進むべき道
甦った記憶に驚いていると
「おい!大丈夫か!?」
視線に飛び込んできたのは岩だった。
いやラキの纏う鎧が。
「すまない‥少しだけ記憶が。」
建物はそのままだった。
「この建物は力の源にルーツ様が楔を打つことで滅びず滅ぼされず。
だが入ることも出来ない。
いわば結界。それが具現化したものだ。
そして‥
目の前に居るそれがこの結界の力の源と言うわけだ。」
そしてラキは指を指した。
「初めましてかな?
いやきっとそんなことはなさそうだ。」
こんな僅かな明かりしかない建物の中でもその赤い鎧は眩しい程だ。
目の前にはソルが居た。
「ソル‥」
「やはり初めましてではなかったようだ。
だが自己紹介をしよう。
私は陽光の神ソル。」
「やぁ久しぶりじゃないか。」
そう言ってラキはソルに挨拶をする。
「君は誰かな?会ったことが会ったかな?」
「私はラキだ。
見た目は少し‥変わってしまってね。」
ソルは驚き
「おぉラキ!君か。
久しぶりになるのかな?
だがすまないな。あまり長く話が出来なくてね。」
そう言ってソルはシードとリーナを見る。
「うん?どっちだろうか?
私が戦うのは‥」
その言葉にラキが答える。
「あぁそれならこいつだ。
名はシード。」
そう言ってシードの背中を押す。
「そうか。
君の名前はシードと言うのか。
では始めよう。
私は私の命令を実行する。」
「俺の事を覚えていないのか‥?
ソル‥あんたが俺の名前を教えてくれたんだぞ‥?」
ソルは質問には答えず、炎を纏う槍を構えた。
それを見たシードは。
胸に手を当て思い出す。
陽光の長剣、その思いを。
右手に陽光の長剣が現れる。
それを両手で握りしめ構える。
「ほう陽光の長剣か‥やはり君とは会ったことがあるのか。
それで君はその剣を自分のものに出来たかな?」
お互いの神器の出す炎がぶつかり合う。
お互いに1歩1歩進む。
槍を持つソルの方が間合いは広い。
だが槍の間合いに入ることが出来れば。
それが勝機になるだろう。
動いたのはソルだった。
体の中心目掛けて放たれた突き。
それを剣で弾いて、体を無理矢理槍の間合いの中に入る。
長剣を右下から切り上げようとすると、ソルはさらに体を前進させる。
それにより剣を振るうスペースを奪われる。
だがソルの槍は関係ないようだ。
槍の先端の方を持ち、まるでナイフのように突き刺してきた。
それを後ろに下がりながら剣の柄で裁く。
それが間違いだった。
ソルは槍を持ち替え突きを放つ。
ナイフのような間合いから一気にこちらの頭を狙う槍本来の間合い。
間一髪で避けるがソルの攻撃は止まらない。
シードの間合いの外から。
それでいてシードの間合いの内側から。
変幻自在の槍裁き。
槍を棍のようにしての打撃。
それらを剣を使ってなんとか避ける。
シードはバックステップで何とか距離を取る。
このままではジリ貧だ。
ソルは長剣の間合いも槍の間合いも完全に理解して戦っている。
このまま間合いの取り合いでは必ず負ける。
ならば槍よりも剣の優れた部分で戦う。
剣の強いところを押し付ける戦いをするしかない。
シードは駆け出す。
剣を下に構え、槍の間合いに入った瞬間。
鋭い突きが放たれる。
それを切り上げる。
ソルは体勢を崩すことはなかった。
だがさらに切りつける。
ソルは槍でそれを受けるが、そのまま押し込む。
そのままさらに剣を横に薙ぐ。
間合いで負けてる以上勝ちを拾うなら。
剣は間合いが槍より劣る分その攻撃の手数で戦うしかない。
今度はソルは間合いを詰めてきた。
槍をナイフのように持ち攻撃をしてくる。
シードは左手でソルの顎当たりを殴り付ける。
ソルはよろめく。
その隙を見逃さず剣を振り上げ切り裂く。
その一撃はソルを捉えた。
ソルの右肩から左脇腹に掛けて剣が振り下ろされた。
だがソルは止まらない。
致命傷になるような一撃を受けても。
ソルはシードの腹を蹴り飛ばし無理矢理距離を取る。
槍を片手で持ち頭の上に構える。
槍が纏っていた炎が槍の中へと収束していく。
シードも同じく剣を構える。
剣が纏っていた炎は同じように収束していく。
お互い同時に叫んだ。
「「オーバーレイ!」」
鋭い閃光が弾けた。
その光にリーナは目を覆った。
建物は放たれた光で所々溶け落ちている部分がある。
シードはソルの放った光をまともに受けてしまい地に伏していた。
それに比べソルはダメージがないのか、何事もなかったようにシードに歩み寄る。
ソルはシードの近くまで来ると。
腰を下ろした。
「なかなか強いな。
だがまだまだ長剣を使いこなせていないようだ。
まぁそのうち思いどおりになるさ。」
ソルの体が少しずつ光の粒子になっていく。
その粒子はまたシードの中に溶けていく。
「次はそうだな。
自由に旅をしてみるといい。
君が君になるためにね。」
「天はどこまでも広がり、陽光が見守る、そして月光が道を示すだろう‥」
完全にソルは消えてしまった。
そしてシードの意識もそこで途切れた。