演劇
演劇はとても楽しかった。
貴族に生まれた女性と、商人という庶民で生まれた男性が、偶然出会い、愛し合っていく、身分違いの恋物語。
女性には、決められた婚約者がいて、家柄、家の事業の関係で、破棄することは出来ない。
男性も、あまりに身分が違いすぎて、女性を幸せにすることが出来ないのは理解しているが、愛し合っいる2人。
切なく、それでいて、幸せな時間にもしかしたら、と2人は必死に奮闘していく。
しかし、結局は結ばれない悲話で終わった。
ハンカチが涙で濡れながらも、とても満足した。ここで泣き顔が恥ずかしいと思う状況にはならなかった。
だって、くうくうと気持ち良さそうに寝ているカルヴァン様。
それに、破格の値段、と言うよりも、限られた貴族しか使用できない、貴賓席。
そのおかげで泣いていても問題なかったのだけれど、
俺こういうの興味ないから、
とここに来てすぐに言われ、直ぐに寝てしまった。
なんだかなあ
変わった人だな。
軽く化粧を整え、カルヴァン様の肩を叩いた。
「終わりましたよ」
「うん?そうか、面白かったか?」
「はい。満足しました」
「それは、良かった。では、出ようか」
背伸びし立ち上がった。
「はい」
席を離れると、カルヴァン様の雰囲気が一瞬にして変わる。先程までの、気軽さは姿を消し、気品溢れる出で立ちになる。
誰かから声をかけれると軽く微笑み、挨拶する。
流石だ。
席に座ると直ぐに俺興味ないから、と言われたあの姿からは想像がつかない。
けれど、興味が無いと言われたが、いやいや来た訳では無いのも、カルヴァン様の振る舞いからわかった。
だから、
「また、誘って頂けますか?」
そう素直に言える自分を、
取り戻せた。
「・・・何時でも」
少し頬を赤らめながらも、嬉しそう答えてくれたのに、私も顔が熱くなった。
その時だった。
・・・?
「シャーリー?」
足を止めた私に怪訝そうにカルヴァン様が名を呼んだ。
「いえ、誰かに呼びれた様な気がして・・・。気のせいですね。顔見知りはいませんもの」
周りを見回したが、知っている顔はいなかった。
「そうか。では、行こう」
「はい」
この後は夕食だ!とても楽しみ!!
しかし、確かに高級店で、心踊ったのに、席に座ると・・・。
どのような話だった?教えて貰えないか?
からはじり、食事が来ても、根掘り葉掘り聞き出し、もう少し後でゆっくりと、と言っているのに、1度気になり出すと、納得するまで聞きたいようで、色んな質問が始まり、せっかくの料理が進まず、
「うるさい!寝てたのは誰!?そんなに内容知りたかったら、はい!!これに詳しく書いてあるから、私は食事をしたいの、黙ってて!!」
パンフレットを渡した。
この間の出会った時のように言ってしまい、カルヴァン様はすまない、と驚きながら言い、笑いだした。
「シャーリーは食べることに重きを置くんだな」
と当たり前の事を言われた。
「だって食べなきゃ死んでしまうわ。それなら美味しいものを自分で探します」
また、笑われた。
「俺よりも、食い気か」
「まあ、カルヴァン様ですものね、普通なら、一緒にいるだけで幸せなんでしょうが、残念だながらお腹は膨れませんよ」
「・・・ぶっ!面白いな、シャーリーは」
楽しんで頂けてるのは嬉しいですが!
「カルヴァン様!もう、話しかけないでください。私は温かいうちに食べたいんです!ほら冷めてきた!!」
スズキのムニエルが冷たくなってきた。
もう!!
「・・・いや、わかった。食事に集中しよう。そんな怒るな。また、連れてくるから」
「え!?本当ですか!!」
「なんか、傷つくな。つまり俺が居なくても、食事が出来ればいいのか?」
「そうですね、その方がいいかもしれません。静かですもの」
素直に言ったのに、とても睨まれた。
しかたないでしょ。カルヴァン様は喋りすぎなんです。