おつまみ5
「今日は何作るんだ?」
「何を作るんですか?」
料理長と今日は珍しくハザードがいた。
「ハザード?どうしたの?」
じゃがいも、ナス、ズッキーニを用意しながら聞いた。
「いえ、私も興味がありまして。旦那様がいつも美味しそうに召し上がっ、料理長!!そのワインは何ですか!?ここは仕事場ですよ!!」
仰る通りですが、もう、毎回で私は慣れてしまいました。
「何を言うんだ!もう仕事は終わりだ」
「違います!仕事場ですよ!!そんな私物をそれもお酒なんてもってのほかです!!」
その通りです。もっと言ってください。
じゃがいもの皮を剥きながら、頷いた。
「じゃあ外で飲めばいいんだろ?」
得意げに言いますが、違うでしょ。ほら、ハザードの目がつり上がった。
皮をむいたじゃがいも、ナス、ズッキーニを5ミリ程度の薄切りする。
オーブントレーに油をひく。
まだ2人は、何か言い合っているみたいだが、放っておこう。悪いけど、料理長の相手をしといて下さい。
トレーにスライスした野菜3種類を並べます。
その上に面倒だけど、1つずつトマトソースを塗り、スライスカットしたベーコンや、小さめにカットした、ピーマン、トマト、アボカド、ほうれん草、かぼちゃ等をのる。残り物でOKです。
オーブンへ入れ、焼きます。
「え!?ビザだろ!?チーズは!?」
あら、もう、話は終わったの?
ハザードを見ると、同じように興味津々でこっちを見ていた。
「それは後でやります。まずは水分飛ばしです」
「水分飛ばし?」料理長。
「はい。勿論このままチーズをのせて出来上がりでもいいけど、いい具合に中の野菜が焼けないんです。だから、少し焦げ目をつけるくらいに1度焼き、その後にチーズを乗せて焼くいた方がいいんです。あ、こんなものですね」
トレーを取りだし、チーズをのせてまた、オーブンに入れる。
「成程、揚げ物とかで、中まで火を通すためにやる、2度揚げと同じ原理か。こんな小さいので作った事ないな」
「そうですね」
「シャーリー様は・・・こんな事を家でされていたんですね・・・」
しんみりとハザードが、ぽつりと呟いた。
「でも、今こうやって役にたっているので、無駄ではなかったですよ。あ、出来ました」
また、泣きそうなになったので、誤魔化すためにハザードから顔を背けた。
だって、明日キャウリー様がお父様にサインを貰いに行く事になっている。
不安で、不安で、たまらなかった。
「仕上げに、パセリのみじん切りと、オリーブオイルをかけ、ブラックペッパーをかけて、出来上がりです」
おお!
まあ!!
えへへ、その声、その顔。
不安な気持ちだけど、笑いが出てくる。
「ハザード、お願いがあるの」
「なんでしょうか?」
「今日は私もキャウリー様とご一緒したいの。それをお願いしてきて欲しいの。あと、出来たらハザードも、一緒にいて欲し・・・な・・・と」
「かしこまりました。必ず!了解を得て参ります」
うん。その顔は、負ける気がしないわ。お願いします!
最近私が作り終わったあと、せっせと料理長が同じものを作るようになった。
というか、自分が沢山食べたいので作っている、が正しいだろう。
キャウリー様も、実は知っているが、
シャーリーが来てから、皆がとても楽しそうだ、それを邪魔するつもりは無いよ、と言ってくれた。
ああ、あの方は、
あの人は、とても大きな心をもっておいでだ、
と暖かい気持ちになる。
「シャーリー様、許可は取りました。参りましょう」
いつも冷静なハザードが、少し息を上げていた。私のために急いで走って聞いてくれ頼んだろう。
「ありがとう。キャウリー様が待ってるから、行きましょうか」
「はい」
キャウリー様の部屋で初めて、シャンパンを飲ませてもらった。
お酒なんて、殿方が嗜むので、女性は飲むものではない、とお母様から言われ育っていた。
それなのに、シャーサーや御義母様は、夜会や、家でお父様と飲んでいた。
でも、その姿を見るだけで、お母様の仰った事が正しいといつも思っていた。
あんな乱れた姿を見せるべきでではない。
だから、キャウリー様が薦めてきた時も、丁寧にお断りをしたのだが、ハザードが、少しなら、それもこれなら大丈夫ですよ、とあの厳しいハザードが薦めてきたから、つい飲んでしまった。
それがとても美味しかった。
アルコールかなり少ないと言われたし、炭酸なのでお腹が膨れるからそれ程飲ませんよ、
と言いながらグイグイ飲むハザードに・・・
本当に???
キャウリー様は、当たり前かのようにハザードに注ぐし・・・。
でも、2人と話をししていると、とても、心が落ち着いてきた。
明日は大丈夫、
と思えた。




