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私の必然は素敵ですね

「これは、美味いな」

食後のデザート代わりに買ってきた揚げ菓子を、頬張りながらキャウリー様が手につい砂糖を舐めていた。

行儀が悪いと、ハザードが睨んでいたが、買ってきたのが私なので、何も言えないようだった。


すみません・・・。


ノーセットはつまみ食いが多すぎて、帰ってきてから夕食を食べれず、揚げ菓子を食べ、疲れて寝てしまった。

勿論、ハザードからは、無言の圧があった。


すみません・・・私が買い食いさせてしまったから、ですよねえ。


「それは、良かったです。では、作りましょうか?」

「お!それは、いいな。これから満身創痍になるからな。甘いものは必要だな。それと、カルヴァンに会ったそうだな」


あああの、変わった人か。


「はい。誰ですかあの人。明らかに、上級者貴族で、その、私とは違う世界の人みたいでしたが」

世間知らずとは、さすがに言えなかった。

「誰、か。成程な。シャーリーは偶然会った、と言ったな。だがな、この世は偶然と言うのはありえない。全て必然、そうだな、運命、とでも言おうか」

キャウリー様は満足そうに一気にお茶を飲み干した。

「必然?運命ですか?そんな大袈裟な」

笑いながら私もお茶飲むと、ハザードがキャウリー様と私のカップを片付け、新しいお茶を置いた。

「そうかな?カルヴァンはスクルトの孫に当たる。そのカルヴァンが1人で、それも、街など歩くことなどない」

「スクルト様はキャウリー様の御友人の1人で、夜会に招いた方ですね」

「そうだ。よく覚えたな。他のもの達も覚えているか?」

「だいたい、は。人の名前を覚えるのは嫌いではありません」

私の答えに、キャウリー様は軽く微笑んだ。

「この間、頼まれ事をする事になったと言っただろ。その頼まれた事をしつこく言ってきたのがスクルトなんだ。詳細を決めに言った時に、シャーリーの事を説明したが、いやにいろいろ聞いてきた。今日出掛けることを教えたんだが、カルヴァンはスクルトに言われ出掛けたんだ。つまり、シャーリーと会わせる為にな」

「大袈裟な。運よくお会いしただけです」

「運か・・・。そうだ、私もあの頃は思っていた」

キャウリー様は遠い目をしながら、自嘲気に笑った。


「・・・私は昔、戦に明け暮れてていた。友は次々に死んでいき、私はがむしゃらに剣を振り下ろし、いつしか、大将になっていた。その時に思っていた。戦友の屍を踏んで、何故私は生き残ったのか、と。運よく生き残たっだけで・・・いや、そんな昔話はいらないな」

振り払うように首を振った。

「運や偶然などという、その場しのぎの言葉で、人生を決めては行けない。それは、他人のせいにする。まあ、必然も始めから敷いてあるレールを歩いていると言う意味では、他人事に聞こえるかもしれないな。だがな、私はあの時、あのテーブルにシャーリーの父上が座ったのも必然。トランプをし負けた支払いの変わりにシャーリーがここにやって来たのも必然、今日カルヴァンに出会ったものも必然。そう言った方が、素敵に聞こえないか。私は、必然、という言葉が好きだ」

キャウリー様の穏やかは微笑みに、泣きそうになった。

「必然・・・。そうですね、私の必然は素敵ですね・・・」

「そうだろ?カルヴァンはあの顔だが女性との噂は全くない。スクルトに似て堅物というか真面目な奴だ」


真面目かあ。よく言えば確かにそうかもしれない。鬱陶しいくらいに聞いてきたけど、気になる事を全部質問していのかもしれない。


見下したような言い方もあったけれど、それは、私を馬鹿にしているわけではなく、多分普段の物言いなのだろう。

「なんだ?面倒そうな顔してるな」

「いや・・・不思議な人だなあ、と」

「そうか。残念な結果のようだな」


「いや、まだ、そう言う訳ではありませんが、今日会ったばかりですので・・・」

「ご主人様いい加減になさいませ。ご自分の事を棚に上げ他人の色恋沙汰を楽しまれてどうされますか」

「あ、いや、つい、親友の孫だからな。すまなかったなシャーリー」

「いえ、お気遣い感謝します」

ハザードに叱られ、しゅんとなる所が、2人は主従関係にありながらも、仲がいいのだろう。

「では、私は仕事が残っているので部屋に戻る。シャーリーまた、つまみを頼むな」

「はい、キャウリー様」

「シャーリー様は優しすぎますよ」

「いいじゃないか、誰かさんは冷たすぎるのだから」

「誰かさんとは、誰の事ですか!?」


そう答えている時点で、誰かとはわかっているんだよね、ハザード。


「部屋に戻る」

逃げるように食堂からキャウリー様は出ていったが、見送るハザードを見て、仲良いな、と思った。


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