これから
式が終わり、パーティーが始まった。
私の隣にはカルヴァン様がいる。
オーリュゥン様はパーティーの余興の1つとして、剣で御義父様と手合わせをする事になっている。その準備でホールには居ない。
ワクワクだ。
御義父様の剣さばきを見れるなんて。
あ・・・。
「カルヴァン様」
「どうした?」
「少し、話をしてきます」
私の見つめる方向を見て、小さく頷いた。
「後ろで控えていよう」
「ありがとうございます」
ワイングラスを持ち、側に行くと、もうひとつの同じ顔が、あからさまに嫌な顔をした。
「久しぶりね、シャーサー」
「・・・久しぶりね。シャーリー様」
様、か。
やっと?やっと理解したの?でも、もう遅いわ。
「はい、どうぞ。ワイン飲むでしょ?ケイト様もどうぞ」
2人に渡すと受け取ってくれた。
「・・・ええ」
「・・・ありがとう」
やけ酒かのように、2人はぐいとワインを飲み干した。
「あなたの勝ちね、シャーリー」
忌々しく、吐き捨てた。
「勝ち?始めからそんな競走だったの?でもね、私は自分が思っている以上にあなたに怒っている」
「はあ?これ以上何があるの?何もかも手に入れたでしょう?」
「結果的にそうなっただけ。私は何もしていない。でも、あなたは色々してきた。だから、1つだけあなたがした事を、同じ事を返して上げるわ」
「は?何言ってんの?」
不安そうに瞳が揺れた。
「さようなら、シャーサー。もう二度と私に関わらないで」
「当たり前でしょ!!私だって関わりたくないわ!!」
そうね。関わることの無いところに私は行ってしまったしね。
関わらないわ。でも、私はあなたを許さないわ。
すっと会釈し、その場を離れた。
「シャーリー、終わったのか?」
「・・・いいえ、これからです。・・・でも、何もなく終わればいと思って・・・います」
「複雑だな」
手を差し伸べるカルヴァン様に、そうですね、と呟き手を取った。
「もうすぐ始まるだろう。行こう」
キラリーン!!
「そうです!御義父様の素敵なところを見逃したくありません!!」
よく見えるところで見ないと。
「・・・シャーリー・・・君の御義父様に勝てるのか・・・俺は不安だよ」
「勝てませんよ、誰も」
何を言ってるの?御義父様が1番よ。
あれ?どうしてそんなに凹んでいるのですか、カルヴァン様?ご自分で言われたから、答えたのに。
だって、誰も勝てませんよ。
少しして手合わせが始まった。
勿論御義父様は素敵だったが、オーリュゥン様も素敵だった。
もともと御義父様よりも体が大きいが、それでもしなやかで、勇ましかった。
ふと、隣にいるカルヴァン様を見た。
オーリュゥン様とは、正反対と言ってもいい。
優しく気品があり、貴族の生活する中では、理想の人だ。
「どうした?」
首を振る。
「いいえ、不思議だなあ、と。皆様の言う必然が、私をここに立たせている。何だが夢の中にいるようで・・・」
そっと、手を握ってきた。
「酷いことを言うな。じゃあ俺は夢の中の女性を想っているのか?」
「・・・ごめんなさい・・・」
すっと手を離した。
「・・・カルヴァン様・・・。私は・・・どちらか決めかねてる・・・。もう少し時間をください・・・」
また手を握ってきた。今度はとても強く。
「では、俺は諦めない」
ありがとうございます。
この方達に出会えたから、私は、私のままでいれる。そうでなければ・・・私はきっと・・・もっとおかしくなっていただろう・・・。