが、勿論屋敷の家族であれば問題ない。けれど、貴族の娘が料理をすると言えばお菓子くらいだ。


だから、夜のお酒のつまみとなると、簡単な物を料理長が準備して、おしまい。


うずうずする。


「あ、あの!」

「はい!?」

「私、少し作ってきますので、キャウリー様にそうお伝えください!!」

もう、じっとしていられなくて、アンナの驚いた顔を横目で見ながら、もう一度部屋に戻り、メイド服に着替え調理場に向かった。

怒られるかもしれないけど、それは、それで、明日考えよう。

調理場に行くと、誰もいなくて真っ暗だったので、灯りを付け中へ入った。

「シャーリー様?どうしたんですか?お腹すきました?」

近くを通っていた男性が声を掛けてきた。

「キャウリー様のおつまみを作ろうと思ってきました」

「え!?シャーリー様が!?」

「はい」

なにか言いたそうなのを、悪いと思いながらスルーし動いていく。


さて、つまみというのはすぐ作らないとね。


冷蔵倉を開けるとの豚バラのスライスがあった。閉めて、今度は野菜室を見て、考えた。


うん。決まりだな。


豚バラを取りだし、塩コショウを振る。馴染むように少し置いている間に、サラダ用に切ってあったキャベツと人参の千切りと、ニラと白ネギを出した。

夕食の時に、どんな食材があるかは覚えていた。

馴染んだ豚バラに軽く小麦粉を振り千切りキャベツと人参を置き、巻いた。

フライパンにお湯をいれ、その上にまた、油をひいた深めの皿を置いて蓋をしたら、


簡易蒸し器の出来上がり。


そこに巻いた豚肉を置き、蓋をして弱火。

この間に、ニラと白ネギをみじん切りにし、塩ベースの簡単ネギソース。

そして、大根おろしを作りそこに酢醤油をかけ、みじん切りにした唐辛子をふりかけ、もう1つのソース。

フライパンの蓋を開けると、程よく火が通ってい

「よし、出来上がり♪」

「すげ・・・」


お皿に豚肉を盛り、ココットにソースを入れた。

早くキャウリー様に、とお皿を持ち上げると、袖を引っ張られた。

「ちょっと!!それ、俺にも作って!!」

「は、はい!?」

その男のひとがとても物欲しそうに言ってきたから、分かりました、と答えると、やった!!と喜んでくれた。


「これ・・・、君が作ったのか?」

「は、はい。勝手にですが・・・、そのお・・・いつもお父様に作っているので・・・。夜にチーズや燻製ばかりだと胃に重くなります。結構野菜が入っているし、蒸しているので油を出でるので、サッパリ食べれると思います」

「へえ!」

キャウリー様は私の説明を私の目を見て、きちんと聞いてくた。そして、すぐに、スプーンで2種類のタレをひとつずつかけ、頬張ってくれた。

「うん!上手い!このソースもいいな。2種類あると飽きん。ワインにも合う。確かに、ボリュームはあるが、野菜が多い分、食べやすいな」

美味しそうに食べながらどんどんワインが進んでいた。

「あの、でも、ワインは程々にしてくださいね」

美味しく食べてくれるのはいいが、ぐびぐびとワインを飲んでいく。

「ん?ああ、そうだな・・・」

ほぼ1本なくなりそうな勢いだった。

そんな寂しそうな顔されると、作った甲斐が有ります。

「あの、では、私呼ばれているので下がります。明日も何か用意してもいいですか?」

「勿論だ!いつも同じつまみに飽きていんだ」

「それなら明日もご準備します。それと、ガイナ料理長に調理場を使用する事を許して貰えるよう言って貰えますか?」

「構わん。何なら、今一筆書いてあげよう。調理場に置いて置けば明日見てくれるのではないか?」

「す、」


あ、違うな。ここは、


ごくん、とすみませんを飲み込んだ。

「ありがとうございます!」

言い直した私にに、キャウリー様は少し驚いたが、かるく微笑みすぐに一筆書いてくれた。

「ありがとうございます。では、私これで失礼致します」

ぺこりと頭を下げ、急いで調理場に戻った。





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