シャーサー目線1
「初めて見る顔だね。素敵な人だ。名前は?ああ、僕が先に名乗らないとね。初めまして、僕はカミュセシ侯爵家のケイトと申します」
ホールに入ると、すぐにお父様達は、色んな方に挨拶をしなければと行ってしまった。
そうよ。これからサヴォワ家が大きくなるためには、どんどん動いてもらわないと困るわ。私が当主になるんですもの、後ろ盾は必要だわ。
さて、ルーンが来るはずだから、ワインでも、飲んで待っていようかしら。軽食は違う部屋だと言っていたけど、こういう所で出てくるワインですもの、きっと美味しいわ。
と思っていたら、この甘い顔の方に声をかけられた。
とても優雅に会釈してきた。
「・・・初めまして。私はサヴォワ伯爵家のシャーサーと申します」
「こちらこそ。良かったら少し話さないかい?久しぶりに招待されて、緊張していたんだが、君のような美しい人と一緒に入れると気持ちがほぐれるよ」
「あら、お口が上手いのね。どの令嬢にも同じ事を仰っているのではないのですか?」
少しずつ近づいてくる。
「これは手厳しいね。残念だが、本当に美しい方にしか言わないよ」
「うふふ。それなら嬉しいわ」
ルーンを探すまで暇つぶし出来るわね。なんなら、この人に変えてもいいし。
カミュセシ侯爵と言ったら聞いたことある名前だもの。後でお父様に聞いてみよう。
さすがイエーガー侯爵様の誕生日パーティーだわ。顔ぶれも、出で立ちも凄いわ。
「何か飲もうか」
当たり前のように私の腰に手を当ててきた。
女に慣れているわね。でも、嫌いじゃないわ。お互い楽しめるもの。
「ええ。何飲もうかしら」
ケイト様はやはり女性に慣れているようで、話上手だった。とても楽しく、それでいて、さりげなく、体を触ってくる。それが、いやらしくない。つい、こちらも密着したくなる。
なかなか、いい男だわ。
ワインをお互い楽しく飲みながら話をしていると、賑やかな女性の声が聞こえた。
「何?」
「ああ、あの人か」
嫌そうな声を出し顔を近づけあれ、と指さした。
「ほら、サーヴァント様公爵家のカルヴァン様だ」
「宰相様の?」
人だかりであまりよく見えない。
「ああ、今の宰相様のお孫さんだ」
「あら、じゃあ私もご挨拶したいわ」
仲良くなって損はないし、サーヴァント公爵様ともしかしたらお父様がお近付きになっているかもしれないわ。あの夜会から、ついているもの。
あの子はいなくなるし、そのおかけげで、たんまりお金を貰えて、事業も上手くいっている、とお父様が上機嫌だった。
「してきたら?終わったら、後でダンスをお願いできないか?」
不機嫌そうに言うと、腰に添えられ手に力が入り、ケイト様に引き寄せられた。
ほかの男を見てるのを妬いているのね。
ふふっ、可愛い。
「君をもっと知りたい」
耳元で、甘く囁やかれた。
「勿論よ」
扇子で顔を隠しているが、ここまで近距離だとあまり意味は無い。
「いいね、その顔。本当に美しいし、魅惑的だ」
「そう?あなたも素敵よ」
「嬉しいね。待ってるよ」
軽く頬に口付けしてきた。
扇子で見えないからって上手いわ。
本当にいい男だわ。




