キャウリー目線
「お前の言う通りにケイトは動いたな」
私の言葉にスクルトがニヤリと笑った。
「ああ。のこのことそれに乗るシャーサーもその程度だ。やはり、その辺の女と変わりはしない。だが、こうも上手くいくと悪い気はしない。さてさて、どこまであざとい女かお手並み拝見といこう」
こいつが言うと、人身売買でもしていないか、と本気で疑いたくなる。
イエーガーの誕生日の挨拶も終わり、ある程度皆社交辞令の挨拶を終え、また、奥で集まっていた。
シャーリーの事で根掘り葉掘り聞かれてうんざりだ。何一つ答える気はないが、何一つ己の足元を崩す気もない。
飲み出すと、シャーリーの料理が欲しくなる。どこでもそうだが、胃が重たくなる料理しか出てこない事に気づいた。
シャーリーが作る料理は野菜が多めで、つい食べてしまい、逆に酒が少なくなった。おかげで、今はすこぶる朝が調子がいい。
騎士団の指導にもつい力が入り、まだまだ衰えてはおらん事がよく分かった。ついてこれる奴が少ないのが、いい証拠だ。
「どうした?ワインが進んでないぞ」
酒飲みのベジットがぐいとグラスをあけ、聞いてくる。これまでは同じように飲んでいた。特に酒に強いとは思ってはいないが、周りからは豪酒だとよく言われていた。
「シャーリーの作る料理がないと酒が進まん」
私の言葉に、何故が皆が食い入るような眼差しで頷いた。
「お前いつも作って貰ってるのか?」ベジット。
「あれ以外にもあるのか?」グリニジ。
夜会の時えらく気にいって食べていたな。
「ふむ。つまりこれからは私が食べれるということか」
「待て、スクルトそれはどういう意味だ」
まだ決まってない。カルヴァンをシャーリーが気に入ったと言われていないんだ。
「そうだ!!オーリュゥンを選べばを私の娘になる!!」
イエーガーの言葉にまた焦った。
「待て!シャーリーの気持ちが大切だと言っているだろう!!」
「それならオーリュゥンが相応しいぞ。あやつは2男なのだから、婿養子にやれる。それなら、側に置いておける」
確かに。分家になるが、男爵なら頼めばどうにかなる。婿養子に貰うのもひとつだな。
「待て!シャーリーなら、当主を持ち上げ、支える器量を持っている。資質を無駄なく発揮させねば何とする。それなら、カルヴァンだろう?」
確かに。シャーリーなら、カルヴァンを上手く操り・・・?
「待て!シャーリーを嫁にはまだ出さん!!娘になったばかりだ」
「・・・お前・・・そんな奴だったのか。いいか、娘、つまり女と言うやつはいずれは誰かの男の物になる。純情そうな女程夜は激しくなる」
「まて、ベジット!他人事に言ってるが、お前娘がいたな。その言葉を嫁ぐ前に娘に言ったのか?まるで、他人事のように簡単に言うが、娘の、それも、長女にその言葉を言ったのか!?」
うっ、と黙ってしまった。
当たり前だ!娘とはそういうものだ!
確かにシャーリーは養女であり、血の繋がりはない、はっきりと言えば他人だ。
だが、な。
「あれは、私の娘だ」
「そういきるな。だから、我々がいるんだろう」
まるで纏めるかのようにスクルトが言う。宰相、いや、暗躍として、策士とし動いた友だ。
「まあな。イエーガーの誕生日にあやつらを招待出来、本当にこの上なく助かっている。あとは、高みの見物と行こう。勝手に動くだろう」
グラスに入っているワインを揺らす。
「そうだな、不穏な輩が今回は多いからな。下手に動けば命取りだ」
その笑いはいつ見ても恐ろしい。
だが、貴族のそれも、役付きとなれば、それだけ敵意を持つものは増える。蹴落とし、己が上がる、もしくは娯楽の1つとして、甘い汁だけを吸い、ゴミのように捨てる。
そうして、その権力を使い、他愛なく隠蔽する。
だからこそ、後ろ盾は曖昧では無く、鮮やかな程に見せつけなければならない。
「オーリュゥン達は何をしている」
イエーガーが聞いてくる。
「ダンスした後、3人で話をしている」
正直シャーリーは、困惑していたがな。私に助けを求めるように近づいて来た時、2人から珍しく睨まれ、渋々離れてやった。
「それでいい。あの二人が側にいれば容易に近づかんだろう」
ベジットの言葉に皆が頷いた。
「あの二人なら全く問題ない。まあ、私の娘だと言うことは知れ渡っているが、そうは言ってもべったり側にはおれんからな。特に今回は不穏分子ばかりを招待しているんだ。シャーリーが巻き込まれては困る」
「ナリッシュ王子もな」
ウイニーがうんざりした声で吐き捨てた。
ウイニーの二女は今の王弟にしつこく求婚されて、そのしつこさにかなり怒っていた。最後はえらい剣幕で、
我々を敵に回したいのか!!
と、怒鳴りつけていた。
「王から言われたんだろう。年も近く美女と聞けばどうにか落とせと、とな」
ため息混じりに、イエーガーがつまらなさそうに言う。
「見え見えだ。だれが王家などに、娘をやるか。戦はもうないだろうが、政治の道具に使われるのを分かってて嫁がせる気など」
ウイニーの言葉に真実味があるだけに、嫌な気分になる。
王は我々とより繋がりを強固なものにするために、欲しいのだろうがな。ウイニーの息子は王女を貰ったが、王子の嫁になど、この中で誰が望むだろう。
「さて、酔いが回る前に、決めておこう」
「何をだ?イエーガー」
「決まっているだろう。オーリュゥンとシャーリーが出かける日だ。カルヴァンは2度も出かけているだろう?狡いぞ!!」
私を指さしたあと、スクルトを指さした。
面倒な事になりそうだな・・・。だが、楽しくもなりそうだな。




