他人
朝目覚め、自分がウインザー家にいるととても安心した。
食堂に行くと、御義父様だけだった。
「おはようございます、御義父様」
「おはよう、シャーリー」
「ノーセットはどうしたのですか?」
「今日は朝の当番とかで朝早く出かけたよ」
「ギリギリまで寝てましたから、大慌てでしたけどね」
ため息混じりにハザードが言う。
「座りなさい」
「はい」
座るとハザードがすぐに朝食を、準備し始めた。
「カルヴァンは必要なものがあるからと、昨夜自分の屋敷に取りに行き、明け方戻ってきた。今は寝ている。起きたら、挨拶しなさい」
夢では・・・なかったんだ・・・。
「カルヴァンはお前を心配している。それは、私もだ。いいか、シャーリー、私はお前がどのように冷遇されていたのかを知っていて、養女にした。つまり、情けがあったからだ。だから、諦めなさい」
「・・・え・・・?」
「私と出会い、娘になったことを」
「・・・御義父様・・・?」
「仕方ないだろう?これが必然だったのだ。お前は、私の娘になる為に産まれてきたんだ」
優しい言葉。優しい気持ち。
「・・・でも・・・私のような・・・何も出来ない娘は・・・後悔します・・・」
シャーサーは、誰が見ても、いい娘だ。
「さて、それは誰と比べてかな?我が家にはお前以外にはノーセットしかいない。ノーセットと比べたら、シャーリーはとてもよく出来ている」
「・・・御義父様・・・?」
「私はお前達を比べるとことをしたことは無い。そんなに、赤の他人と比べたいのか?」
仕方なかそうに微笑みながら、核心でありながら、私の気づかなかった、赤の他人、という言葉を当たり前に口にした。
とても、体が軽くなった。
・・・御義父様・・・。
「親バカかもしれないが、私にはお前達が勿体ないくらいの素晴らしい子供だ。他人と比べても、まだ余るほどの。全く、朝から泣くなど、時間が勿体ないぞ。いつもお前が言うだろう?美味しいものは暖かいうちに食べるのが当たり前。冷めては不味くなる、と」
「・・・ええ・・・ええ・・・御義父様。その通りでございます。料理は暖かいうちに、それも、出来たてが1番です」
涙を拭き、御義父様に微笑んだ。
「では、頂こう」
「はい、御義父様」
少し冷めたパンやスープだったけれど、とても美味しかった。
その後、カルヴァン様が目覚めた様で、ご挨拶に行った。
「おはようございます、カルヴァン様。昨日は・・・見苦しい所を見せてしまい、申し訳ありません。ですが、もう、大丈夫です」
御義父様の言葉が私の気持ちを、とてもスッキリさせた。
私が部屋に入ると、ソファに促され、前に座った。
「・・・シャーリー・・・?いや、分かっている。俺が、シャーサーを見て、あまりに似ていたから名を呼んでしまったことは、つい、という言葉では許されない事を」
ん??いや、そんな事は私は別に気にしていない。
だって、確かにシャーサーはとても私には似せていた。髪だけでなく、服装も私好みだった。
私でさせ、理想の私がいる、と思った程だもの。
だからそんなに必死に言い訳しなくても大丈夫です。
「カルヴァン様・・・私は別に気にしていません。・・・それよりも」
「いや!それでは俺の気がすまん。何か贈り物でも」
「・・・いえ・・・だから・・・」
そんなものいらないって。立ち上がらなくてもいいです。
「そうだ。あまり宝石とかつけていないな」
隣に座ってくる。
「だから、いりません」
「宝石商を呼ぼう。シャーリーに似合う首飾りを」
「いりません!!人の話を聞きなさいよ!!前から思っていたけど、勝手に喋るのやめてくれる!?私は気にしてないし、宝石もいらないし、ともかく何もいらない!!そんなにあげたのだったら、自分で買えば!!」
「・・・わかった・・・」
私の剣幕に、驚き頷いた。
全くこの人本当に真面目すぎて、面倒な人だな。
「仕方ないですね。そんなに気になさるのなら、今回は許してあげますよ。でも、次はありませんからね」
「・・・ありがとう・・・。約束する」
ほっとしたように言うと、カルヴァン様は笑いだした。
「いつものシャーリーだな。何だが会うといつも怒られているような気がするよ」
「そうかもしれないですね」
顔を見合せ笑った。
「お仕事の邪魔になっては申し訳ないので、私は昼食の準備をしてきます。何か食べたいものありますか?」
「作ってくれるのか?」
その餌を貰えるような、キラキラの瞳・・・。なんだか、弱いな。
「希望があればどうぞ」
「そんな事を聞かれたことがないからな・・・」
そうでしょうね。勝手に出てくるからね。
「では、適当に作ります。嫌いなものはありますか?」
「いや、ない」
「分かりました」
部屋をでて、厨房に向かった。
「お、何だ?今日は昼飯を作るんですか?カルヴァン様が来られてますからね」
さすが料理長、察しがいいですね。
「ですね。まあ。あるもので作ろうかな、と」
ゴソゴソと残り物をみながら、ハッシュドポテトがあったし、魚の白身が少し残っていた。。
定番だが、サンドイッチと行きますか。
ハッシュドポテトに塩コショウをし、ハムの上にのせる。ハッシュドポテトの上にチーズを乗せて、その上にハムをのせる。
あとは、白身魚の骨がないかを確認し、その2つに、かるく塩コショウをふり、馴染ませる。
「今日は楽だな。ご自分で昼食作らるのなら」
料理長、その考え方どうかと思うよ。
白身魚に小麦粉、卵、パン粉を付け、揚げます。
よし、いい感じ。
さて次は、サンドイッチ用のパンにカラシとタルタルソースを塗り、揚げた白身魚とハムとレタスを挟み、半分に切り、出来上がり。
あとは・・・。
サラダと、スープか。
「料理長、朝のコーンポタージュ残ってます?」
「残ってるよ。温めようか?」
「お願いします」
その間にサラダを準備した。
カルヴァン様は美味しく食べてくれ、お土産というか、前に言っていた揚げ菓子を渡すと嬉しそうに夕方帰られた。本当なら御義父様にお会いしたかったが、やるべき事がまだあるようで残念そうに帰っていった。
御義父様が帰りその事と、今日のことを伝えると、何だ、シャーリーの餌付けが一人増えたな、と笑われた。
どういう意味ですか?
誰も餌付けしてるつもりはありません。




