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追憶の旅  作者:
9/135

岩山

2人は出来るだけ静かに進む。

視界が開けた場所を進めばそれだけ増殖者(エクスクレイム)に見つかる可能性にもなる。

木々の間を進んでいくしかないが。

アルタの平原に近付く程木々も減っていく。


どんどん視界も開けてくる。


「これより先はもう隠れる場所もなさそうだ‥」


手に力が入る。

増殖者(エクスクレイム)の姿は見えないが‥


「シード様、あの丘。

その向こうにアルタの平原があります。」


「‥行こう。」


距離にしては1キロ‥いや2キロ程‥

それはとてつもなく遠く感じた。

それでも2人は歩みを止めない。

進むしか道はない。


向かう途中いくつもの岩山が見える。

そこなら身を隠しながら先に進めそうだ。

だが増殖者(エクスクレイム)が潜んでいる可能性も捨てきれない。

だが岩山を迂回した距離を考えると‥


「リーナ、岩山の中を進もう。

出来るだけ直線で目的地に‥」


リーナは頷き答える。

2人は岩山に向かった。


そしてすぐ後悔することになる。


大きさは頭から尾まで2メートル程だろうか。

白い体のそれには腕はなく、発達した足と岩をも削る鉤爪。

体に相応しい程の大顎。

そこから見える牙は陽の光を受け輝いてる。


増殖者(エクスクレイム)‥」


リーナは絶句している。


「あれが‥」


だが相手は1匹だけのようだ。

これなら隠れながらやり過ごせるかもしれない。


増殖者(エクスクレイム)は複数の個体が存在します。

あの個体は視覚も嗅覚もありません。

仲間の叫び声を聞き取る聴覚が存在しますが、それも大きな叫び声が聞き取れる程度です。

このまま隠れていればやり過ごせます。」


ならリーナの言うとおり隠れているべきだろう。

だがそれならどうやって増殖者(エクスクレイム)達は闘うのだろうか。

シードは疑問を胸に息を殺し岩影に隠れようとした。


その時になって後ろの存在に気付いた。

自分達の後ろ岩山の上に、増殖者(エクスクレイム)が立っていた。

だがその個体は先ほどの個体とは違う。

先ほどの発達した足とは似ても似つかない程頼りない。

鉤爪もなく尾もとても細い。

だが見ていた。

巨大な単眼はこちらを見つめていた。


そしてそいつから放たれた叫び声は、近くの増殖者(エクスクレイム)を呼ぶには十分だったらしい。


後ろから攻撃を受けた。

背中に痛み。

単眼の増殖者(エクスクレイム)は岩影に隠れながらこちらを見つめ続ける。


増殖者(エクスクレイム)は五感がとても鈍いです!

ですがその感覚を互いに共有しています!」


つまり単眼の増殖者(エクスクレイム)の視界がもう1体の増殖者(エクスクレイム)に情報を与えている。

ならば。


シードは背中の痛みなど感じてないかのように。

いやそれよりもまずは単眼を。

近くにあった棒を拾い上げ、単眼の増殖者(エクスクレイム)に駆け寄る。

だが横から他の増殖者(エクスクレイム)が体当たりをしてきた。

その攻撃に吹き飛ばされ、増殖者(エクスクレイム)と岩山に挟まれる。


「ぐっ‥」


悲鳴にもならない声を上げる。

だが増殖者(エクスクレイム)の攻撃は止まらない。


「シード様!」


リーナの手から光の刃が放たれる。

それは増殖者(エクスクレイム)に当たるが、何のダメージにも‥

それどころか、動けないシードより。

動けるリーナに攻撃が向くのは自然だった。


増殖者(エクスクレイム)は飛び上がり、リーナに攻撃を開始した。

単眼の増殖者(エクスクレイム)はさらに叫び声を上げる。


「リーナ!」


シードは赤い血を浴びることになった。

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