シャーサー目線2
名残惜しいが、その場を離れ、サーヴァント様に向かった。だいぶ奥へ歩いて行かれていて、急いで後を追った。
色んな方が挨拶されている間にどんどん奥へと進んでいく。これ以上奥は、警備が厳しく入れない。
でも、逆に奥の警備が気になるようで、どの令嬢もいなくなった。
「あ、あの、サーヴァント様」
そっと、腕を触り扇子で顔を隠しながらも、色目を使うのは忘れない。
あら、こっちもいい男だわ。端正な顔立ちに、気品も、雰囲気も、さっきのケイト様とも、全く違う。
圧倒的な気高さに、怯みそうになったが、これこそが私が求めていた人だわ、ととても嬉しい気持ちになった。
「・・・君は・・・?」
とても不思議そうな顔でじっと私を見つめてきた。
もう、私の虜になったのね。ふふっ。仕方ないわね。
「初めまして、サヴォワ伯爵家のシャーサーと申します」
男なら誰でもうっとりしてくれる甘い声で、より、側に寄った。
これでなびかない男は、誰一人いなかった。ルーンが手強かったけれど、あの人ももう、私のもの。
それなのに、サーヴァント様はひくり、と頬がひきつり笑みが消えた。
「・・・シャーサー・・・か・・・。・・・そう、だからか・・・。初めまして、サーヴァント・カルヴァンと申します。では、失礼」
え!?
すっと私から離れ歩いていこうとしたのを、腕に絡みついた。
「サーヴァント様、少しお話をしませんか?」
扇子を少しずらし、下から除くように見上げ、微笑んだ。
これなら、私の綺麗な胸も見えるでしょう?
「・・・話しか・・・。君と僕とは永遠に重なるはずのない道を歩いて来たが、いつか、必ず、重なり合い、尽きることない話しをする事が出来ると僕は信じている」
「まあ!!あの演劇のセリフですね!!私も見ましたわ!!」
この方が言うと、演劇のセリフよりも、本当に聞こえるわ。
「いい声ですわね、サーヴァント様。もっと聞かせて頂きたいですわ」
どうして?
この私がこの声で、この体を見せているのに、何故、そんな汚いものを見るような目で見るのだろう。
「そうだよ、あの演劇だ。あの演劇のおかげで、私は素晴らしい方に出会った。同じ顔なのに、これ程違うとは不思議な気持ちだ」
「・・・同じ顔・・・?」
それは、一人しかいない。見るだけでイラ付き、いつもおどおどした、約立たずの女。
「ああ。貴賓席に誘ったのはこの私だ。あの方ではないよ。あの方は本当に彼女を心配している」
「・・・何の・・・話し・・・でしょうか・・・?」
胸がざわざわと嫌な気分になる。
鋭い瞳で私を睨み、ふいと顔を背けると、急に至福の微笑みを誰かに見せた。
「ああ、ほら、あそこにで私を待っている、愛しい女性。・・・待たせたな、シャーリー」
何故この女がここに!?
それも、見たことも無い豪華なドレスを纏い、扇子さえも宝石が散りばめられ、サーヴァン様が恋焦がれるように差し出した手を取った。
私を見る目が、今まで見た事もない、強い瞳だ。こんな顔をするシャーリーなど知らない。
とても嫌な気分だ。
何故この女がここにいるの!?それも、何故、この奥に!?