秘密
「なぁラキ。」
「ん?」
ラキは焚き火に木をくべながら答える。
「ラガンやメディス。
いや神器だったが‥彼らはよく分からない事を言っていた。」
「あぁ言わなくても分かるよ‥
そうだな‥今は話せない‥かな?」
「そうか‥」
「エルドバに着けば話してもいい‥
そのときに話そう。」
シードは立ち上がりプラチナに近づく。
プラチナもそんなシードに気付き様子を伺う。
「プラチナだったな。
名前は気に入っているのか?」
「俺達には名前はない。
群れの頂点。王のみが名前を持つ。
だから俺の名前ではなく、お前達の呼びやすいように呼べばいい。」
この会話はシードにしか分からない。
それでもプラチナを気遣って小さな声で聞いた。
「じゃぁ気に入ってないのか?」
「気に入る気に入らないではない‥」
そう言って目を伏せた。
様子から察するに気に入っているらしい。
「どうしてラキを案内してくれたんだ?」
「俺は生まれて50年程だ。
森から出たことがない。
それに父が言っていた。
お前達の言う透明爬もそうだが‥
400年いやそれよりもっと前から大食鰐すら見ていないと。」
「つまり‥大食鰐を含め他の種族達はつい最近急に出てきたと?」
「俺も生まれて50年。
その間に見たことがあるのは増殖者と人間だけだ。」
「そうか。人はいるのか‥」
「だが気を付けた方がいい。
人間は変わってしまった。」
その言葉の真意は分からなかったがプラチナは目を閉じた。
夜が明ければいよいよエルドバに向かう。
頭の中の誰かはフロウとソアラに探せと言っていた。
だがそれもエルドバに着いてからでも良いだろう。
シードは立ち上がりリーナを探した。
リーナはエルドバの方向を見て座っていた。
「リーナ。」
リーナは振り向く。
「シード様。どうしましたか?」
「大丈夫かなって‥」
「私は大丈夫ですよ。
シード様こそ体は大丈夫ですか?
メディス様との戦いであんなにも出血をしていました。」
「リーナの魔法のお陰かな。
何の問題もないよ。」
「なら良かったです。
でもそれはシード様の力だと思います。
普通の人には神器を扱う事なんて出来ません。
きっとシード様は神々に選ばれた存在だと。」
「選ばれたか‥
そんなことないと思うよ。」
「そうでしょうか?」
「偽装花が現れた時。
リーナはどう思った?」
「私は怖かったです。
あのままなら死んでいた‥」
「俺も同じだよ‥
一つ一つの攻撃が怖くて仕方ない。」
「でもシード様は動くことが出来ます。
それだけでもやっぱり選ばれた存在ですよ。」
「それはリーナも同じだろ?
同じように動いただろ?」
偽装花との戦いで助けてくれたことを言った。
「‥そうですね。」
「それが人間ってやつだよ。
怖くても誰かの為なら戦えるんだ。」
そう言って二人で笑いあった。