ルーン目線1
「いない?どこへ行ったんだ?」
「・・・それは・・・少し、説明しずらいというか・・・」
金の綺麗な髪をクルクルさせながら、言いにくそうにシャーサーが言うが、いつものようにつまらなさそうだ。
双子でありながら、2人があまり仲良くないのは知っている。
僕の前であからさまなら態度をとる時もある。本当は言いたいが、いつもシャーリーがやめて、と言うから言葉を飲み込んでいる。
最近シャーリーに会ってかなかったら来たものの、屋敷に来てすぐに、何故かシャーサーの部屋に呼ばれソファに座らされ。
シャーリーは?
と聞くと、そんな答えが帰ってきた。
「何があったんだ?病気か?」
「違うわ。あのね・・・、お父様がこの間、サーヴァント公爵様の夜会に招待されて行ったのだけど、そこで嫌だって言っているのに、賭けのトランプをさせられて、負けてしまったの」
それはないなだろう。おじさんが賭け事を好きなのは知っている。それは、2人からよく聞いていたのに、何故そんな嘘をつくんだ?
どうせ自分からやりたいと言ったんだ。
「それが、シャーリーに関係があるのか?」
シャーサーの目が楽しそうに変わった。
「ダメよ、と言ったのに、あの子ったら真面目でしょ?自分から、私が働いて返すわ、と言ってきかないの。それで、その家に今働きに出てるの。あ、でも心配しないで。ちゃんと様子は毎日見に行ってるわ」
「いつからだ!?何故そんな事平気でさせるんだ。おかしいだろう!?」
「先週の話よ。だから、心配しないで。毎日見に行ってるから。毎回帰るように言ってるんだけど、言うこときかなくて・・・」
困ったものだわ、もいいながらも、他人事にしか聞こえない。
「何処なんだ?僕が言って連れ戻りしてくる!」
「そうね」
甘い声を出すと、ぼくの横に座ってきた。
「ルーンが言ってくれたら帰ってくれるわ。でも、もう少し待って。納得しないと帰らないわよ、あの子は」
より、僕に近づき上目遣いで、手を握っててきた。
豊かな胸と、綺麗な顔立ち。いつ見ても、素敵だと思う。実際僕の友人達も、狙っている者も多いから、幼なじみを妬む声を聞く。
だが、僕にとって、シャーサーはただの幼なじみにしか見えなかった。
「確かにシャーリーは、何でも自分が納得するまでするからね。でも、やはり、普通じゃない。とりあえず何処の家に行ったか教えて貰える?」
「お父様しか、知らないのよ」
また、嘘だ。さっき毎日行っているのに帰らない、と言った所なのに。という事は、様子を見に行ってないな。
「そうか・・・だが元気なんだろ?」」
「勿論よ」
ふうと溜息をつき、握ってきた手を外した。
「僕、帰るよ」
シャーリーに会えないのならここに来た意味がない。それに、父さんに聞いたら、シャーリーが何処にいるか知っているかもしれない。
立ち上がると、また、手を繋いで引き止めるように悲しい顔になった。
「待ってよ、もう少し話をしたいの。別にシャーリーがいなくてもいいでしょ。私は2人っきりでもっと色々は話をしたいの」
「シャーサー、その言い方はやめた方がいいよ。僕だからいいけど、他だったら誤解するから」
変な期待を持ってしまう、この距離の密着感と、潤んだ瞳。
「ルーン以外にはしないわ。どうしてそんな意地悪言うの?」
よく言うよ。何かを男性に頼む時によく見る光景だ。だが、それが女性の武器なのも分かっているが、悪いが興味が無い。
「ねえ、お願いがあるの」
甘える声に、面倒だと思いながらも、何?と答えるしか無かった。
「これ・・・」
テーブルに乗っている、2枚の演劇のチケットを指さした。わざと無視し、このまま帰ろうと思っていたが、そうもいかないのか。
「ねぇ、一緒に行きましょうよ。本当は・・・シャーリーと一緒に行くつもりだったのだけど、来週なの。珍しくいい席がとれて・・・1人で行くのは寂しいし・・・」
「シャーリーが帰ってくるかもしれないだろ?2人で行っておいでよ」
「でも・・・もし帰ってこなかったら・・・?そうしたら一緒に行ってくれる?」
「僕よりも、シャーサーと行きたい男性は沢山いるだろ?その人達を誘ってあげれば?」
「・・・酷い・・・わ・・・。私・・・、そんなの・・・嫌よ・・・。ルーンと・・・行きたいの」
急に悲しそうに泣き出した。こうなってしまっては、男の負けだ。
分かった・・・、今回だけだからね、と約束してしまい、どうにか席を立った