ルーン目線1
「お前はシャーリーに許して貰え!必ず許してもらうんだ!!」
イエーガー侯爵様の誕生日パーティーに向かう馬車の中、父さんから何十回聞いたその言葉に息が苦しくなる。
「・・・はい。何をしてでも、・・・許してもらいます」
「当たり前だ!だから忘れろと言ったものを!!こんな事になるんて!!」
「・・・申し訳ありません・・・兄さん・・・」
それしか言えなかった。
母さんはずっとすすり泣いていた。
ひと月前イエーガー侯爵様の誕生日の招待状に、初めて、御家族で出席を願います、と書いてありとうとうイエーガー侯爵様に気にいられた、と喜んでいたのが一転。
誕生日パーティーの三日前になって、シャーリーがどこに養女にいったのか初めて知った。
恐らく、内密にしていたのだろう。それを、このタイミングで流してきたようだった。
すぐにおじさんに詳細を聞きに向かったが、買い物に出ているということで結局会えなかったが、そこで召使いが教えてくれた。
イエーガー侯爵様から誕生日パーティーの招待状が届いていると言うので、その為の買い物だと。大変喜ばしい事です、と。
嵌められた。
父さんと兄さんが青い顔で、小さく呟いた。
僕でも知っている、ウインザー子爵様だ。
国を救った英雄の最後の1人であり、頑なに役職には就くことなく、変人かのように蚊帳の外を望んだ、方だ。
だが、それも父さんから聞いて知っているが、そうでなければそんな化石のような人、をわざわざ話にはでてこない。
だがまさか、シャーリーがメイドとして働いている場所が、その方ウインザー子爵様だとは、夢にも思わなかった。
それも、僕はシャーサーの言葉ばかりを信じ、酷い事を言ってしまたが、あの時の僕は僕なりにシャーリーを救いたかったんだ。
シャーサーや父さん、兄さんの言うように、常識に考えて、すぐに屋敷に返さないのは誰が考えても常軌を逸している。
実際シャーリーは、僕達に会うのをとても嫌そうにしていた。
そうだ。あれは後ろめたさがあるからだ。だから、きちんとした言い訳を言えなかったんだ。
僕がシャーサーの言葉を信じた、
ではないんだ。
シャーリーが、僕達の言葉に言い返せなかったんだ。
シャーサーと出かけた時の事を隠すとも出来ず、僕達の話の内容まで教えると、
父さんも兄さんも激怒した。
この家を潰す気か!だから、放っておけと言ったのだ!!
だから、しつこく父さんらは、是が非でも、シャーリーに許しをこえ!と強く言ってきた。イエーガー侯爵様の誕生日しか知らないが、あの方々の集まりの場には入れないのだから、シャーリーに許しを貰い、ウインザー子爵様からの怒り、ひいてはイエーガー侯爵様の怒りを買ってはならないのだ。
とりあえず、父さん達の前では謝っているが、あの時はシャーサーがいたから、言い訳が出来なかったんだ。シャーサーと僕と2人きりならゆっくり話を聞いてあげれる。そうすれば、優しくて儚げなシャーリーに戻ってくれる。
そう。シャーリーはシャーリーだ。
「父さん、兄さん。僕はシャーリーと話しができるよ。彼女は分かってくれる。だからシャーリーと婚約を認めてくれないか?」
僕の言葉に父さんとに兄さん、見たことも無い安心の微笑みをうかべた。
「そ、それは良い事だ。お前と、シャーリーが婚約すれば、全てが上手く行く」父さん。
「それなら、シャーサーとは婚約破棄だな。今回の事は全てシャーサーが、勝手に動いたことで、お前はただ口車に乗っただけの、言わばいいように使われただけなのだろう?」兄さん。
「そうだね。元々はおじさんの賭けからはじまったことなんだから、僕達には何の関係もない。今回家族を招待したのは、僕と話をしたかったからだよ」
「そんな事ないわ!!何故そんな馬鹿な考えに行き着くの、あなた方は!?」
母さんが泣きながらヒステリックに声を上げた。
「そんな、そんな簡単な方々なの!?・・・そのような訳がないでしょ・・・!!」
父さんと兄さんが一気に青ざめ、また、静まり返った。
いいや、シャーリーは僕を待ってくれている。