キャウリー目線2
「それで、今はシャーリーは何しているんだ?」
「お昼寝でございます」
「昼寝?」
「はい。食事も満足に食べさせて貰えないようで、着替えの時お腹が鳴ると、申し訳ありません私がグズなので食べる時間がなかっだけなのです、と笑いながら謝られました。そういう環境なのだな、と酷く胸が痛くなりました」
カップを握る手が強くなる。
どこまで最低なんだ!
「それが本当の親がする事か!!」
「丁度昼食の時間でしたので、お出ししたら、何度もこんなに食べてもいいのですか?と目をキラキラさせながら、見ていて気持ちのいい食べっぷりでした。食べられた後、気持とお腹が満たされたのでしょうね。眠そうにされたので、お昼寝は貴族令嬢の嗜みですよ、とお伝えしまら、では、と寝室にいかれました」
「それで、お昼寝か」
「はい。あと、着の身着のまま連れてこられたようで、何も荷物も無く、着替えの服もないと仰っていました。だからメイド服を貰って助かります、と喜ばれましたが、何とも腹が立ちました!子供をなんだと思っているのでしょう!?」
「そうか。では、誰かに荷物を取りに伯爵家に向かわせよう」
「用意して差しあげでは?」
さりとハザードは言った。
「まあ、いずれはそうしてもいいだろうが、全くサヴォワ伯爵家に近寄らなければ、サヴォワ伯爵殿に変に勘ぐりをされても困る。娘が気に入って手篭めにしたのか、とか、下らん事を言われそうだ」
「うわ・・・言いそうですね」
「もし私でなければ、そうする輩もいるだろう」
「ご主人様は、まず有り得ない事ですね」
ハッキリ、キッパリ言われる。
「当たり前だ。私は女には興味がない。あれば養子を貰ったりせんだろう」
自信満々に、つまりは、シャーリーに手を出す事は有り得ない、と安心させているのに、何故そのように、冷たい顔をする。
何故そこで大きくため息をつく。
「それも、どうかと思いますよ。女性に旺盛なのも困りものですが、まさかそこまで興味がなかったというか、淡白というか・・・。せめて跡取りが出来る」
「もういいだろ、その話は。仕方あるまい。子が出来なかったのだから。ノーセットは帰ったのか?」
これ以上話をすると、また愚痴愚痴と始まる。今年58歳になるが、これまでに共に歩みたいと思う女性がいなかっただけだ。
ただ、それだけだ。
だから遠縁に当たるノーセットを4歳の時養子とし、今年8歳になる。
ふと、ハザードと目が合い、心が落ち着いた。
「そろそろお帰りかと。最近蛙取りにハマっておいでですから、捕まえられたら早くお帰りになりますよ」
「男の子だな。ノーセットの話し相手にもなるだろう」
「そうですね。女性に優しくなるのは良い事です。では、私はこれで失礼致します。シャーリー様がお目覚めになりましたら、調理場に案内致します」
「調理場?」
「はい。仕事にどこか希望がありますか?と質問しましたら、料理がお好きだと仰ったので、調理場での手伝いをして貰おうかと思います」
「それはいい。料理が上手い女性はモテるからな」
「・・・モテるという言葉をご主人様から聞くと信憑性がなくなりますので、やめてください」
何故かピシャリと言われてしまった。
「私が料理が下手なのを遠回しに仰っているのでしょ」
そういう訳で言ったつもりは無いが、どうもそう取ったようで、睨んできた。
「では、失礼致します」
「あ、ああ」
苦笑いしか出なかったが、ハザードは信頼出来るから任せても大丈夫だろ。さて私も仕事をするか。