責任
偽装花を倒した後どんどん視界が良くなっていく。
リーナの声もよく聞こえる。
「すみません。
偽装花に気付かず、不用意に近づき過ぎました‥」
「いや‥」
リーナは責任を感じているようだ。
「シード様が気付かなければ私は擬似餌に騙され‥」
そして口をつぐんだ。
そんなリーナが少し可哀想で質問をして話を反らす。
「助けられて何よりだ。
あの甘い香りが原因か?」
「はい。判断能力や五感を鈍くします。
もっと悪くなれば幻覚や幻聴も‥
私にはあの人影が見知った人に‥」
「だからリーナの声が聞こえなかったのか‥
だがリーナは途中で気付いて危険な中来てくれたのか?
ありがとう。
助かったよ。」
「私は何も‥」
そう言うリーナに優しく言った。
「リーナのお陰で助かったんだ。
感謝をさせて欲しいんだ。」
リーナは小さくはいと言う。
シードはこれも神器の影響かと思った。
女性に優しく接する姿は星の弓の記憶の中のハーランそのものだった。
シードは確かに自分が他のものの記憶に侵食されているのを感じている。
だがシードは恐怖を感じなかった。
そうなるのが当たり前のような‥
「何故氷が効いたんだ?」
「偽装花は確かに植物ですが、生きている植物は水分が多いです。
あれだけ巨大なら尚更。
乾いた薪は焚き火に適していますが水分が多いと弾けますし、燃えにくいです。」
「なら燃やすよりその水分ごと凍らせてしまえと?」
「ハーラン様の矢ならそれも可能かと。
燃やしてしまうと他の種族を引き寄せる可能性もありましたので。」
リーナは色々考えていてくれている。
「ありがとう。
俺にはそんな考えなかったよ。」
あの時リーナが強烈な匂いの中来てくれなければ倒すことも出来ず、やられてしまっていたかもしれない。
「私は何の役にも立てていないんです‥
リアナ様から頼まれたのはシード様をアルタの平原にお連れすることだけ。
それも達成できず‥
それからも何をすれば良いのか‥
エルドバに着いたら私は‥」
リーナはずっと悩んでいたのだろうか?
それにエルドバに着けばリーナは旅をやめてしまうのかも‥
だからシードは手を伸ばした。
「なら俺と旅を続けよう。
俺には記憶がない。
神器から受け継ぐ記憶は全て他人のものだ‥
だから一緒に記憶を探してくれないか?
この旅が俺の記憶になっていくんだ。」
リーナは確かにシードからソル、ハーラン。
そしてラガンの面影を感じていた。
それが神器から与えられた偽りの記憶。
偽りの人格だとしても。
だがそこにいたシードは紛れもなくシード本人だと思った。