統率狼(コマンダー)
「なぜ大食鰐がいるんだ!」
ラキはリーナを背負いながら吐き捨てる。
400年前、あのアルタの平原での戦いでいるはずのない者達。
この地で滅び去っていった者達が現れた。
大食鰐も同じように現れたのか?
生き残りが居たのだろうか?
「とにかく今は‥」
リーナをあの場に残すことは出来ない。
リーナを守りながら戦うことは難しい。
だからと言って遮蔽物のない湿地では隠れる場所もない。
今は森に。
だからラキはリーナを背負い森へと向かう。
400年以上前からあそこは統率狼達の領域。
自分が居なかった400年の間に統率狼達が滅んだのか。
それとも未だに支配しているのか分からない。
それでも、向かうしかない。
「それにいざとなれば‥」
霧の中を駆け抜け森が見えてきた。
そこでラキは足を止める。
「ラキ様。この辺りで身を隠せば良いのですか?」
背負われたリーナが足を止めたリーナに聞いた。
「すまない。
完全に私の判断ミスだ‥」
森から。
そして霧の中から取り囲むように複数の影が出てくる。
「統率狼‥」
リーナは完全に怯えている。
ラキは考える。
振り切ることは可能だ。
だがシードの元に駆けつけるのが遅くなる。
この世界の覇権を争っていた種族。
そのうちの一種族が大食鰐だ。
そんな相手にシードが戦えるのか‥
リーナを危険に晒すがこのまま戻り大食鰐と戦うしかない。
ラキは足に力を込め走り出そうとする。
そんな中一際大きな統率狼が現れる。
他の統率狼達も小さいわけではない。
だがそいつは大きかった
大食鰐程ではないが10メートルはある統率狼。
おそらくこの群れの指揮官であり頭脳。
「こいつは‥」
その統率狼に見覚えがあった。
ラキが封印される前。
それよりもっと前に出会ったことがある。
大きな統率狼はラキの前へと歩き出す。
そして大きな統率狼はその場に座りラキを見据えた。
「預けても良いのか?」
ラキが聞くと大きな統率狼は小さく頷く。
言葉を理解しているのだろうか。
「ラキ様‥」
「リーナ。
大丈夫だ、統率狼達はお前を襲うことはないだろう。
それに私が離れてもお前にはリアナがついているよ。」
そう言ってラキはリーナの胸に手を当てる。
そしてシードの元へと駆け出した。