オーリュゥン様と町へ1
「ねぇねぇ、シャーリーが来てから色んな人が来るようになったね」
ノーセットが嬉しそうに前を歩き、振り向きながら私とその人を見る。
「・・・色々・・・?・・・2人目だけど・・・というか・・・、オーリュゥン様はイエーガー様に言われて来たんでしょ?もう宜しいのではないですか?」
御義父様が、さすがに2人で出かけるのはどうかと思う、と気を使ってくれて、週末ノーセットと一緒なら行ってあげなさい、と仕方なさそうに勧められた。
カルヴァンが20歳、オーリュゥンが23歳。2人とも好青年だが、シャーリーが決める事だ。無理強いはしないから。
御義父様がそう、仰るなら私は構いませんよ、と答えたが、素直に、御義父様と御一緒に出掛けてたみたいです、と言うと、
素敵!!
と見惚れる微笑みを私に見せてくれた。
今は騎士団の指導でなかなか休みが取れないが、必ず一緒に出かけようと、約束してくれた。
そんな会話に、いつもハザードが、お2人は理想の親子ですね、と言ってくれるから、えへへ、と心がほんわかなった。
その流れでいたかったのに・・・
はあ・・・とため息しかでない。
別に、この方が嫌いなわけでも、胸がときめいた、というのも嘘ではないが・・・。
いや、カルヴァン様が好き、とかでもない。
なんというか・・・。
「なあ、さっき言っていた蛙を捕まえた、と言うのは本当か?」
「うん。あ、あそこ!!あの橋の下だよ。シャーリーは蛙を捕まえるのが凄く上手いんだ!!」
「へえ!私も見たかったな。・・・ただ蛙は苦手なんだ。他のものなら捕まえられるがな」
「例えば?」
「例えば?うーん、セミとか?トンボとか?」
「え!?それ、僕もやってみたい!!じゃあそれも約束だね!!」」
「ああ、構わないよ」
・・・また・・・。また、だ!!
屋敷から街までもう少しだが、その間にノーセットともう3つも約束している!!
つまりノーセットを使って約束をし、当たり前かのように屋敷にやってくるつもりなんだ。
賢い?
いいえ、狡賢い!
私にない要領の良さに、どう反撃したいいのか分からなかった。
その上、
「シャーリーは?セミ捕まえたり、とかはできるのか?」
ほら!この聞き方狡いわ!
「・・・いいえ、大丈夫です」
「やった!!じゃあ3人捕まえ合いっこしようよ!!」
「・・・そうね・・・ノーセット・・・」
くうううううう!!こう答えるしかないじゃない!!
もう!!その得たり、と言う顔するのやめてよ!!
調子が狂う人だった。
まるで先を読んでいるかのような、それでいて、不思議に入り込んでいくる人。
周りにいない性格の対応に困り、居心地が悪くて、早く帰って欲しかった。
「シャーリーは私に興味無さそうだな」
「・・・興味を持つ所までいっていませんから」
「私は興味をもったよ。私達に興味のない女性はいないからな。だから、誰もが君にも興味を持っている。ナリッシュ王子もな」
ケラケラと笑いながら言うが、全然楽しい話ではない。
「・・・あの時、やはりお2人がいたから声をかける方がいなかったのですね。皆様が遠巻きに見ておられて・・・その中にナリッシュ王子もおられましたよね」
「よく見てる。観察力はあるのだろうな、と思った。定期的に周囲を見、空気を読んで返答している。だから、我々が側にいた方が上手くいく」
「我々?」
「私とシャーリーと、カルヴァンだ。皆、異性に興味が無い。だが、異性は我々に興味がある。我々がつねに側にいれば、シャーリーを取り合う男2人と見える。そうなればおいそれと君に声をかける殿方はいない。私達は、やはりそれ相応の立場がなければ相手をされないのだ、と、ご令嬢は諦めてくれる」
「・・・もしくは、2人のために、私を養女にしたのだ、と思っている人もいるでしょうね」
「頭のいい女は嫌いだが、機転の効く要領のいい女は嫌いじゃない」
「それは・・・まあ、ありがとうございますと言っておきます」
「ちなみに、シャーリーは私の好みの容姿もしている」
得意げに言いますが、遅いです。それは最初に言うべき言葉ですよ。
だって、褒められてる気分にならないもの。
「あれ?何で不機嫌そうなの?」
「・・・褒めてますか?」
「褒めてるだろ?」
「じゃあいいです」
「・・・女性と話をするのが慣れてないから、すまないな。よく言葉足らずだと言われる」
「ふふっ。いいですよ。褒めてくれてるなら」
「まだあ!!早く!!」
いつの間にか結構ノーセットはかなり進んでいて、手招きしていた。
さて、食べ歩き始めますか♪