ルーンの誕生日2
先に歩き、御義父様の近くに行く。
「何の話?」
どうせ謝罪の言葉でしょう?
「僕と婚約しよう」
「・・・は・・・?」
思ってもいなかった言葉に、うろたえた。
「ずっと好きだっんだ。色々誤解もあって、こんな事になってしまったが、ぼくはシャーリーと一緒にいたいんだ」
まって、この状況を分かっていて言っているの?
どの面下げて言うの?
誤解?誰が?どこを?
何故そんなに当たり前のように笑えるの?
ざわざわと血が、喚き出し、震えてきた。
「・・・私は何一つ誤解はしていないわ。元々私はサヴォワ家から捨てられた。それなのにあなた達が勝手に誤解して、話を大きくしたんでしょ!」
私はいつだって一生懸命に生きていた。
「違うよ!心配で心配で極端な考えになってしまっただけなんだ。シャーリーを好きなのは、今でも変わらない。僕は君を幸せに出来るよ」
「・・・私を好き?」
幸せにできる?あなたが?
「そうだよ。僕には君しかいないんだ」
「・・・そう・・・。それなら何故シャーサーと関係を持ったの?」
「・・・え・・・!?」
そんな気がしてカマかけて見たら、当たり、か。
「あなた達が私に会いに来た時、触れ方が違ったわ。気づかないとでも思った?少し前まで、私達は一緒にいたのよ。それが、私が居なくなってから急にまるで恋人かのようになっていたわ」
目と目の合わせ方と、直ぐに手を繋いでいた。誰が見ても、関係があったとわかるわ。
「・・・あれは・・・あの時はシャーリーがいなくて寂しかったのをシャーサーが慰めてくれたんだ。別に僕がシャーサーを好きという訳では無い」
なんて自分勝手な言い訳。
私のいない期間なんてほんの数ヶ月。もしかしたら、もっと前からそんな関係だったのかもしれない。
笑いが出るわ。
「何を言ってるの?婚約してたんでしょ?私の事で解消されただけで、何も無ければ婚約したままだわ。・・・もう、やめましょう・・・」
無理だ。
話が噛み合わないし、この苛立ちをとめられない。
あなたと私は、同じ会話が出来ない。
「でも、僕は君が好きなんだ!」
違うわ。
「いいえ、あなたが好きなのは、シャーリー・サヴォワ。私は他人よ。私は、シャーリー・ウインザーだもの!」
何度も首を振るルーンに、怒りが込み上げてくる。
「違う!シャーリーには変わりない!!」
懇願するかのように、1歩近ずいてくる。
「もう、関わり合いたくないの。ヨークシャー家とも、サヴォワ家とも。だから、二度と私にも、御義父様にも、顔を見せたないで!」
こんな、こんな気持ちになるなんて思いもしなかった。もっと穏便に事を終わらせ、縁を切りたかったのに。
ルーンの顔が引きつった。
「シャーリー、関わるな、と言う意味を知ってて言ってるのか!?」
そこは気づいたのね。と言うよりも、おじ様にやはり言われていたのね。
「・・・馬鹿な人・・・何故、その言葉をわざわざ言うの?」
ルーンがしまった、と言う顔をしたが、もう遅い。
「おじ様から言われたのね。私と婚約してこい、と。そうでなければ、ヨークシャー家は終わるわ。関わるな、その言葉を一介の貴族が言うのであれば何の問題もないでしょう。でも、ウインザー家が言えば、その方の側にいる方々からも、接することを許されなくなる」
もうすぐ御義父様も、公爵となる。より、強大になっていくのは目に見えている。
「全ての方を敵に回し、生き残れるヨークシャー家では無い。だから、おじ様は唯一私に接触出来るあなたに全てを託したんでしょ!!」
おじ様から何度も御義父様に謝罪と、会いたいと、手紙が来たが、御義父様は全て無視していた。
それは私が嫌だ、と言っていたから。
「あなたは愚かすぎるわ!何故1度も謝罪がないの!!自分の事ばかりで、元々の過ちの許しを乞う事をしない!!あなたが喧嘩を売り、そのまま売ったままなのよ!だったら、こちらは買うだけよ!!・・・あなたが・・・ルーン・・・あなたが・・・ただ謝罪を・・・、謝罪を土下座してでも乞うなら、私は・・・私は・・・!」
許したのに・・・。だって・・・あなたは何時でも側にいてくれ。あなたは好きだと言う気持ちが存在したかもしれないけれど、私は、大切な幼なじみ。
形は違かもしれないけれど、崩したくなかった。
ああ、とおば様の声がした。
気になって側に来ていたんだろう。倒れる所をおじ様が助けていた。
「・・・違う!!僕は謝る気持ちはあるんだ!!でも、僕はシャーリーに側にいて欲しいんだ!!」
必死の形相で、恐ろしい目を私に向け走ってきた。
駄目よ・・・もうあなたの追いつけない場所に私の気持ちはある。
目を伏せたその一瞬だった。
「・・・!!」
ルーンがいつの間に私の前に立ち、手が私の首に触った瞬間、後ろに投げ出された。
「大丈夫か!」
「・・・オーリュゥン・・・様・・・」
恐怖で体がふわふわしたのを、誰かが助けた。
「シャーリー大丈夫か?」
心配そうな御義父様の声が聞こえた。
「・・・はい・・・」
ゾッとした。
ルーンが殺そうと・・・した・・・?
ルーンの周りには人が集まり、何事かと興味津々だった。
「お前達、何処かの部屋で休ませてもらいなさい。誰にも会うな。落ち着いたら、帰るぞ」
「はい父上」
イエーガー侯爵様の言葉に、オーリュゥン様が私に手を差し出し、御義父様が、あとはこちらで片付ける、そう小さく言われた。
「・・・はい・・・御義父様・・・」
「行こう」
オーリュゥン様の言葉に頷き、一緒にホールを出た。