増殖者(エクスクレイム)の体
先程ラキが名前をつけた明滅蝙の胸と腹の間には焼けただれた大きな穴が空いていた。
そしてそのまま洞窟内の地面へと横たわるように落ちた。
辺りには肉が焼けたような匂いが充満することになる。
周りには明滅蝙によって切り裂かれたり踏みつけられた増殖者の体が横たわる。
明滅蝙が横たわるように落ちた衝撃で焼けただれた穴から臓物が飛び出すように流れ出た。
見ていて気持ちのいいものじゃない‥
シードもリーナも咄嗟に目を背ける。
背けた先にも腹を切り裂かれた増殖者が横たわる。
そこで違和感を感じる。
何も出てこない。
というより増殖者の腹には何もなかった。
明滅蝙のような生命維持に必要であろう臓器が。
「気付いたか?
増殖者達は母体から産み落とされるときに与えられる栄養。
その栄養のみで生きている。
おそらく10日程だろう。」
ラキはそう言って近付いてくる。
「10日の間に索敵、獲物を捉える等の仕事をするわけだ。
そして死の間際、母体の元に戻り自身も栄養となる。
不必要な臓器を無くせばその分産み出す為のエネルギーが小さくなるのかもしれないな‥」
シードは驚愕した。
「その為に臓器がないのか?
母体にとっては子供ではなく‥」
「自身の手足だよ。
手足は飯を食わないからな。
増殖者の母体は何度か追い詰めたことがある。
だが‥」
ラキは口を結ぶ。
だがラキの言葉を待つことにした。
「母体は死の間際卵を産む。
それは母体と同じ能力を持つ。
つまり母体と共に卵を殺さなければ増殖者達は永久に生き続けることになる。」
「そして増殖者達のこの巣穴が問題だ。
卵を産めば母体はたちまち死ぬことになるが‥
卵を持った個体がこの迷路のような巣穴に逃げるわけだ。
そうなれば‥」
「なるほどな‥」
シードは頷く。
増殖者の戦闘能力は他に比べれば高くはない。
数でなら圧倒して倒すことも出来るだろう。
しかし恐ろしいのは殺しても殺しても減らない。
その特異な能力は他にはない脅威だろう。
「‥」
シードは増殖者の死体を見つめる。
未だに違和感を感じる。
この違和感はどこかで感じたことがある。
この旅の中のどこかで。
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