シャーサー目線
「シャーリー!!」
え!?
急に腕を離されルーンが大声を張り上げた。
それも、機嫌を悪くする根源の名前を、2人で初めて出かけたここで呼ぶなんて!!
「ルーン?シャーリーがいる訳ないでしょ」
このチケットは即完売の、人気の演劇。それをお父様にねだって、ようやく手に入れた貴重な演劇にあの子がいるはずが無い。
「それに、あそこは貴賓席の方の通路よ。そこに・・・あっ!・・・そういうことかもしれないわね・・・」
少し意味深の言い方で、戸惑いを含めて、ルーンの腕に絡んだ。
「シャーサー・・・?」
ふふっ。不安な顔。意味が分かってくれてるわね。
まさかそんな事はないと何度も言っていたけど、それを証明するものはない。
「・・・そうよね、ルーンがシャーリーを見間違うはずが無いものね。でも・・・貴賓席に座れるということは・・・」
「・・・やはり・・・」
声を震わせ、すこし青ざめた。
そろそろ諦めて欲しい。会う度にシャーリーは?シャーリーは?と心配そうに聞く。もううんざりだ。
私達の婚約が、そろそろ決まるのに、ほかの女名前なんて出して欲しくない。それも、あんなグズで役立つの女を気にするなんておかしいわ。
「あら、シャーサー、ルーンと来てるの?」
偶然あった友人が、声をかけてきた。
より、体をルーンに付ける。
「ええ。どうしてもルーンと来たくてね」
ね、と微笑みながら顔を上げると、さっきまでの不安そうな顔が薄らぎ、嬉しそうにしてくれた。
そうよ。あなたには私がいるんだから。
「そんな仲だったのね。じゃあお邪魔になるわね」
さよなら、と去っていった。
「ねえ、ルーン。一緒に、シャーリーに会いに行きましょうか。私やお父様が何度いっても、帰らないとしか言わないの。ルーンが一緒に行ってくれたら帰ってくれるかもしれないわ」
「そうだな。このままじゃダメだ!」
吐き捨てるように言う。
「・・・そうね。早く助けてあげないとね」
早くルーンに諦めてもらわないと。帰ってきたら帰っててきたで、こき使えるわ。私達のメイドして。
あら、それもいい考えね。