キャウリー目線2
「キャウリー様!!」
屋敷に帰ると、まだ、私は玄関ホールにいるというのにシャーリーが走ってきた。
不安でたまらなかったのだろう。
息を上げながら、私の側までやってきた。
「さすが、我が娘だな。元気がいいな」
私の言葉に綺麗な赤い瞳大きくさせ、涙をこぼした。
「では、では・・・お呼び出来るのですね。御義父様と」
シャーリーが歓喜に満ちた顔で、私に涙を流しながらも微笑んだ。
胸がぎゅっとなる。
「シャーリー、もう一度言ってくれ」
「はい。御義父様」
知らず笑みがこぼれてくる。
「もう一度」
「御義父様」
「もう一度」
「御義父様」
ごほん、と咳が聞こえ、横を見るとハザードが苦笑いしていた。
「ご主人様もシャーリー様もお喜びのお気持ちは分かりますが、ともかく、ご主人様はお着替えを。シャーリー様は化粧を直しましょう。それに、ご夕食の準備もありますよ」
そうだった。
「シャーリー、夕食は店を予約している。ノーセットと家族3人で、お祝いしようかと思っている」
また、嬉しさに泣いてくれるかと思っている、と。
「夕食!お店でですか!」
どうやら食い気が勝ったようだ。
涙はとまり、今度は目をキラキラさせ嬉しそうだった。
「とりあえず部屋へ向かおうか」
「はい、御義父様」
いい響きだ。
「初めだな、外食するのは」
「はい。先日カルヴァン様との夕食もとても久しぶりだったので、楽しかったのに、こんな、すぐにまた外食出来るなんて・・・夢のようです・・・」
大袈裟な、と思うし、貴族の娘には有り得ない話だが、シャーリーの育ちならいたしかたない。本当に不憫な時を過ごしたのだろう。
それなら毎月連れて行くのも、いやいや、それでは甘やかしてしまうな。
だが、これまでの事を考えると、少しぐらい甘やかしても、シャーリーは変わる事はないだろう。そう言えば、カルヴァン殿と夕食に行ったな。あの時は何とも思わなかったが、娘になると、何故であろう?
「・・・」
スクルトが勧めてきたから、先々の事を見据え、これは良い縁談になると思っていたが、まてまて、そうなると、シャーリーがこの屋敷が去っていく。
「・・・」
それはならん。だが、
「ご主人様!部屋の前ですよ。入らないのですか!?」
「わっ!」
いつの間にか部屋の前に立ち、隣でハザードが怒っていた。
「シャーリー様も声をかけておいででしたのに、ご自分の妄想に浸るのは結構ですが、それは1人の時にして下さい」
「それはすまない。シャーリーは?」
「お部屋に帰りましたよ。夕食の準備がありますのでね」
「わかった」
「では、失礼致します」
忙しいのだろう、さっさと去っていった。
しかたないだろう浮かれるのは。