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私の仕事

「可愛いですね」

今度は、クルミパンを取り、口に入れた。

「そうか?私は子供がいないのでどう接していいのかまだ分からない。シャーリーが相手をしてくれて、実はほっとしている」

「あの、私つい可愛くて、相手をしているだけです」

「充分だ。さて、ノーセットがいなくなった所で、シャーリー、大人の話をしようか。そんな硬い話ではないから食べながらで構わない。ハザード、カフェオレのおかわりをいれてあげなさい」

「はい」

トポトポとカップに注ぐ音と、ミルクのいい香りがする。ちなみに、3杯目です。

「まずは、シャーリーが何故ここにいるかは、ノーセットも含め他の召使い同様同じ説明をした。シャーリーは友人の娘で伯爵家だ。少し風変わりな子で、花嫁修業の料理を勉強したく、ウィンザー家へやってきた。皆、信じてくれた」

「・・・ありがとうございます」

いい説明だ。また、少し風変わり、と言っておけば大体のことは許される。

「父親の所業は明らかに常軌を逸している」

頬がヒクヒクの動き、冷静な声ながらも目が怖かった。

「そうですね・・・。昔は優しかったのですが・・・」

「そうか・・・。だが、この現状を見ると私には信じられない。ここでは、好きなように過ごしなさい。昨日の料理を食べる限り本当に、花嫁修業になるやもしれん。そこでだ、シャーリーは私のメイドとして来たのだろう。では、私の手伝いをして欲しい」

「手伝い、ですか?」

「まず、夜会やパーティーに呼ばれた時、私のエスコートの相手として参加すること」

「私がですか!?歳が、違いすぎますよ!」

「構わん。とりあえず、女性を連れていたらそれでいいんだ」

うんざりとため息ついたのはキャウリー様だけでなく、ハザードもだった。

「そうですねそれは、妙案です。場合によっては女性がおられた方が宜しいのに、お構いなくお1人で出席されるから、御友人からネチネチと後からいわれますからね。ご主人様だけならまだしも、私にも、誰かにいないのか?と聞かれますので、全く迷惑ですよ」

「そう言うなよ。これからシャーリーがいるから言われんだろう。あと、シャーリーの屋敷に服を取りに行かせんだが、恐らく義母と姉だろう。渡す服なんかありません、と追いやられと言っていた。だから、午後から仕立て屋を呼んでいる。ドレスや小物を作りなさい。心配せずとも、その分はエスコートと、昨夜の食事で十分だ」

「・・・何から何まで、すみません・・・」

「いいや、どの道、私と出る夜会などはこれまでと少し違うだろうから新調して貰った方が、私が助かる。あと、ダンスの曲も少し違ってくるだろうから、それは明日から練習しなさい」

「す・・・、いいえ、分かりました」

「ああ、それともうひとつあった。服が出来たらメイド服は夕食の準備の時だけにしなさい。私の客人が屋敷に来ることもある。メイド服着た者をエスコートして出席するのは、私の立場がない」

「分かりました」

ごもっともだ。

「とりあえず以上だ。また、何か頼みたいことがあったら言おう。・・・これは個人的な質問で答えたくないら答えなくてもいい。誰か婚約者や、好きな男はいたのか?」

ドキリとし、ルーンの顔が浮かんだが、すぐに消した。

「・・・特にいません」

「そうか。それなら、連絡などはいらないな。しかし・・・本当に美味しそうに食べるな、シャーリーは」

「美味しんです!」

そこはすかさずはっきり答えた。

「そうか。だが、私は夜の方が楽しみだ」

「そう言って下ると嬉しいです」

キャウリー様は私の顔を見て、嬉しそうに微笑んだ。

「それはそれでどうかと思いますよ。規律が乱れるのでは無いのですか?許可をしたとはいえ、食材を使い、主だけでは無く召使いにも、食事を作る。令嬢の行動ではありませんし、食べれない者からやっかみなどが生まれる可能性があります。そうなれば、内々でゴタゴタが起こるかもしれません」

ハザードがピシャリ言い、私ではなくキャウリー様を睨んだ。

でも、もっとも、だ。

「いいじゃないか。ある意味、シャーリーの行動全て私から寛容されている、と思われればいい。それに、そんな事でゴタゴタが起きたとしても、お前が片付けてくれるだろう?」

「また、そのような事を!」

ハザードの怒る姿に何故かキャウリー様は楽しそうだった。

「まあまあ、ハザード。後で愚痴は聞くよ。シャーリーの食事の方が大事だ。ほら、まだパンを食べたいのだろう?」


見抜かれてましたか。


つい、次はどれを食べようかと見てしまった。

「あの、でもハザードの言うように確かに、食べれない人が出てくるので、キャウリー様が食べる分だけしか作りません」

「ほら、ハザード。お前があまりに強く言うからシャーリーが萎縮してしまったでは無いか」

「そ、そんな萎縮なんて大袈裟です。本当にハザードの言う通りだと思ったのです」

急いで首を振り、ハザードを見ると、仕方ありませんね、と言うあやすような顔で私を見た。

「私も強く言い過ぎました。調理場を使用し料理するのはお好きにして下さい。ただ、皆を甘やかさないようにしてください」

「甘やかす?」

言っている意味がよく分からなかった。調理場を借りるから、皆の邪魔をしないように、ならわかる

「食べた、と言ってシャーリー様が作って差し上げる必要はありません」

「そんな事を言っているのか?」

「そうですよ!私も食べ、ごぼん。いえ、なんでもありません」

くっくく、とキャウリー様は笑いだし、ハザードは顔を真っ赤にして、パン籠を持ってきた。

「ともかく、ご主人様だけにお作りになればいいのです。それで、シャーリー様、次は何をお召し上がりになりますか」

何故か慌てるように言ってきた。

「あの、では、クリームパンを下さい」

「かしこまりました」

くリームパンもとても美味しく、その後クロワッサンをまた食べ、本当にお腹いっぱいになった。

その後部屋に戻り、ハザードに貰ったを地図を見ながら、屋敷を探索した。

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