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オーリュゥン・イエーガー

皆さんのところへ戻ると、どなたかがイエーガー侯爵様にご挨拶されていた。

見た事ある様な顔だけど、誰?

「ナリッシュ王子だ」

御義父様が教えてくれたが、第一王子だ!

はあ、やはり大臣だと、それなりの方が来賓客になるのか。

近くにおられる方々に挨拶を終え、こちらに来られた。

「ご機嫌よう、ウインザー子爵様。宜しければ、ご紹介頂ければと思っております」

私に微笑みながら、御義父様に伺う。

「勿論です。シャーリー」

扇子を閉め、すっと背筋を伸ばす。

「お初にお目にかかります、シャーリー・ウインザーと申します。以後お見知りきを」

軽く会釈し震える声と、どうにか微笑んだ。

まさか王子と挨拶するなんて思ってないもの。

「ありがとうございます。私はナリッシュ・マジャリと申します。以後お見知りおきを。もしよろしければ」

「ナリッシュ様。あちらでまだご挨拶が済んでおられない方がおりますよね」

御義父様が有無を言わさない強い口調で、微笑んだ。

ビクリ顔を一瞬引き攣らせたが、すぐに穏やかな顔に戻った。

「そうでした。気を使って頂きありがとうございます。では、またの機会にお話を致しましょう」

もうこちらの返事を聞くことも無く、それだけ言うと去って行かれた。


去れ、という事か。それも、第一王子に対して。


でも、御義父様は素敵だった。

「ウインザー様、では、私は如何でしょうか?」

「・・・オーリュゥンか・・・」

ため息と、とても嫌そうで、仕方なさそうな?不思議な感情で御義父様が返事をした。

先程挨拶した方の一人だ。

「どうした?私の孫も参戦させよう思ってな。そんな顔するな。ますます面白くなるだろうが」

イエーガー侯爵様だ。

「待て!どういと事だ。カルヴァンを勧めるのではなかったのか?」

サーヴァント公爵様だ。

「ふん。いい娘を見て、孫に進めるのはお爺の役目だろうが。お前だけが、シャーリーの合う孫を持っている訳では無い」

「待て!お前たち、私の娘だ!!」

その通りでございます。

というか、

「はい、御義父様。私は御義父様が選ばれた方が良いと思っています」

素直にそう答えると、御義父は安心したように頷き、お2人は、ムッとした。

「お前、どこまで手懐けるんだ」

「サーヴァント公爵様、少し違います。私を拾ってくださったのは紛れもなく御義父様です。そのお陰で私は、ここにいます。御義父様が私にとって全てでございます」

「シャーリー違うだろ?己の意思で決めるべきだろう?」

「はい、イエーガー侯爵様。私の意思は、御義父様の意思でございます。つまり、御義父様の意思が、私の意思でございますので、御義父様が選ぶべきでございます」

「ふむ。シャーリー、よく言った。つまり、私が気に入らなければ、私とノーセットの側にいるのだな」

「勿論です」


それはそれで、嬉しいです。


「待て!」

「待て!」

「何がだ。お前達こそ、相応しい娘を、と前々から吟味していただろう?その中から選べはいいだろう?」

「だから、シャーリーなんだろう!?」

「スクルト、カルヴァンとシャーリーが出かけたのだろう?では、次はオーリュゥンだ!!」


なんか・・・ややこしくなりそうだな。


ちらりと、オーリュゥン様を見ると我関さずとばかりに、持っていたワインを飲んでいた。

このまま、去ろう。少し、面倒な事になりそうだ。別にカルヴァン様が嫌いではないが、御義父様がどう思っているのか分からないもの。私は御義父様が、決めた方なら、信じられるもの。

さて、パーティーが始まるのはもう少ししてからだから、


キラリーン!


何か食べよう。


食事は別室に用意してあり、このホールでは飲み物しか用意されていない。

別室もすぐそこの扉から行けるようになっていて、詰まるところ、身内だけの使用となる。


えへへ。どんな物が用意してるんだろう。


「シャーリー、話しが終わってないと思うんだが」


うっ。なんで、ついてくるの?


「・・・オーリュゥン様・・・」

オーリュゥン・イエーガー。イエーガー侯爵様の孫息子だ。それも、騎士団副隊長。

つまり、御義父様の教え子だ。騎士団というのもあり、御義父様のようにとても筋肉質の体で精悍で、カルヴァン様の綺麗な顔に比べ、とても男らしい顔立ちだった。現に綺麗に日焼けた褐色の肌は、勇しく素敵だった。

先程の挨拶の時に、名前で、と言われたので呼ばせて頂いたが、確かに素敵だとは思ったが、興味はない。

くっと可笑しそうに笑いだした。


なに?


「不思議な女だな。私を見て、あからさまに嫌そうな顔するとは」


はあ。確かにあなたの立場なら声をかけたい女性は沢山いるでしょう。


「そんなに警戒するな。私も警戒していたんだ。お爺様がどうしても話をしなさいと、と煩くいわれてたから、どんな女かと思ってね」


何処かで聞いた話だな。


「では、もう話しはしましたのでお約束は守れたか、と。これで失礼致します」

軽く裾を持ち会釈し、踵を返した。


食事!!


「待て!!」

「・・・如何いたしました?」


もう・・・。


「イエーガー・オーリュゥン様!!」

少し離れた所から女性の声が聞こえた。

「呼ばれていますよ」


よし!!


「何だ、その顔は。何故嬉しそうなんだ」

「申し訳ありません。素直な心が顔に出てしまったのですね。ほら、用があるようですよ」

にこやかに微笑むと、ムッとされた。

1人の女性がこちらに歩いてきたが、少し離れた場所で、挙動不審の動きなり止まった。

それ以上足を踏み入れるのを躊躇しているのだ。


「お待ちですよ」


どうぞ。


「・・・こんな事なら、約束などしなければ良かった・・・。では後ほど」


いえいえ、女性に呼ばれていますのに、そんな野暮な事は致しません。


でも、


「はい、では後ほど」

社交辞令の微笑みでそうお返しした。


さて、やっと食事!!


「・・・シャーリー」


この声・・・。


身体が強ばり、一気に寒気が襲った。


「・・・ルーン」




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