平原の塔
二人はエルドバを目指し今度は北へと向かっていた。
夜営をしながら少しずつ目的地へ向かう。
幸いにも他の種族に出会うことはなかった。
小高い丘を越えた時。
目の前に塔が現れた。
「ここにも神器が‥」
「ここは‥確か‥
ここはエルドバから最も近い平原と丘の続く場所。
境界の地と呼ばれています。」
シードが質問する前にリーナが答えた。
「境界の地と呼ばれる理由はですね。
ここより北が神と人の支配領域で。
ここより西には幻惑蝶。
南は先日の通り偽装花の支配領域となっていました。」
「東はどの種族が支配していたんだい?」
「東は小さな山を越えると大きな砂漠が広がっているそうです。
神様も人も近付くことはありませんでした。」
「もしこの地で眠っている神様がいるとすれば恐らく‥」
そう言ってリーナは言い淀んだ。
「どうかした?」
リーナを心配するシード。
意を決してリーナは答えた。
「死の神メディスと呼ばれる方が眠っているはずです‥」
「死の神‥」
「増殖者達との戦いで最初に帰って来なかった方です。
気を付けて下さい‥
メディス様が本人であるにしろ、神器であるにしろ、とてつもない強さです。」
「死の神メディスか‥行こう。」
二人は塔へと歩きだした。
塔へとたどり着くといつも通り扉が現れる。
死の神と言う名前を聞いたせいだろうか?
足取りが重い。
螺旋階段も心なしか長く感じた。
塔の頂上まで何の問題もなくたどり着いた。
キラキラ輝く粒子。
光の楔。
シードは手をかざす。
そしていつも通り誰かの記憶が流れ込む。
綺麗な女性が笑っている。
手に持つ小さなナイフが2つ。
そんな女性の前に傷だらけの男が運ばれてきた。
応急処置だろうか。
包帯を巻かれているが未だ出血が止まっていない。
回りに居るもの達もボロボロだ。
女性は傷付いた男に近付き手に持つナイフを突き立てた。
「うっ」と男から小さな悲鳴が溢れる。
すると男の体はみるみるうちに傷がなくなる。
回りの男達も同様にナイフで突き刺す。
また同様に傷がなくなっていく。
女性は助けることが出来たことを喜んだ。
男達も生き残ったことに感謝した。
今まで虫の息だった男が立ち上がる。
「ありがとうございます。
女神様。」
皆感謝を述べる。
「女神様万歳!
メディス様万歳!
治癒の女神メディス様!」