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キャウリー目線

「本当に、そんな事言われたのですか?」

シャーリーが食堂を出るのを確認し、ハザードは眉間に皺を寄せ聞いた。シャーリーの服を取りに行った時のことを言っているのだろう。

「さっきは軽く言ったが、かなりキツい言い方をされたようだ。あんなのと家族と思われるなんて心外だわ、見てわかるでしょう?と。同じ顔のものに言われたと言っていた。つまりシャーリーの姉の言葉だな。これが、シャーリーの姉か、と逆に呆れ顔で報告を受けた」

「では、痣は本当に御家族からのものですね。ああ!!腹が立ちますね!!」

「心配するな。調べたが、あの家と関わることはあまり無さそうだ。その程度だった」

「それなら、安心です」

「シャーリーがいたいだけここにいればいい。私も、都合がいい」

「そうでしょうね。御友人達が、ご主人様の為に色々な女性を紹介して来ますものね」

「余計なお世話だ。私は今のまま悠々自適の生活でいいんだ。跡取りもいるのだからか」

「養子ですがね」

棘があるな。

「それで、シャーリー様のダンスの手ほどきはどうされるのですか?」

「勿論、サーヴァントに誰か紹介してもらう。これから少し話をする予定になっているから、あいつのいる王宮に向う。お互い色々相談する事があるからな。騎士達の指導についても話をしなければならん」

「おや、やっと引き受ける気になったのですか?」

「ノーセットのこれからもあるし、シャーリーの事が出てきたからな。地盤を固めるには仕方ないだろ」

本当なら、もう二度と国逃げ関わりたくなかった。

それはハザードも同じはずが、くすくすと可笑しそうに笑いだした。

「お2人にカッコイイ所でも見せたいと、年甲斐もなく思ったのでしょう?」

「・・・ハザードにはすべてお見通しか」

ふうとため息をつき、苦笑が出る。

同じ歳で、この屋敷で50年もいれば私の全てを知っている。

「あの2人はキラキラしてますものね。影響を受けて気持ちが若返るのは、良い事です」

そこで、言葉を切ると、少し戸惑ったような、それでいて、覚悟を決めたような顔をした。

「忙しくなりますね」

ハザードが、昔、戦場に行く前日に言った、同じ言葉、同じ笑みを浮かべた。

「いや、ハザードがいる。何も変わりはしない」

あの時と同じ言葉が自然に出た。

目と目が合い、また、あの時と同じように仕方なかそうに笑った。

「では、馬車の準備をして参ります」

「宜しく頼む」

ハザードは一礼し出ていった。

懐かしい、そして、2度と起こしてはならない戦争の記憶が脳裏に浮かぶ。

私は若く、腕が立った。武将と呼ばれ、軍勢を統率し、襲いかかる敵を薙ぎ倒していた。

だが、もう遠い昔話しなのに、その時の戦友であったサーヴァントが、王宮の騎士達の師として指導を頼みたいと、前々から懇願していた。

だが、師となれば否応無く戦を思い出す。私としては、二度と思い出したくない、いや、消し去りたい過去だった。

それなのに。

あの二人を見ていると、穏やかな気持ちで、若き者達に指導するのも私の役目かもしれん、と思えた。

残ったコーヒーを飲んだ。冷めて不味かった。これも、温かい方が、美味しい、という事だな。

不思議な子だ。奇想天外な表れ方したかと思えば、たった1日で屋敷の皆から受け入れられた。

オドオドしているが、幸か不幸か家族に邪険に扱われていた分、人を嫌な気分にさせない雰囲気と物腰が備わっている。

母君の育ても方も良かったのだろう。

気品は失われていない。

なかなか面白いものをくれたな。

「さて、服でも着替えるか」

あのころのギスギスした気持ちはなく、とても楽しい気持ちだった。







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